“貴婦人”

昭和44年卒 河南(大森)孝子

 卒業して25年が経ちます。今でも,よく特研時代の事を思い出し,懐かしくなります。物理化学が割に好きだったのと,井上先生のぶっきらぼうさが気に入って,この特研にはいりました。私たちが取り組んだのは,グリセロリン酸Caの溶融熱でした。装置をセットし,待ち時間にテニスをしたりソフトをしたり,非常にのびのびとなごやかにやらせてもらえました。
 特に今でもはっきり思い出すのは,特研の卒業旅行で,台風にもかかわらず,ビールを船に積み込んで,松山へ向かった時の事です。台風が来ているので断わりを言うつもりで,集合場所(神戸)ヘ行ったのですが,普はすっかり行くつもり。「行こう,行こう」にその気になって,そのまま船に乗り,船上から家へ連絡。ちなみにその後の便は欠航。船中では勿論ドンチャン騒ぎ。ところが,松山に着いてビックリ。何十年振りの大雪とやらで一面銀世界。まさか,ここに来て雪を見ようとは思ってもみませんでした。
 ビールの残りをあちこちに隠し持ち,旅館で仲居さんの目を盗みながら飲んだり,とてもスリルのある旅でした。そして,先生の大好きなSLを見に呉に立寄った時,先生が熱弁をふるわれたSLの顔の中で,特に“貴婦人”が印象に残っています。
 今一つの思い出は,年後,有志で椿温泉へ行った時の事です。時間に遅れ,発車のベルを耳に必死で予定の列車に飛び乗ったのを覚えています。初めて小舟に乗って釣りに出たまでは良かったのですが,少し出た所で気分が悪くなり,ただただ,寝ころがっていただけで,丘に上ってからも「ウェッ,ウェーッ」と相当なものでした。先生は悠々と釣りを楽しまれていました。それからビヤガーデンにもよく連れて行って頂きました。私たちの学年は良い人ばかりで,とてもまとまっていたと思います。この特研で,良い先生,友達に出会い,たくさんの貴重な経験をしました。幸せです。この楽しく,有意義な思い出は,私の心から消える事はないでしょう。有難うございました。
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