『よろしい』

昭和44年卒 西本悦治

 井上先生が来年御退任とお聞きいたしましたが,大薬発展の為に長い間の御尽力本当に御苦労さまでございました。
 在学中は大変お世話になりました。卒業して以来二十数年が過ぎ,大学時代の記憶も薄れがちですが,不思議と井上先生の物理化学教室のことは覚えています。私が毎日使用しているハミガキの成分の一つが,卒業研究テーマ『アパタイト』だったからです。物理化学が得意な学科だった訳ではなく,むしろ試験ではいつも本試験を落とし,再試験を受けていたように記憶しています。それでも井上先生の物理化学教室へ入った理由は,何んとなく先生の教室が楽かなと言う打算的な考えだったように記憶しています。
 先生に提示していただいたテーマは『アパタイト』でした。文献の翻訳からはじめましたが,勉強嫌いの性分はどうしようもなく八割近くを下宿の後輩二人に手伝ってもらったように恩います。後輩二人へのバイト料は随分はずんだように記憶しています。夏休みが終わって先生に提出し,『よろしい』の言葉をお聞きした時は本当にうれしかったです。『助かった,これで卒業出来る』と恩ったのが正直な気持ちでした。文献の翻訳以外は何をしたかは全く覚えていません。
 先生の教室へ入った動機といい,後輩に手伝ってもらった翻訳といい始終不真面目な態度だったことを思い出す度に冷や汗が出ます。
 卒業して二十数年間薬にかかわっており,仕事に追われる毎日ですが大学時代の記憶を思い出し,拙い文章ですが書きました。
 御退任されます井上先生には今後ますますの御健勝と御発展をお祈り中し上げます。
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