くるみ割り人形

平成元年卒 加福やよい

 井上先生の講義に初めて出席した時のこと。当時2回生だった私には,とても強い印象が残っています。少し頭を傾けて,ゆっくりと歩いて来られた先生の姿には,どっしりとした威厳が感じられました。衿元のネクタイやスカーフなどの小物使いは,まさにダンディーという言葉がぴったりで,そういう先生に憧れていた学生も多かったはずです。それから2年後,研究室に入り,講義では見られなかった先生のあらゆる面を見せていただき,驚かされたり親しみを感じさせて下さいました。
 ある日,教授室の灰皿に1cmも吸っていない吸い殻がたくさんあるのでなぜかなと思っていると,長めの煙草をそのように吸うのが,一番害がないとのこと。健康に気をつけておいでるんだと変に納得してしまいましたが,反面,一気に飲みほすビールの飲み方,準備体操なしでプールに飛び込まれるような無謀さに,私達はハラハラしたこともありました。
 また,先生のお宅に伺った時などは,興味深いお話を間かせて下さったり,カードゲームを一緒に楽しんだり,御自慢のレーザーディスクのコレクションを披露して下さいました。私はバレエ会演の「くるみ割り人形」が気に入って何度か観せていただきました。このように普段あまり先生にお会いできない学生達にも,とてもよい機会を与えて下さって皆にも先生とのさまざまな思い出が残っていることと思います。
 「人生は賭けや。」という先生の口癖通り,私達には想像できない人生を過ごされた先生の大きさからでしょうか,先生の言動一つ一つが学生達の話題になったものでした。これからも井上先生らしく楽しい豊かな生活を送られることでしょう。またダンディーな先生にお会いして,興味深いお話を聞かせていただけるのを楽しみにしています。


平成4年(1992)3月 学生喫茶室で加福さん(当時助手)の送別会
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