想い出あれこれ
昭和47年卒 井上章
井上教授に'72年から二年間,グリセロリン酸Caの熱分解や,竜骨のX繰回折の論文に奮闘されていた物理化学教室で,お世話になりました。
当時,教官悪足掻き軍談との噂もあった,ご親友故森坂先生との談合(度々開催されていた)の音楽談義が隣室によく聞こえてきました。レコード専門店においても見つけ難い掘出し物,なんでもイバル指揮マーラーの交響曲No.4,SP盤シャンソン,タンゴなど(当時はカセットでさえまだ出回っていなかったのです。)を収集する趣味をお持ちでした。このこだわりが故森坂先生と馬が合ったわけと思います。お宅に何回か伺いましたが,管球式手造りのアンプと得体の知れぬでっかいスピーカーの前に座って,SLやジェット機の爆音を神妙な顔をして聞くというのには,いささか閉口しました。その時の本音は,奥様の手料理と酒のおもてなしがめあてでした。実は,私も後でLUXのアンプとJBLのスピーカーを手にするハメになったのですが。何時でしたか,レパートリーは問わないからお勧めのLPはあるかとお尋ねになったので,プレスリーの追っかけをしていた同僚の三野君(現第1生薬学教室助教授)に負けてはとリリィのダルシマというLPをお渡ししたところ,お気に入りのようでした。理由は,酒を煽ってカウンターにうつ伏した時間くと心が痛くなったとのご評価でした。当時出始めのニューミュージックがわかるナイスミドルと改めて認識いたしました。
期限が迫っていた投稿論文の体裁を整えるためだったのですが,オイルショックで買い占めたビールが一年近くになるので処分したいとのことで,三野君と訪問しました。先生とご一緒に飲みぼしたものを10数本までは数えることができたのですが,果して,あの論文はどうなったのでしょうか。もうすでに時効ですね。
一見,とっつきにくそうで唐突な返事が返ってきそうな紳士,豈図らんや,酒,音楽,忘れてならないのが特研生の恋愛で双方の両親を説得に走られたなど教え子にまつわる悲話,先生のこだわりの話題は尽きません。またお詫びに酒抱えて参上いたします。
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