井上先生に関する思い出

昭和61年卒 上田仁司

 井上先生には非常に多くのことを教わりましたが,最も印象深く残っているのは『人生は博打や』という教えてあります。井上先生はよく「人生は博打や。わしは石田君ちゅうよう仕事する人間をつかまえた時点で博打に勝ったんや。」とおっしやってました。この『人生は博打や』という言葉は一見無謀にも思えますが,実に言いえて妙であり,さすが井上先生と言わざるを得ません。私はこの言葉が井上語録のNo.1であると思います。当時我々にとって井上先生は「天皇陛下」のような御方であられたので,最初は井上先生だから言える言葉であり,また井上先生のように人生で成功したから当てはまる言葉であると思っていました。しかし人生の幾つかの場面においては様々な選択肢や別れ道がありそれらを選ぶことが『博打』であると言うことがやっと私にもわかってきました。『博打』と言うのは井上先生ならではの表現であり,一見人生の重要な場面での選択には当てはまらないように恩えます。この表現は,井上先生が『博打』が好きであるからではなく(嫌いであるとはとても言えませんが),つねにリスクが伴うということをわすれるな!という教えであると私は思います。
 私事で恐縮ですが,私が今ある仕事につけたのも,元を正せば物理化学研究室に入っだからであり,この場面での『博打』に私は勝ったのだと恩います(正直に言いますと物化を選んだのは偶然です)。これからも井上先生の教えに従って『人生の博打』に勝つように努めて行けば,井上先生のようにとはいかないまでも有意義な人生を送れるのではないかと考えており,同時に人生の師井上先生に深く感謝しております。井上先生本当に色々と教えていただき有難うございました。また本当に長い問お疲れさまでした。


昭和62年(1987)2月 物化・生薬・放射合同での昭和61年度特別研究発表会


昭和61年(1986)井上先生の還暦をお祝いする会にて


昭和61年(1986)井上先生の還暦をお祝いする会にて
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