日本薬学会第126年会(仙台2006)

大阪薬大発表分要旨 1+77 件
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シンポジウム S26-5: 次世代を担う指導薬剤師と教員との協同体制による学生実習の新しい視点
現場から見た・大学、大学から見た・現場
シンポジスト : 加藤 隆児(カトウ リュウジ)


O29[G]-046
p-tert-ブチルカリックス[6]アレーン-ペプチド複合体によるイオンチャネル構造の構築
○塚本 効司1, 前崎 直容1, 田中 徹明1, 大石 宏文2, 石田 寿昌2(1阪大院薬, 2大阪薬大)
【目的】人工イオンチャネルの創製は、生体内イオンチャネルの機能発現のメカニズムを解明したり、薬物や分子機械の開発へ応用する目的で近年盛んに行われている。我々はイオンチャネル構造を有する分子を合成し、その立体構造を分子レベルで解明することにより、高機能な人工イオンチャネルの設計に有用な構造情報が得られると考え、本研究に着手した。 【方法】鋳型分子に複数のペプチド鎖を結合させることで、ペプチド鎖がイオンを取り込み、チャネル構造を形成すると考えた。鋳型にはホスト−ゲスト化学においてホスト分子として知られているcalix[6]arene 誘導体を用い、ペプチド鎖としてPhe(p-Br)-Leu を用いることとし、1 を合成した。カチオンとしてカリウムイオンを取り込ませるため1 を中和してカリウム塩とし、その立体構造をX 線結晶構造解析により解明した。 【結果】1 のカリウム塩の結晶は0.25 × 0.10 × 0.02 mm3 の薄層結晶であったが、X 線源として放射光を利用することにより分解能1.6 . の構造を決定することができた。その結晶構造中では、3 つのペプチド鎖のカルボニル酸素および3 つの水分子が配位子となってカリウムイオンを取り込み、1 はイオンチャネル状の構造を形成していた。

P30[Q]am-066
中国生薬福参Angelica morii Hayataの成分研究
○江本 和幸1, 石井 香代子1, 芝野 真喜雄1, 谷口 雅彦1, 馬場 きみ江1, 王 年鶴2(1大阪薬大, 2中国江蘇省植物研)
【目的】医療の場で漢方薬が用いられる機会が増し,またハーブ等を含むサプリメントも市販されている近年,これらと医薬品が相互作用を起こす可能性は少なくない.このような背景により,成分が明らかにされていない生薬とその薬理作用を解明することは重要な課題のひとつであるといえる.当教室では従来よりセリ科の植物の成分研究を行っておりその一環としてセリ科生薬である中国産福参Angelica morii Hayata について成分の探索を行なっている. 【方法および結果】過去に台湾産の福参について当教室で研究が行なわれたが,今回は福建省産の福参を用いこれまでに構造を解明するには至らなかった化合物の探索とともに,原産地による含有成分の違いについても検討を行っている.福建省産の福参乾燥根をメタノール抽出し酢酸エチル,ブタノール,メタノール,水可溶部に分画し,酢酸エチル可溶部およびブタノール可溶部についてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い,これまでに酢酸エチル分画から6 種のリニア型フラノクマリンおよび2 種のクロモンを単離した.また,ブタノール分画からは2 種のクロモンを単離した.化合物の確認は,TLC およびNMR スペクトルの確認により行なった.現在,酢酸エチル分画からTLC 上で水色および黄緑色の蛍光が確認できる化合物を数種単離しているがこれらについても発表する予定である.

P30[Q]am-085
マツ科植物トドマツ樹皮の抗酸化作用を有するフェノール性成分研究
○人見 哲平, 和田 俊一, 田中 麗子(大阪薬大)
【目的】当研究室では、北海道を代表するマツ科植物、エゾマツ (Picea jezoensis Carr. var. jezoensis) 及びトドマツ (Abies sachalinensis) から生理活性物質を探索する目的で成分検索を行っている。先の年会において、エゾマツ樹皮から数種の抗酸化作用を有するポリフェノール性成分を単離したことを報告した。1) 本年会において、同じマツ科植物、トドマツから抗酸化作用を有するフェノール性成分について検索を行った。 【方法・結果】北海道沙流郡日高町で採取したトドマツ樹皮のメタノールエキスについて、1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)ラジカル消去活性を指標に、Daiaion HP20、シリカゲル、Sephadex LH-20 カラムクロマトグラフィー、ODS カラムを用いたHPLC で分離精製し、7種の化合物、 quercetin (1)、diconiferyl alcohol 類 (2、3)、spiro-biflavonoid 類 (4 ~ 7) を得た。得られた化合物の各種スペクトルデータの解析結果から、3 及び、5 ~ 7 は下記に示す新規化合物であると決定した。 O OH OO OHO HO HO OH OH R O OH OO OHO HO HO OH OH R2 R1 OMeO HO OH OMe OH 6 R1=H , R2=OH 7 R1=OH, R2=H 3 4 R=H 5 R=OH 1) 保井、他、日本薬学会第125 年会講演要旨集、4、156.

P30[Q]am-086
マツ科植物エゾマツ樹皮のポリフェノール成分研究(2)
保井 裕美子, ○和田 俊一, 田中 麗子(大阪薬大)
【目的】当研究室では、エゾマツ (Picea jezoensis Carr. var. jezoensis) 樹皮のメタノールエキスから抗酸化作用を有するフェノール性化合物を単離し、先の 125 年会において報告してきた。1) 本年会においても引き続き成分検索を行い、単離した化合物について、ラジカル消去作用を検討した。 【方法・結果】北海道沙流郡日高町で採取したエゾマツ樹皮のメタノールエキスについて、引き続き 1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)ラジカル消去活性を指標にシリカゲル、Sephadex LH-20 カラムクロマトグラフィー、ODS カラムを用いたHPLC で分離精製し、9 種の既知化合物 (1 〜 9) と 3 種の新規化合物 (10 〜 12) を得た。各種スペクトルデータの解析により、新規化合物は下記のように決定した。得られた化合物について DPPH 及びスーパーオキシドアニオンラジカル消去作用を検討し活性を認めた。 O O OHOH HO HO HO OH OHOH O O OH HO HO OH O O OH OH OH HO H OH MeO 10 11 12 1) 保井、他、日本薬学会第125 年会講演要旨集,4,156.

P30[Q]pm-041
E2生合成阻害を目的としたイミダゾール C-ヌクレオシド-E2 ハイブリッド化合物の合成研究(その2)
○小島 千ひろ, 春沢 信哉, 荒木 理佐, 栗原 拓史(大阪薬大)
【目的】エストラジオール(E2)はエストロゲン依存性乳がんの発症と増殖に深く関わっている。最近、E2 生合成阻害剤としてEM-1745 が報告されているが、アデノシンの中間鎖のエステル結合(X)とN-グリコシド結合(Y)がin vivoにおいて不安定である問題を持っている。一方、当研究室ではイミダゾールC-ヌクレオシドがアデノシン様の作用をもつことを最近報告している。そこで、EM-1745 の弱い結合部位X とY を、加水分解に対して安定なアミド結合とC1’置換エチルイミダゾールに置換した化合物1をデザインし、その合成を検討した。 【実験・結果】目的化合物の右半分の5'-アミノイミダゾールC2-ヌクレオシドと左半分のE2 由来のカルボン酸をそれぞれ合成した。続いてDEPC を用いて、アミド結合をもつハイブリッド化合物1 の合成を行った。 HO H H H (CH2)8 OH X O OH HO Y EM1745 X = CO O Y = N HN NN NN NH2 1 X = Y = CO HN * その1 : 第55 回 日本薬学会近畿支部総会・大会 講演要旨集p 46 ( 2005 )

P30[Q]pm-049
抗腫瘍活性を示すアザリグナン化合物の全合成
○大黒 亜美, 岡野 正, 宇佐美 吉英, 市川 隼人, 有本 正生(大阪薬大)
【目的】抗腫瘍活性を示す沖縄産ハスノハギリの主成分deoxypodophyllotoxin(1) の毒性の軽減や水溶性の増大等が期待されるために、B 環のC4 位にN 原子を導入した1-azadeoxypodophyllotoxin(2)の全合成を目的とする。 【方法・結果】今回、原料に6-nitropiperonal を用いた合成経路を計画した。ここで問題となるのはキノリン環C4 位に配位する3,4,5-trimethoxyphenyl 基の立体選択的導入である。光学活性なα,β-不飽和オキサゾリンに有機リチウム試薬を反応させると、1,4-付加反応が立体選択的に進行するという報告を参考に実験を行なった。問題はどのオキサゾリンを用いればC4 位が目的の配位になるかである。そこで、有機リチウム試薬にはPhLi を用い、様々なアミノ酸から誘導されるオキサゾリンへの立体選択的付加を試みた。Ph の付加には成功したが、容易に酸化され芳香化してしまう結果、目的の生成物が得られなかったので、ClCOOMe で窒素を保護し芳香化を抑えることにした。その結果、収率を数%から約50%まで向上させることに成功した。異性体の分離にはまだ成功しておらず、現在分離方法を検討中である。 N OO CH3 N O H3CO THF N OO CH3 N O H3CO OMe O 1)PhLi 2)ClCOOMe O OO OMeOMe MeO O A B C 1 3 4 2 HN O OO OMeOMe MeO O A B C 123 4 1 2

P30[Q]pm-053
Grignard試薬を用いた新規アリールピラゾール類への合成法の開発
○大野 祐貴, 市川 隼人, 宇佐美 吉英, 有本 正生(大阪薬大)
<目的>現在活発に行なわれているシスプラチン耐性癌に有効な化合物の探索の中で、4-メチルピラゾールを配位子に持つ白金錯体がシスプラチンよりも高い活性を持つことが分かった。そこで、我々はクロスカップリングによる4 位に置換基を有するピラゾールの合成方法を検討した。 <方法・結果>Grignard 試薬を用いた1 とのクロスカップリング反応によって効率よく直接的に、4 位に置換基を有するピラゾールが合成できることを見出した。反応は、原料として1 位をトリフェニルメチル基で保護した4-ヨードピラゾールと各種Grignard 試薬を用い、触媒としてPdCl2(dppf)を0.01 等量加え、窒素気流下、0℃ 下で反応を行い、4 位に置換基を導入することに成功した。同様の方法で3-ヨードピラゾールを原料とすることで、3-フェニルピラゾールの合成にも成功した。 N N I Tr ArMgBr THF N N Ar Tr + PdCl2(dppf) 0℃

P30[Q]pm-057
RNA触媒の機能解明を目的とした新規イミダゾールC-ヌクレオシドホスホロアミダイトの合成研究
荒木 理佐1, ○森田 啓嗣1, 山口 真帆1, 春沢 信哉1, 栗原 拓史1, David M.J Lilley2, Zheng−yun Zhao2(1大阪薬大, 2University of Dundee)
【目的】酵素に匹敵する触媒機能をもつRNA をリボザイムと呼び、近年RNA の新たな機能を解明するものとして世界中で活発に研究が行われている。 我々はこれまでに、イミダゾールC-ヌクレオシド(ICN)ホスホロアミダイト 1 の合成を報告し1)、さらに 1 をVS リボザイムに導入することで自己切断活性の反応メカニズムの解明に成功している2)。そこで今回、RNA プローブとしての機能性をより明確にするため、糖部分とイミダゾール間に2 炭素増炭することで、分子構造に柔軟性を持たせたICN-ホスホロアミダイト 2 を設計し、その合成を検討した。 【結果・考察】2 は合成の最終段階のアミダイト化において、目的物の単離精製が非常に困難であることがわかった。そこでより安定なホスホロアミダイト合成を目指してACE 法による 3 及びTOM 法を用いた 4 を新たに設計し、その合成について検討を行った。 1) L. Araki et al., Tetrahedron, 2005, 61, 11976. 2) Z. Zhao et al., JACS, 2005, 127, 5026.

P30[R]am-109
カバノアナタケのLanostane型トリテルペン
○田路 さやか1, 中田 智子1, 山田 剛司1, 和田 俊一1, 田中 麗子1, 佐久間 和夫2(1大阪薬大, 2サラダメロン)
【目的】カバノアナタケは長い年月をかけて白樺樹液を養分に成長する珍しいキノコであり、抗癌作用の本体と考えられるβ?グルカンにステロールやトリテルペンが共存し、それらの相乗作用により優れた活性を示すと考えられる。今回は昨年に引き続き、カバノアナタケ菌核の脂溶性画分の精査を行い、4種の新規化合物を単離した。 【方法・結果】カバノアナタケ菌核(12kg)をクロロホルムで抽出を行い得られたエキス(150g)をシリカゲルカラムクロマト,ODSによるHPLC 等により繰り返し分離を行い、4種の新規トリテルペン1〜4を単離した。これらの化学構造は単結晶X線結晶解析を含む各種スペクトル解析のより下記のように推定した。 O OH HO HO O OH HO HOH2C OH O HO 1 2 3 4 H

P30[R]am-127
マレーシア産薬用植物 Acalypha siamensis Oliv. ex Gage の化学成分に関する研究
○寒原 裕登1, 辻岡 麻紀子2, 山田 剛司2, 箕浦 克彦2, 田中 麗子2, Christophe Wiart3, 赤穂 榮一1(1神戸学院大薬 , 2大阪薬大, 3University of Malaya)
【目的】マレーシア産薬用植物Acalypha siamensis Oliv. ex Gage はトウダイグサ科に属し,民間薬として利尿,解熱消炎,腸及び腎臓の不快感を和らげる目的で使用されているが1),その化学成分に関する報告はほとんどない.そこで今回,我々は天然由来生理活性物質の探索研究の一環として本植物の成分研究を行ったので報告する. 【方法】マレーシアのクアラルンプールで採取したA. siamensis の葉部(191.21 g) を乾燥,粉末状にしEtOH で数回熱時抽出した後,濃縮して得られたエキス(35.56 g) を,Sephadex LH-20,silica gel 及びODS の各クロマトグラフィーに付した.続けて1H NMR スペクトルを指標に,ODS HPLC,preparative TLC を繰り返すことによって分離精製を行い,新規化合物を含む数種の化合物を単離した.これらの構造を1H,13C 及び2D NMR,並びにMS 等の各種スペクトルデータの解析及び化学反応を用いて明らかにした. 【結果】各種クロマトグラフィーにより分離を行ったところ,低極性画分より3 種の新規テトラテルペン類縁体を単離し,構造決定した.また,これらの化合物ついてP388 マウスリンパ性白血病細胞に対する細胞毒性試験を行ったので,あわせて報告する. 【文献】1) Wiart C.,“Medicinal Plants of Southeast Asia”,2nd ed. by Wong F. K., Prentice Hall Asia,2002,p156

P30[R]am-152
海水魚由来真菌の産生する細胞毒性物質
○山田 剛司, 今井 英詞, 箕浦 克彦, 田中 麗子(大阪薬大)
【目的】海洋生物由来菌類の産生する抗腫瘍性物質のシーズを探索することを目的とした研究の一環として,今回,海水魚由来真菌Aspergillus fumigatus の代謝産物について検討を行い,2 種の新規細胞毒性物質を単離し,これらの化学構造の解析を行った.これらはすべて強い細胞毒性を示したのであわせて報告する. 【実験・結果】本菌を可溶性でんぷん及びカゼインを主成分とする海水培地で27oC, 4 週間培養後,吸引ろ過により菌体と培養ろ液に分離し,培養ろ液をAcOEt で抽出,濃縮し,得られたエキスをLH-20 及びシリカゲルのカラムクロマト並びに HPLC (ODS)により分離を行い,新規化合物 1 及び2 を単離した.これら淡黄色油状物質の化学構造は各種スペクトルの解析及び化学反応により下記のように決定し,cephalimysin A 及びB と命名した.また,これらの化合物は,in vitro においてP388 マウスリンパ性白血病細胞の増殖を強く阻害した.

P30[R]am-173
アメフラシ由来真菌の細胞接着阻害物質の構造
○重田 寛文, 山田 剛司, 箕浦 克彦, 田中 麗子(大阪薬大)
【目的】海洋生物由来菌類の抗腫瘍性代謝産物の探索研究の一環として,アメフラシ由来真菌Periconia byssoides の代謝産物について検討し,これまでに抗腫瘍性物質としてpericosine 類を単離しているが,その分離過程で細胞接着阻害を示す数種のmacrosphelide 類及びperibysin 類をも単離し報告した. 今回,同菌代謝産物をさらに精査し, 2 種の新規化合物peribysin M (1)及びN (2) を得,これらの化学構造の解析を行った.これらはすべて強い細胞接着阻害活性を示したのであわせて報告する. 【実験・結果】同菌をマルトエキスを主成分とする海水培地で27oC,4 週間培養した.培養ろ液のAcOEt エキスを LH-20 及びシリカゲルのカラムクロマト並びに HPLC (ODS)により分離を行い,化合物 1 及び2 を単離した.これら淡黄色油状物質の絶対構造は各種スペクトルの解析及び化学反応により下記のように決定した.また、これらの化合物は,in vitro においてヒト正常さい帯血管細胞 (HUVEC) へのヒト急性骨髄性白血病細胞 (HL-60) の接着を強く阻害した.

P30[R]am-192
セサミンは代謝物による一酸化窒素産生亢進作用により高血圧を抑制する
○松村 靖夫1, 中野 大介1, 郭 哲俊1, 藤井 貴和子1, 池村 健治1, 佐竹 藍子1, 高岡 昌徳1, 小野 佳子2, 木曽 良信2(1大阪薬大, 2サントリー健康科学研)
【目的】我々はゴマリグナンの一種であるセサミンがラット実験的高血圧に対して血管内 O2. 産生を低下させることにより高血圧を抑制することを報告してきた。しかしながら、セサミンの抗高血圧作用は抗酸化作用のみでは説明できず、別の機序の関与が考えられた。そこで今回、セサミンによる抗高血圧作用機序について更に詳しく調べる目的で、セサミン代謝物の抗高血圧作用への関わりについて検討を行った。【方法】1)キサンチン・キサンチンオキシダーゼの反応により産生された O2. に対するセサミン代謝物(4 種 sesamin demethyl 体:compound A ~ D)の抗酸化作用を測定した。2)代謝物の血管運動機能に与える影響について大動脈を用いて検討した。3)一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害条件下での高血圧に対するセサミン摂取の影響を検討した。【結果】1)4 種のセサミン代謝物のうち構造中にカテコール骨格を有する 3 種(compound A、C、D)は強い O2. 消去作用を示したが、カテコール骨格を有さない compound B はほとんど作用を示さなかった。2)4 種の代謝物のうち compound A および B は内皮依存性弛緩反応を惹起し、この反応はNOS 阻害薬および可溶性グアニル酸シクラーゼ阻害薬の処置により抑制された。3)セサミン摂取による抗高血圧作用は NOS が阻害された条件下ではほとんど機能しなかった。【結論】セサミン代謝物は抗酸化作用並びに抗酸化作用を介さない NO 産生促進作用により抗高血圧作用を示すものと思われる。

P30[R]am-205
アシタバ由来カルコン類は脂肪組織と3T3-L1細胞からのadiponectin分泌を促進する
○藤波 綾1, 太田 光熙1, 太田 潔江2, 谷口 雅彦3, 馬場 きみ江3, 小笠原 和也4, 大西 克典4, 井上 賢一4(1神戸薬大, 2国立病院機構 宇多野病院, 3大阪薬大, 4日本生物科学研)
【目的】アシタバはビタミン類,ミネラル類および食物繊維を豊富に含む栄養価の高い食品であるが,成分として特に注目されているのは,ポリフェノールの一種のカルコンである.カルコンには最近セルライト解消やダイエット効果があると言われており,今回は肥満との関連が示唆されるアディポサイトカインの一つであるadiponectin とカルコンとの関係について検討した.【方法】3T3 -L1 細胞を脂肪細胞に分化させ,カルコン類を添加した培養上清と,カルコン配合高脂肪食摂取C57BL/6n マウスから採取した脂肪組織および血中のadiponectin 量を我々が開発したELISA 法で測定した.【結果】カルコン類(Xanthoangerol および4-Hydroxyderricin)を添加した3T3-L1 脂肪細胞培養上清中のadiponectin 量はほぼ濃度依存的に増加した.一方,カルコン配合高脂肪食を摂取したマウス脂肪組織中のadiponectin 量は高脂肪食摂取マウスと比較して, オスでは増加,メスでは減少傾向を示した.また血中adiponectin 量はオス,メスともに増加した.【考察】カルコン類は脂肪細胞に作用し, adiponectin の分泌を促進することが示唆された.しかし,脂肪組織中のadiponectin 量の変化はオスとメスで逆の傾向を示したことから,オスとメスではadiponectin が異なる体内動態を示し,またカルコンに対する反応性についても性差があることが考えられた.

P30[R]am-205
アシタバ由来カルコン類は脂肪組織と3T3-L1細胞からのadiponectin分泌を促進する
○藤波 綾1, 太田 光熙1, 太田 潔江2, 谷口 雅彦3, 馬場 きみ江3, 小笠原 和也4, 大西 克典4, 井上 賢一4(1神戸薬大, 2国立病院機構 宇多野病院, 3大阪薬大, 4日本生物科学研)
【目的】アシタバはビタミン類,ミネラル類および食物繊維を豊富に含む栄養価の高い食品であるが,成分として特に注目されているのは,ポリフェノールの一種のカルコンである.カルコンには最近セルライト解消やダイエット効果があると言われており,今回は肥満との関連が示唆されるアディポサイトカインの一つであるadiponectin とカルコンとの関係について検討した.【方法】3T3 -L1 細胞を脂肪細胞に分化させ,カルコン類を添加した培養上清と,カルコン配合高脂肪食摂取C57BL/6n マウスから採取した脂肪組織および血中のadiponectin 量を我々が開発したELISA 法で測定した.【結果】カルコン類(Xanthoangerol および4-Hydroxyderricin)を添加した3T3-L1 脂肪細胞培養上清中のadiponectin 量はほぼ濃度依存的に増加した.一方,カルコン配合高脂肪食を摂取したマウス脂肪組織中のadiponectin 量は高脂肪食摂取マウスと比較して, オスでは増加,メスでは減少傾向を示した.また血中adiponectin 量はオス,メスともに増加した.【考察】カルコン類は脂肪細胞に作用し, adiponectin の分泌を促進することが示唆された.しかし,脂肪組織中のadiponectin 量の変化はオスとメスで逆の傾向を示したことから,オスとメスではadiponectin が異なる体内動態を示し,またカルコンに対する反応性についても性差があることが考えられた.

P30[R]am-271
電子線照射した生薬のESR測定と変異原性試験
○山沖 留美1, 谷野 雅俊1, 堀内 淑未1, 山田 のどか1, 吉田 理紗子1, 木村 捷二郎1, 青木 研二2, 西本 進2(1大阪薬大, 2日本電子照射サービス関西セ)
【目的】生薬付着微生物の殺菌法の一つである放射線照射法を適用する際、生薬の含有成分への影響とともに励起成分の生成と消失について検討しておくことが必要である。これまで、電子線( EB )を照射した生薬中に生成する有機フリーラジカルについて報告してきた。本研究では、食品原料としても利用され、付着微生物数の多い根を薬用部位とする生薬を照射し、発生した有機フリーラジカルの物理および化学的特性とともに、変異原性などの生物学的変化について調べた。 【方法】試料;芍薬、甘草、生姜、人参(中国、北朝鮮、日本産)。EB 照射;5 MeV、1 ~ 50 kGy。線量測定;CTA、RC 線量計。ESR 測定;波長 9.4 G Hz、掃引磁場 330 ±15 mT。成分定量;HPLC 法。変異原性試験;umu 試験。 【結果および考察】放射線を照射した乾燥植物中にはセルロース由来ラジカルが検出される。さらに根を薬用部位とする生薬では、糖類の含有量が高いため、照射後に長寿命の糖類ラジカルが検出されることが多い。EB 照射後の芍薬には、ショ糖含有量とスピン量( spins / g )に相関性が認められている(第125 年会)。照射した甘草にも芍薬と同様のショ糖含有量とスピン量の相関性が見られ、糖含量の高い試料ほどスピン量減衰速度は遅い傾向にあった。人参では、ショ糖含量が同程度の甘草や芍薬に比べると照射後に発生する糖ラジカルシグナルは微弱で、その減衰速度も速かった。 Umu 試験の結果、スピン量の減少変化の大きい照射後2週間以内の試料数種では、未照射試料に比べて10−20%のβ−ガラクトシダーゼ活性の上昇が見られた。しかし、50kGy まで照射したすべての生薬の煎液試料は、代謝の有無にかかわらずumu 試験陰性であった。

P30[R]am-319
蛇床子含有成分ostholが脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットの血圧ならびに脂質代謝機構に及ぼす影響
○笹井 教子1, 小川 博2, 馬場 きみ江1(1大阪薬大, 2近畿大医)
【目的】蛇床子(Cnidium monnieri (L.) CUSSON, Umbelliferae)中に含まれるクマリン類の一種であるosthol は、抗菌作用や女性ホルモン様作用を有することが報告されている。本研究では、新規な有用性を解明するため、脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)をモデル動物とし、osthol 摂取がSHRSP の血圧、脂質代謝に及ぼす影響を検討した。 【方法】中国産蛇床子果実のエーテル抽出画分よりosthol を単離・精製し、対照飼料(AIN-93 組成)に0.1%添加して実験飼料を調製した。実験動物は6週齢の雄性SHRSP を用い、実験飼料と飲水を4 週間自由摂取させた。血圧はTail-pulse pickup 法にて測定した。飼育終了後、麻酔下腹部大動脈採血を行うと同時に肝臓を摘出した。血清、各リポタンパク質画分および肝臓の脂質含量はキットにて測定した。肝臓脂質代謝関連タンパク質のmRNA 発現動態は、RT-PCR 法 にて評価した。 【結果および考察】飼料摂取量、成長曲線共に両群間に差は認められなかった。最高血圧は実験群において3 週目より有意な低値を示した。血清脂質含量は両群間で有意な差は認められなかった。肝臓では、実験群においてコレステロール含量、中性脂肪含量が有意に減少した。肝臓脂質代謝関連遺伝子発現では、liver-X reseptor α mRNA 発現の有意な増加、carnitine palmitoyltransferase 1a, hydroxy methylglutaryl-CoA reductase, Acyl-CoA oxidase mRNAs 発現の増加傾向、apolipoprotein C, C mRNAs 発現の有意な減少が認められた。以上より、osthol 摂取はSHRSP の血圧上昇抑制、肝臓脂質低下作用を有する事が明らかとなった。

P30[R]am-320
カシュウ(何首烏)のスチルベン配糖体がコレステロール食摂取脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットの脂質代謝に及ぼす影響
○中塚 真理也1, 小川 博2, 山本 和夫2, 馬場 きみ江1(1大阪薬大, 2近畿大医)
【目的】昨年、カシュウのスチルベン配糖体2, 3, 5, 4’-tetrahydroxystilbene-2-O-β -D-glucoside(THSG)の摂取が、血清・肝臓脂質改善作用を有することを報告した。本研究では、高コレステロール食飼育下、THSG 摂取が脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)の血圧、脂質代謝に及ぼす影響を検討した。 【方法】実験飼料は、中国産カシュウから単離したTHSG を対照飼料(0.5%コレステロール、0.125%コール酸Na 含有AIN-93 準拠飼料)に0.10%添加、調製した。実験動物は5 週齢の雄性SHRSP を用い、飼料と飲水を7 週間自由摂取させた。血圧はTail-pulse pickup 法にて測定した。飼育終了後、麻酔下腹部大動脈採血を行うと同時に肝臓を摘出した。血清、各リポタンパク画分、肝臓脂質含量はキットにて測定、肝臓脂質代謝関連遺伝子発現動態はRT-PCR 法にて評価した。 【結果および考察】飼料摂取量、成長曲線、血圧は両群間で有意な差はなかった。血清では、実験群において総コレステロール含量の有意な増加が認められた。これは、リポ・アポタンパク質の動態からapoE-HDL の高値に基づくものと考えられた。肝臓では、実験群において中性脂質含量の有意な減少が認められた。肝臓脂質代謝関連遺伝子発現は、実験群でadipocyte determination and differentiation factor 1 mRNAs 発現が減少傾向を示し、apoC-、microsomal triglyceride transfer protein、acyl-CoA oxidase、liver X receptor α、low-density lipoprotein receptor mRNAs 発現が有意な増加を示した。従って、THSG はカシュウの抗高脂血症作用の有効成分の1 つであると考えられる。

P30[R]am-329
明日葉の苦味成分について
○芝野 真喜雄1, 端山 絵文1, 坂東 良美1, 谷口 雅彦1, 馬場 きみ江1, 南 晴文2(1大阪薬大, 2東京島しょ農水セ)
【目的】アシタバ( Angelica keiskei KOIDZUMI)は,伊豆諸島で古くから野菜として食されており,最近では,その食能を期待され,関東地方を中心に健康野菜として食される他,サプリメント素材としても年々その需要が増加している。私達は,これまでに伊豆諸島から採取して分離育成した自生アシタバの約30 系統について,特異成分である2種のカルコン誘導体(xanthoangelol と4-hydroxyderricin)の含量調査をし,その分布や含有比率,系統間比較などからカルコン高含量株の選抜を行ってきた. また,これらカルコン類は,無味無臭であるが,本植物は独特の香り(石油様臭)と苦味を有する.今回は,この苦味成分を明らかにすることを目的とした. 【方法】クマリン成分の異なる二系統(八丈島,伊豆大島)について,苦味を指標に分離分画し,苦味成分4種を得た.構造は各種スペクトル解析により行った.さらに, 約30 系統の黄汁を採取し,HPLC により,その分布を確認した. 【結果および考察】苦味成分として,八丈島系からはlaserptin, isolaserpitin, selinidin を,伊豆大島系からは(8 R, 9 R)-8-angeloyloxy-8,9-dihydrooroselol を単離・同定した。今後,これらの定量法を確立すると共に,選抜したカルコン高含量系統より,苦味の少ない系統選抜を行っていく予定である.

P30[R]pm-124
α位とγ位に不斉中心を有するキラル環状α,α-ジ置換アミノ酸よりなるペプチドの2次構造
○長野 正展1, 出水 庸介1, 田中 正一1, 栗原 正明2, 土井 光暢3, 末宗 洋1(1九大院薬, 2国立衛研, 3大阪薬大)
【目的】アミノ酸側鎖上の不斉中心のみによりヘリックスの方向性を制御できることを報告している1)。今回、α位と側鎖γ位の両方に不斉中心を有するキラル環状α,α-ジ置換アミノ酸を設計・合成し、2 つの不斉中心がそのペプチドの2 次構造にどのような影響を与えるかを調べることにした。 【実験・結果】L-リンゴ酸を出発原料としてジヨード体を合成し、マロン酸ジメチルをビスアルキル化して5 員環を構築した。その後、エステルのモノ加水分解、Curtius 転位反応により環状ジ置換アミノ酸を合成した。このジ置換アミノ酸はジアステレオマー(1a : 1b = 3 : 1)の混合物であったが、再結晶により主成績体(1a)を単離することができた。アミノ酸1a からはホモペプチドの合成を行い、溶液状態と結晶状態での2 次構造解析を行った。ジアステレオマーを含めた計算化学によるコンフォメーション解析と併せて報告する。 1) Tanaka, M., Suemune, H. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2004 2004, 43, 5360. OMe CO2Me Cbz-HN OMe CO2Me Cbz-HN S SS R + 1a 1b (3 : 1) Cbz-HN HNNH CO2Me O O 4 OMe OMe OMe SS S S S S

P30[R]pm-129
環状ジ置換アミノ酸の側鎖上官能基の変換とそのペプチドの二次構造
○河辺 直美1, 出水 庸介1, 田中 正一1, 土井 光暢2, 栗原 正明3, 末宗 洋1(1九大院薬, 2大阪薬大, 3国立衛研)
【目的】ペプチドのヘリカル2次構造の制御では、アミノ酸側鎖上の不斉中心が多大な影響を与えることを報告している1)。今回、環状側鎖上に各種の官能基を有するα,α-ジ置換アミノ酸を設計・合成し、その含有ペプチドの2次構造解析を目的として研究を行った。 【実験・結果】酒石酸ジメチルを出発原料として、アジド基、アミノ基、トリアゾール基、アミド基を有する光学活性環状α,α-ジ置換アミノ酸を合成した。特に、アジド基を有するジ置換アミノ酸Ac5cdN3 では、Aib シークエンス中に導入したヘテロペプチドを合成した後に、側鎖のアジド基をトリアゾール基へと変換することが可能であった。現在、これらのジ置換アミノ酸を含有するペプチドのコンフォメーション解析を行なっているので併せて発表する。 NH HN O NHOX X H2N COOH N3 N3 H2N COOH NH2 H2N COOH H2N N NN N N N Ph Ph Ac5cdN3 Ac5cditriazole Ac5cdNH2 X = N3, triazole, n = 1, 2 OEt O Boc n 1) M. Tanaka, H. Suemune, et al., Angew. Chem. Int. Ed., 43 43, 5360 (2004), and J. Am. Chem. Soc., 127 127, 11570 (2005).

P30[R]pm-153
ホスホロアミダイトの最適マススペクトル法
○藤嶽 美穂代1, 春沢 信哉1, 荒木 理佐1, 栗原 拓史1, David M. J. Lilley2, Zheng−yun Zhao2(1大阪薬大, 2Univ. of Dundee)
現在、核酸の自動合成にはホスホロアミダイト法が最も汎用されている。しかし、ホスホロアミダイトは一般に不安定であるため、マススペクトルによる精密分子量測定が困難な場合が多い。一方、我々は最近、ホスホロアミダイトの精密マススペクトルをLSIMS を用いて簡便、迅速かつ確実に得る方法を開発した。1) 今回さらに、マトリックスであるトリエタノールアミン(TEOA)に添加する金属イオン(カチオン化剤)の効果について種々検討した。その結果、分子量関連イオンピークを高感度で得るためにはNaCl あるいはKCl の添加が有効であることを明らかとした。また、ここで見出した最適条件は、汎用されているFABMS においても適用できることを実証した。2) イオン化法 : LSIMS or FAB マトリックス : N(CH2CH2OH)3 (TEOA) . NaCl or KCl 分析計 : 二重収束磁場型 1) Tetrahedron, 2005, 61, 4689., 2) Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry, in press.

P30[R]pm-162
抗HIV-1活性を有する四重鎖DNAとHIV-1 tat peptideとの複合体の合成とその性質
○熊代 哲也1, 川畑 拓也2, 大竹 徹2, 赤木 昌夫1, 浦田 秀仁1(1大阪薬大, 2大阪府立公衆衛生研)
【目的】Zintevir (右図) は17mer の一本鎖DNAで、分子内四重鎖構造を形成し、HIV-1 gp120 膜蛋白と宿主側のCD4 受容体との吸着過程を阻害することで抗HIV-1 活性を発揮することが知られている。我々は幾つかのHIV-1 構成分子で報告されているキラル認識能の低さに注目し、Zintevir の未修飾体 (D-17mer) の光学異性体であるL-17mer を合成した。L-17mer はZintevir と同等の強い抗HIV-1 活性を示した。さらに各17mer の標的はHIV-1 の宿主細胞への吸着・侵入過程であり、侵入後の過程は阻害していないことを明らかにした1)。一方、Zintevir は、in vitro での酵素阻害活性評価によりHIV-1 integrase に対しても阻害活性を持つことが報告されていることから、各17mer は細胞内への透過機構が存在しない為にintegrase 阻害活性を発揮できないと考えられる。そこで、我々は各17mer に細胞膜透過能を付与し、integrase 阻害効果も発揮させることを目的とした。 【実験】3’末端にアミノ修飾を施した各17mer をDNA 合成機により合成し、架橋試薬であるEMCS (N-(6-maleimidocaproyloxy) succinimide)と反応させた後、細胞膜透過能を有するHIV-1 tat peptide を結合させ、17mer-peptide 複合体を合成した。その複合体のHIV-1 integrase 阻害に基づく抗HIV-1 活性増強効果を現在検討中である。 1) H. Urata et al., Biochem. Biophy. Res. Commun., 313, 55-61 (2004).

P30[R]pm-162
抗HIV-1活性を有する四重鎖DNAとHIV-1 tat peptideとの複合体の合成とその性質
○熊代 哲也1, 川畑 拓也2, 大竹 徹2, 赤木 昌夫1, 浦田 秀仁1(1大阪薬大, 2大阪府立公衆衛生研)
【目的】Zintevir (右図) は17mer の一本鎖DNAで、分子内四重鎖構造を形成し、HIV-1 gp120 膜蛋白と宿主側のCD4 受容体との吸着過程を阻害することで抗HIV-1 活性を発揮することが知られている。我々は幾つかのHIV-1 構成分子で報告されているキラル認識能の低さに注目し、Zintevir の未修飾体 (D-17mer) の光学異性体であるL-17mer を合成した。L-17mer はZintevir と同等の強い抗HIV-1 活性を示した。さらに各17mer の標的はHIV-1 の宿主細胞への吸着・侵入過程であり、侵入後の過程は阻害していないことを明らかにした1)。一方、Zintevir は、in vitro での酵素阻害活性評価によりHIV-1 integrase に対しても阻害活性を持つことが報告されていることから、各17mer は細胞内への透過機構が存在しない為にintegrase 阻害活性を発揮できないと考えられる。そこで、我々は各17mer に細胞膜透過能を付与し、integrase 阻害効果も発揮させることを目的とした。 【実験】3’末端にアミノ修飾を施した各17mer をDNA 合成機により合成し、架橋試薬であるEMCS (N-(6-maleimidocaproyloxy) succinimide)と反応させた後、細胞膜透過能を有するHIV-1 tat peptide を結合させ、17mer-peptide 複合体を合成した。その複合体のHIV-1 integrase 阻害に基づく抗HIV-1 活性増強効果を現在検討中である。 1) H. Urata et al., Biochem. Biophy. Res. Commun., 313, 55-61 (2004).

P30[R]pm-167
FRETによるアデノシンのセンシングを目的としたATPアプタマー変換体の合成と評価
○野村 芳, 赤木 昌夫, 浦田 秀仁(大阪薬大)
【目的】アプタマーは、リボザイムのような触媒機能を持たないが、核酸だけでなくアミノ酸やタンパク質などのターゲット分子に選択的に結合するオリゴヌクレオチドである。したがって、アプタマーは核酸と生体分子との相互作用を検討するモデルとして、また新規核酸医薬品などの機能性分子として幅広く応用されている。Szostak 1)らが見出したATPアプタマーは25 merの1本鎖DNAで、ATP存在下では2つのG 4量体とステム?ループ構造を形成することが示唆されている (下図) 。そこで、AdenosineやATPが生体内での必須成分である点に着目し、これらを高感度に検出する目的でATPアプタマーを利用することを考えた。本研究では、ATP アプタマーを、FRET (蛍光共鳴エネルギー移動) を用いたAdenosineのセンシングに応用する目的で、ATPアプタマーとその変換体の合成を行った。【実験】ATPアプタマーとそのステムやステム?ループ構造の塩基配列を変えた変換体の5'末端と3'末端をそれぞれ6-FAMとDabcylで標識した1本鎖DNAを合成した。Adenosine添加によるATPアプタマーの構造変化を蛍光強度の変化により分析し、最も効率的なFRET特性を示すATPアプタマーの変換体を探索中である。 1) D. E. Huizenga, J W. Szostak, Biochemistry, 1995, 34, 656-665.

P30[R]pm-272
抗腫瘍性物質 pericosine A の全合成
○高岡 伊三夫, 宇佐美 吉英, 堀部 祐介, 市川 隼人, 有本 正生(大阪薬大)
【目的】これまでに当教室において、アメフラシ由来真菌 Periconia byssoides から抽出された抗腫瘍性物質 pericosine A の全合成が達成されたが、天然物のスペクトルデータと一致しなかった。今回、天然物の pericosine A の構造を再検討し全合成を行ない、この化合物の立体化学を明らかにする計画を設定した。また合成経路の中で、pericosine A の特徴的な構造である塩素原子を立体保持したまま導入する反応の検討を行った。 【方法・結果】シキミ酸から数段階を経て2 を合成した。3 の塩素原子導入において、様々な試薬を検討した結果、塩化スルフリル、塩化アセチルなどでは全く反応が進行しなかったのに対して、塩化チオニルにおいてのみ、室温で三時間反応させることにより、低収率ではあるが塩素原子を立体保持したまま導入することに成功した。現在、pericosine A 全合成の最後の段階である脱保護の検討を進めている。 HO OH COOHOH COOMe OTBDMS O O HO SOCl2 CH2Cl2 COOMe OTBDMS O O Cl COOMe OH HO OH Cl shikimic acid (-)-1 natural pericosine A 13 steps r.t. 3 hr. 1 step 3 (10%) 2

P28[Q]pm-026
EugenolとCyclodextrinとの相互作用
○上垣内 みよ子1, 川西 和子1, 斉藤 博幸1, 大石 宏文2, 石田 寿昌2(1神戸薬大, 2大阪薬大)
【目的】フェニルプロパノイドに分類されるEugenol はCyclodextrin(CyD)と相互作用する事はすでに報告されている。我々は、生薬ケイヒ(桂皮、Cinnamomi Cortex) にCyDs を添加してその成分であるEugenol に対する抽出効果を調べた。その際にα-, β-,そしてγ- CyD 等の種類により抽出効果が異なる結果が得られた。そこでEugenol とCyDs との相互作用について分子動力学法により詳細な包接錯体の構造的研究を行い、抽出効果との関連について検討を行った。 【方法】ケイヒ抽出液中のEugenol 定量はHPLC を用いて行った。分子動力学計算はCHARMm を用いて計算した。計算に使用した分子はX-線結晶構造解析の座標を基にDS-Modeling により構築した。 【結果及び考察】ケイヒからのCyDs 添加 によるEugenol 抽出効果は、それぞれ無添加の場合に比べて134%(α-CyD)、153%(β-CyD)、そして106%(γ- CyD)であった。分子動力学計算による包接錯体の安定構造は、β-CyD の場合においては、ゲスト分子であるEugenol の分子全体が空洞内に深く包接される構造をとっていた。α-CyDs の場合は疎水性部分が一部包接されている構造であった。γ-CyD の場合は空洞内に安定に留まらず入り口付近に留まっている構造であった。 この結果は、実際にケイヒにCyDs を O O HO O OH H2C HO n α-, β-, γ-CyD; n = 6, 7, 8 添加して抽出されたEugenol 量の順位 H3CO HO eugenol (β- > α - > γ - CyD)をよく説明する ものであった。

P28[Q]pm-056
Tauタンパク質微小管結合ドメインと各リピートペプチドにおけるフィラメント形成能のpH依存性について
○水島 史絵1, 箕浦 克彦1, 友尾 幸司1, 澄田 美保2, 谷口 泰造2, 石田 寿昌1(1大阪薬大, 2行動医科学研)
【目的】アルツハイマー病の病理学的所見の一つである神経原繊維変化(Paired Helical Filaments:PHFs)は、微小管結合タンパク質であるTau タンパク質の異常自己重合により形成されることが知られている。よって、Tau の自己重合機能の解明はアルツハイマー病治療薬の開発に非常に重要である。Tau 分子中に存在する微小管結合ドメイン (Microtubule Binding Domain:MBD)は、相同性の高い31-32 残基のアミノ酸配列が4 回繰り返された構造を有し、このMBD がPHF 形成に大きく関与していることが知られている。そこで、MBD 中の各リピートペプチド(R1,R2,R3,R4)と、R1,R3,R4 よりなるMBD3s,R1~R4 よりなるMBD4s の自己重合能をより詳細に分析することによって、自己重合能の解明とPHF 形成阻害の手段の確立に重要な情報を得られることを期待して、本実験を行った。 【実験・結果】本実験では、MBD4s,MBD3s のwild 体をHis-tag 融合タンパク質として大量発現させた。また、MBD 中の各リピートペプチド(R1,R2,R3,R4)四種は化学合成した。これらの精製した材料と各ペプチドを用いて、ThS 蛍光法やCD スペクトル測定法などの分光学的手法により、緩衝液中でのヘパリン誘導による構造遷移(ステップワイズでのランダムからβ.シート構造への移行)と自己フィラメント形成能のpH 依存性について解析した。その結果、各リピートペプチドの構造変化を含む自己重合能は、ヘパリン濃度依存性を有し、pH により自己重合能は大きく影響されることを明らかにした。特に、酸性条件下において自己重合能は著しく加速されるという事実を得た。これらの結果からPHF 形成過程には、重合に適する環境が存在することが示唆された。

P28[Q]pm-057
ヒト由来翻訳開始因子(eIF)4Eと内因性制御因子4EBPサブタイプの相互作用解析および結合におけるeIF4EN末端ドメインの役割について。
○安孫子 芙美1, 水野 敦雄1, 友尾 幸司1, 澄田 美保2, 谷口 泰造2, 石田 寿昌1(1大阪薬大, 2行動医科学研)
【目的】ヒト由来タンパク質生合成開始因子eIF4E は、mRNA の5’末端に存在するキャップ構造(m7GpppX)を選択特異的に認識してタンパク質生合成の最初のステップを触媒/開始させる重要な働きを担っている。このeIF4E の機能は、内因性のeIF4E 結合タンパク質(4EBP)により直接的に制御されている。通常、4EBP はeIF4E と結合状態にあり、4EBP がリン酸化されてeIF4E から解離すると、eIF4E の機能が発現されタンパク質生合成が開始されることは知られているが、この機構の詳細は未だ明らかではない。この4EBP には3 種類のサブタイプ(4EBP1.3)の存在が確認されているが、その機能の差異についても全く不明である。そこで本研究では、表面プラズモン共鳴(SPR)、等温滴定型カロリメトリー(VP-ITC)を用いてeIF4Eと4EBP 各サブタイプとの相互作用の差異について検討した。 【結果】4EBP 各サブタイプ間で、eIF4E に対しての結合力に差異があることが確認された。また、eIF4E のN-末端部位は非常にフレキシブルな構造を有しているが、このN 末端部位が4EBP との結合に重要であることが示唆された。

P28[Q]pm-058
ヒト由来タンパク質生合成開始因子(eIF)4AとeIF4Gの各ドメイン間のスペクトル相互作用解析
○麻植 正子, 杉本 剛, 山田 優子, 友尾 幸司, 石田 寿昌(大阪薬大)
【目的】ヒト由来タンパク質生合成開始因子のひとつであるeIF4A は、mRNA の非翻訳領域において2 本鎖RNA の2 次構造を解く役割を有している。この機能発現には、他の開始因子であるeIF4E とeIF4G とともにeIF4F を形成することが必要不可欠である。eIF4F の形成において、eIF4A はeIF4G と直接結合しているが、その結合様式の詳細についてはいまだ明らかでない。本研究は、タンパク質生合成開始反応機構解明の一環として、eIF4A の機能解析を目的とし、eIF4G との相互作用について研究した。 【方法と結果】ヒト由来eIF4A は2 つの構造ドメインをもつ。一方、eIF4G は3 つの構造ドメインを有するタンパク質である。そのうちmiddle ドメイン、C 末端ドメインがeIF4A との結合に関与すると思われているが、eIF4A の各ドメインのeIF4G への結合様式はいまだ明らかではない。その結合特異性を解明するために、eIF4A およびeIF4G の各ドメイン遺伝子の作成および大腸菌による発現系を構築し、各ドメインタンパク質の相互作用解析を行った。eIF4G のmiddle ドメイン、C 末端ドメインからなる4GMC、middle ドメインのみからなる4GM、C 末端ドメインのみからなる4GC をGST 融合タンパク質として、eIF4A およびN 末端ドメインからなるAN、C 末端ドメインからなるAC をHis タグ融合タンパク質として大腸菌より発現させて種々のクロマトグラフィーを用いて精製を行った。これらの6 種類の試料を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)法、等温滴定クロマトグラフィー(VP-ITC)により相互作用実験を行い、eIF4A やその各ドメインと4GMC、4GM、4GC との結合作用の特徴と結合強度について解析を行っている。

P28[Q]pm-059
X線構造解析に基づくCA阻害剤とウシ由来カテプシンB複合体のSn’サブサイトにおける阻害活性の定量的評価
○渡邉 大哉, 山元 淳, 友尾 幸司, 石田 寿昌(大阪薬大)
【目的】Cathepsin B(CTB)は、リソソームに存在する代表的なシステインプロテアーゼであり、酵素活性の異常によって、肺気腫、筋ジストロフィー症、リューマチ性関節炎、アルツハイマー病、骨粗鬆症、腫瘍細胞の転移などの各種疾病を誘発すると考えられている。従って、CTB に選択的な阻害剤の開発は、これらの各種疾病に対する有効な治療薬の開発に重要な知見を与えると考えられる。 当研究室のこれまでの研究により、CTB に特異的なエポキシサクシニル系共有結合性阻害剤CA074 及びE64c とウシ脾臓由来CTB との複合体構造における相互作用様式を明らかにしている。 本研究では、CA074(PrnNH-tES-Ile-Pro-OH:IC50=38nM)と構造の類似した8 種類の阻害剤を用いて、その阻害機構をX 線結晶構造解析法により解析し、阻害剤の各結合サイトに対する阻害活性の定量的な評価の確立を目的として実験を行った。 【方法】ウシ脾臓由来CTB と阻害剤との複合体溶液を調製した後に、ハンギングドロップ蒸気拡散法により結晶を作成し、得られた結晶を用いてX 線結晶構造解析法によりその阻害機構を解明した。 【結果および考察】CA059(EtO-tES-Ile-OH:IC50=24,000nM)は側鎖が短いためにS1’ サイトでCathepsinB と結合しておりS2’サイトでは結合していなかった。 側鎖の末端に大きな置換基(ベンジル基)を持つCA077(BzlNH-tES-Ile-Pro-OBzl:IC50= 46,000nM)は他のCA 阻害剤とは異なり反対向きにS サイト側を向いて結合しており、S1’及びS2’サイトでは結合していなかった。CA075(EtO-tES-Ile-Ala-OH:IC50= 23nM)はS1’及びS2’の両サイトで結合していた。本学会では、CA074 アナログの阻害機構よりわかった阻害活性に対するSn’サイトの定量的な相関を議論する。

P28[Q]pm-066
新規白金(II)二核錯体の細胞増殖抑制活性と構造との相関性
佐藤 卓史, 大西 慶彦, ○駒木 麗, 市川 隼人, 有本 正生, 齋藤 睦弘, 千熊 正彦(大阪薬大)
【緒言】 現在、シスプラチンに対して耐性を有する癌の発現が臨床上の問題となっている。演者らが開発したピラゾール配位子とヒドロキソ配位子を有する白金() 二核錯体(1,2-μH-Ampz)はシスプラチン耐性癌に有効であった。さらに、そのピラゾール配位子の4位にメチル基を導入した錯体はシスプラチンや1,2-μ H-Ampz より高い活性を示した。そこで今回、ピラゾール配位子の4位に様々な置換基を導入した新規錯体を合成し、その生物活性と構造との相関性を検討した。 【方法】 細胞はL1210 及びL1210 から樹立したシスプラチン耐性株を用いた。各錯体の増殖抑制活性はMTT 法により求めた。化合物の安定性及び脂溶性の評価はHPLC (カラム;Mighty RP-18 GP-Aqua150-4.6(5μm)、移動相;0.1M 過塩素酸:メタノール:酢酸=950:50:2)を用いて行った。 【結果および考察】 1,2-μH-Ampz の4位にエチル、プロピル、及びブロモ基を導入した錯体を新たに合成した。これらの錯体は、いずれもシスプラチン耐性細胞に対して高い活性を示した。従来からの二種の錯体及び新たに合成した三種の錯体の安定性には大きな差はなく、錯体の安定性が活性を左右している要因である可能性は低いものと考えられた。一方、その活性はピラゾールの4位のアルキル基が長くなるほど強く、白金錯体の脂溶性とIC50 値の間には高い相関性が認められた。

P28[Q]pm-068
シスプラチン耐性がん細胞に有効な白金(II)二核錯体とDNAとの非共有結合性相互作用
○佐藤 卓史, 吉田 佑子, 米田 誠治, 齊藤 睦弘, 千熊 正彦(大阪薬大)
【緒言】演者らはこれまでに、シスプラチン耐性癌細胞に対して有効な白金() 二核錯体[{cis-Pt(II)(NH3)2}2(μ-OH)(μ-pz)](NO3)2(1,2-μH-Ampz)がDNA と非共有結合性相互作用を示すことを明らかにしてきた。この作用には比較的強いものと弱いものの2 つが存在しているものと推測されたが、今回、これら2 つの作用を詳細に解析した。 【方法】種々のDNAに対して塩基対あたり任意の反応比で1,2-μH-Ampz を加え、37℃、一定時間反応させた後、NaCl を添加、あるいは添加せずに以下の解析を行った。子牛胸腺DNA について融解曲線および紫外線領域のCD スペクトルを測定した。プラスミドColE1 DNA の超らせん構造の変化を0.7%アガロースゲルを用いた電気泳動法により解析した。 【結果および考察】2 種類の非共有性結合のうち、比較的弱い結合は反応直後から認められ、数百mM 程度のNaCl の添加によって消失した。この結合によって、DNA のCD スペクトルは多価カチオンによる凝集の際に認められるものに近い変化を示した。また、この結合によってDNA の融解温度が大きく上昇することを認めた。これらのことから、この結合は、主に錯体とDNA のリン酸基間の静電的相互作用によるものと考えられた。 一方、他方の結合は、反応後30 分程度から認められ、数百mM 程度のNaCl の添加では取り除かれなかった。この結合によって、DNA は反応直後とは異なるCD スペクトルを示し、その融解温度も低下する傾向を示した。また、プラスミドDNA の電気泳動移動度の変化から、この結合によって、DNA の2 重らせんは巻き戻されているものと推測された。

P28[Q]pm-078
オキサゾリン環のキラル修飾によるアシジアサイクラマイドのコンフォメーション制御
○浅野 晶子, 山田 剛司, 土井 光暢(大阪薬大)
【目的・方法】アシジアサイクラマイド(ASC)は分子内にチアゾール環(Thz)、オキサゾリン環(Oxz)を含むcyclo(-Ile-L-Oxz-D-Val-Thz-)2 という分子内二回回転対称をもつ抗腫瘍活性ペプチドである。我々はASC の構造活性相関を検討するため、Oxz 環の絶対配置に着目したジアステレオマー誘導体を合成し構造解析を行ってきた結果、cyclo(-Ile-L-allo-Oxz-D-Val-Thz-Ile-D-allo-Oxz-D-Val-Thz-) は”flat square form”1)2),cyclo(-Ile-D-Oxz-D-Val-Thz-)2 は”reverse square form”3)の新規コンフォメーションを明らかにした。今回はcyclo(-Ile-L-allo-Oxz-D-Val-Thz-)2 の結晶構造について報告する。またOxz 環の前駆体はThr 残基であるが、Oxz 環が欠如したdASC、cyclo(-Ile-L-allo-Thr-D-Val-Thz-)2のジアステレオマー誘導体についてもX線構造解析及びP388 マウスリンパ性白血病細胞を用いた活性試験を行ったので併せて報告する。 【結果・考察】cyclo(-Ile-L-allo-Oxz-D-Val-Thz-)2 の結晶構造は”square form”であり、親ペプチドであるcyclo(-Ile-L-Oxz-D-Val-Thz-)2 とコンフォメーション、活性ともにほぼ同じであった。dASC ジアステレオマー誘導体についてはThr 残基の絶対配置にかかわらず結晶構造は全て同じ”folded form”であり活性もなかった。これらの結果はコンフォメーション、活性の両面からOxz 環の重要性を示唆しているものと思われる。 【文献】1) 日本薬学会第122 年会要旨集3 p26 (2002). 2) A. Asano et al.,Biochem. Biophys. Res. Commun. 297 143-147 (2002). 3) 日本薬学会第124 年会要旨集3 p16 (2004).

P28[Q]pm-089
シクロヘキシルアラニンを導入したp53四量体形成ドメイン( Phe341Cha)のX線結晶構造解析
○高橋 亮1, 野村 尚生2, 中村 昇太1, 吉田 卓也1, 小林 祐次3, 坂口 和靖2, 大久保 忠恭1(1阪大院薬, 2北大院理, 3大阪薬大)
【目的】癌抑制蛋白質p53 はDNA 損傷時に転写因子として活性化され、細胞周期の停止やアポトーシス誘導において中心的な働きを担っている。標的遺伝子のプロモーター領域に四量体で結合するため、四量体の形成が転写活性に必須不可欠である。p53 四量体形成ドメイン中の(E326-G356)のフェニルアラニン残基は分子内及び分子間相互作用により四量体構造の安定化に重要であると考えられている。我々はフェニルアラニン残基が四量体構造の安定性に与える効果の詳細を解明するために、フェニルアラニンをシクロヘキシルアラニンまたはペンタフルオロフェニルアラニンに置換した四量体形成ドメインを合成し、主に物理学的手法による解析を進めてきた。置換体の中で341 番目のフェニルアラニンをシクロヘキシルアラニンに置換した四量体形成ドメイン(以下Phe341Cha)は、四量体の安定性が劇的に増大するという興味深い知見を得た。本研究ではPhe341Cha の四量体の安定化機構を立体構造解析から明らかにすることを目的とした。 【方法】固相合成法により合成した四量体形成ドメイン置換型Phe341Cha をHPLC にて精製した後、蒸気拡散法で結晶化のランダムスクリーニングを行った。 【結果】六方両錐型と平板状の2 種類の結晶が得られ、六方両錐型の結晶は空間群P6422(A=50.12、B=50.12、C=48.18)で分解能2.0Åまでの回折データを収集し、平板状の結晶は空間群C3(A=77.52、B=50.04、C=55.10)で分解能2.1Å までの回折データを収集した。野生型のp53 四量体形成ドメイン結晶構造(PDB entry:1AIE)をモデルとした分子置換法で有意な解を得て、それをもとに初期モデルを構築し、現在精密化を行っている。本発表ではPhe341Cha の四量体構造の安定性について構造学的側面から考察する。

P28[Q]pm-093
立体構造に基づくリボソーム再生阻害分子の設計及び評価
○中村 友美1, 山内 英恵1, 吉田 卓也1, 川崎 有亮2, 岩井 成憲2, 井坂 秀司3, 熊谷 久美子3, 西村 光広1, 内山 進4, 小林 祐次5, 大久保 忠恭1(1阪大院薬 , 2同 基礎工, 3ペプチド研, 4阪大院工, 5大阪薬大)
【目的】リボソーム上での蛋白質生合成過程において、リボソーム、mRNA、脱アシル化tRNA から成る翻訳終結後複合体を解離し、リボソームを再生する過程は細菌の増殖に必須である。リボソーム再生因子(RRF)は、この過程に不可欠な原核生物特有の蛋白質であり、その不活化は細菌にとって致死的である。このため、RRF を阻害する分子は新規抗菌剤として期待される。近年、我々は、RRF がリボソームと結合する際、RRF 中のアルギニンクラスターを有するαヘリックスとリボソーム23S rRNA 中のHelix69-71 との相互作用が重要であることをX 線結晶構造解析により明らかにした。そこで我々は、この相互作用部位の構造を基にRRF 阻害能を有する分子を設計し、評価を行った。 【方法】RRF 中のアルギニンクラスター付近のへリックス構造およびリボソーム23S RNA Helix69-71 の構造を基にペプチド・RNA を設計し、立体構造およびリボソームあるいはRRF との相互作用を解析した。 【結果および考察】ヘリックス構造を有するペプチドの設計を試みた。15 残基からなるペプチドフラグメントに、ラクタム環を導入したものでは、分子中央部に部分的なヘリックス構造が形成されることをCD スペクトル測定およびNMR により確認した。現在、よりヘリックス含量を高めるための検討を行っている。一方、設計したRNA のうち、27 塩基からなる配列は、溶液中で特定の2次構造を形成し、表面プラズモン共鳴を用いた解析によりRRF 阻害能があることが明らかとなった。

P28[Q]pm-095
ヒト由来Condensinヒンジドメインの大量発現系の構築と機能解析
松川 慶子1, ○瀧之脇 浩人1, 中村 昇太1, 内山 進2, 福井 希一2, 小林 祐次3, 大久保 忠恭1(1阪大院薬, 2同 工, 3大阪薬大)
【目的】Condensin は細胞周期M 期において染色体を凝縮させる働きを持つ蛋白質複合体であり、複製された遺伝子を娘細胞に正しく分配するのに不可欠な役割を果たしている。Condensin 複合体の機能において、中心的な役割を果たしているのがヘテロ二量体を形成する、SMC2、SMC4 である。今回我々はヒト由来SMC2、SMC4 であるhCAP-C、hCAP-E のドメインを抽出し、X 線結晶構造解析法等による分子レベルでの機能解析を目的として大腸菌による大量発現系の構築を試みた。 【方法】クロマチン関連タンパク質は巨大な複合体を形成するものが多いため一般に大量発現、精製が困難である。我々はhCAP-C、hCAP-E のヒンジドメインの単独及び共発現系を用いることにより、目的蛋白質を可溶性画分に得ることに成功した。得られた蛋白質について、円二色性分散計(CD)及び超遠心測定を行った。また、DNA フラグメントとの結合能をゲルシフトアッセイによって解析した。 【結果及び考察】各種カラムを用いた精製によりSDS-PAGE 上で不純物の見られない各目的蛋白質を1L 培養あたり約10mg 得ることが出来た。さらにCD 測定により、得られた蛋白質がα ヘリックスとβ シートをほぼ等量ずつ含む二次構造を有していることが明らかとなった。超遠心測定では、hCAP-E を単独で発現させた場合溶液中では単一なホモダイマーを形成する一方、hCAP-C、hCAP-E の共発現系を用いた場合では単一なヘテロダイマーを形成することを見出した。DNA フラグメントとのゲルシフトアッセイでは、濃度依存的なDNA 結合能が確認できた。今回得られた結果より、hCAP-C、hCAP-E ヒンジドメインの機能メカニズムに関して考察する。

P28[Q]pm-097
再生過程リボソーム複合体の立体構造決定と創薬への応用
○大久保 忠恭1, 吉田 卓也1, 中村 昇太1, 内山 進2, 中野 博明3, 小林 祐次4, Daniel N. Wilson5, Frank Schluenzen5, Joerg M. Harms5, Paola Fucini5(1阪大院薬, 2同 工, 3京大院薬, 4大阪薬大, 5Max−Planck Inst.)
リボソーム再生因子(RRF)はEF-G と協同して蛋白質生合成終結後のリボソーム-tRNA-mRNA 複合体に作用し、tRNA、mRNA を解離する。解離反応後の遊離リボソームは再度開始過程に導かれてリサイクルされる。我々はリボソーム再生の機構を解明し新規抗菌剤を開発するためRRF の構造とリボソームとの相互作用を研究してきた。NMR 及びX 線結晶構造解析による立体構造決定を行った結果、RRF は三本鎖ヘリックスバンドル構造を持つドメインI とβ/α/β のサンドウィッチ構造をとるドメインII よりなり、二つのドメインはL 字型構造をとるように配置していることが明らかとなった。ドメインI に相当するモデルペプチド(RRF-DI)を合成し相互作用解析を行った結果、RRF のリボソームとの結合部位はドメインI であることを明らかにした。今回、我々はRRF-DI とリボソーム50S サブユニットの複合体の結晶化に成功し3.3Å 分解能でX線結晶解析を行い構造を精密化した1)。結晶構造中でRRF-DI は50S サブユニット上のA 部位とP 部位に跨る様に結合することがわかった。これは結合により翻訳終結後の複合体でP 部位にあるtRNA がP/E 部位に移動することを示すものである。RRF-DI の結合に伴い50S サブユニット中でも幾つかの構造変化が観測され、特にrRNA へリックス69 の先端部は20Å 移動していた。ヘリックス69 は50S と30Sのサブユニットの接触面に位置しており、RRF が”くさび”の様に両者の間に結合することにより50S と30Sのサブユニット間の相互作用が弱まることが示された。得られた複合体の立体構造からRRF とリボソーム及びRRF、EF-G とリボソーム複合体のモデルを構築しRRF が50S と30Sのサブユニットを解離する作用機構を明らかにしたので報告する。 1) D. Wilson et al., EMBO J., 24, 251-260 (2005)

P28[R]pm-154
カルミン酸とカルシウム(II)あるいはマグネシウム(II)の呈色反応について
○神野 伸一郎1, 新矢 洋子1, 田部 三沙1, 馬場 きみ江2, 山口 敬子1, 藤田 芳一1(1大阪薬大臨床化学, 2同 生薬科学)
【目的】ヒドロキシアントラキノン誘導体に属するカルミン酸(下図)は赤色着色料として化粧品や絵画などに汎用されているが,その構造中に隣接する二つ以上の酸素原子を有するので,アルミニウム(),銅(),スズ(),モリブデン(),タングステン()など多くの金属イオンと安定な錯体を生成するという特性を持っている。今回は,生体中,環境中で比較的大量に存在しているカルシウム(),マグネシウム() と本カルミン酸との錯生成条件を種々検討し,これら金属イオンの吸光光度定量法を開発した。 【方法】設定した定量操作法は次の通りである。カルシウム()の場合,10 ml のメスフラスコに,0.2 M アンモニア−塩化アンモニウム緩衝液 (pH 10.5) 2.5 ml,2.0× 10-3 M カルミン酸水溶液 3.0 ml を加え,次いで0.5〜10μg/ ml のカルシウム含有液を加え,水で全量10 ml とし,室温で10 分間静置後,カルシウム()のみを除いて同様に処理して得た試薬ブランク溶液を対照に530 nm における吸光度を測定する。また,0.2〜4.0μg/ ml のマグネシウム()濃度範囲でも,カルシウム()の場合と同様の操作を用いることで測定する。 【結果と考察】本操作によるみかけの モル吸光係数及び相対標準偏差は,カル シウム()の場合,9.2×103 (l mol-1 cm-1), 0.71 %( n=5; 4.0μg),マグネシウム() の場合,8.2×103 (l mol-1 cm-1),0.61 % ( n=5; 1.6μg)であった。共存物質の影響 及びその応用等について目下検討中である。

P28[R]pm-155
エオシンと銀(T)を用いるアデニン及び関連化合物の分析法の開発について(その3)
○西村 美智子, 中尾 昌弘, 田中 景子, 藤本 剛, 神野 伸一郎, 山口 敬子, 藤田 芳一(大阪薬大)
〔目的〕演者らは,プリン塩基に属するアデニンが環内に多くの窒素原子を有しているので,銅(II),銀(I)などの金属イオンと錯生成するということに着目し,[金属-アデニン]錯体と色素とのイオン会合錯体を利用するアデニンの分析法について検索し,色素としてフルオレセイン系のエオシンを,金属イオンとしてAg+を用いる簡便,高感度なアデニンの吸光光度及びより高感度化を目的としたメンブランフィルター前濃縮法について開発した。1)今回,色素のエオシンが発蛍光性である点を考慮して,蛍光光度法について検討した。また,本反応系においてAg+ を用いている点に着眼し,銀イオン電極を用いる電位差滴定法についても検討した。 [実験方法・結果]吸光光度法を参考に,蛍光光度法についての基礎的定量条件(液性の影響,界面活性剤の影響,エオシンおよびアデニン量,加温温度と時間,安定性など)を系統的に検討した。設定した操作法は次の通りである。10 ml のメスフラスコに,アデニン含有液を加え,ついで5.0×10-4 M Ag+液 0.8 ml,0.05 M EDTA.3Na−0.1 M 酢酸緩衝液(pH 5.4) 2.0 ml,0.5 % ポリビニルピロリドン(K-15) 1.5 ml,5.0×10−4 M エオシン液 0.8 ml を加え,水で全量10 ml とし,試験管に移す.別にアデニンのみを除いて同様に処理して得た試薬ブランク液と共に,60℃, 20 分加温,5 分水冷した後の本溶液の蛍光強度を同様に処理して得た試薬液と共に559 nm で測定する。 1)西村美智子ら, 分析化学,54,761(2005).

P28[R]pm-156
フルオレセインクロライドとヒスタミンの蛍光反応について
○難波 健介1, 中尾 昌弘1, 大木 正伸1, 春沢 信哉2, 大和谷 厚3, 中原 良介1, 原 小百合1, 山口 敬子1, 藤田 芳一1(1大阪薬大臨床化学, 2同 薬品合成化学, 3阪大院医)
【目的】ヒスチジンの脱炭酸より生合成されるヒスタミンは,ほとんどすべての動物体内に存在し,血管拡張,血管透過性亢進をはじめ,血圧降下,疼痛調節など,種々の生理作用を有する重要な生理活性アミンであるが,本ヒスタミン分析法として,従来より,吸光光度法,蛍光光度法,バイオアッセイ,クロマトグラフ法等が報告されている。今回,感度,選択性などの面でより優れた反応系を用いることによる新しいヒスタミン分析法の構築を目的として探索した。 【方法】有機試薬として種々の面で優れた特性を有するフルオレセイン系色素に属する無蛍光性のフルオレセインクロライド(Fl-Cl)を用い,ヒスタミンとの反応で生成する発蛍光体の最適条件−試薬量,反応溶媒,反応温度及び時間等−について,その基礎的条件を種々検討した。 【結果と考察】設定した定量法はおよそ次の通りである。共栓試験管に Fl-Cl メタノール溶液1.0 ml,1.0 M 水酸化カリウムメタノール溶液0.9 ml,更にヒスタミン含有液及びメタノールを加えて全量2.5 ml とし,よく撹拌した。次いで,共栓試験管にセミミクロ蒸留管を付し,アルミブロック恒温槽中で加温反応させた後, 一定量のエタノールで蒸留管をよく洗浄し,洗液とともに,全量10ml の試料溶液とした。次にヒスタミンを除いて同様に処理して得た空試験液(B)と試料溶液(S)の蛍光強度をそれぞれ励起波長368 nm,蛍光波長420 nm で測定し,(S−B)/ B の値を求めた。さらに詳細な検討が必要であるが,本操作法により,ヒスタミンを簡便,高感度に定量できることが示唆される。

P28[R]pm-158
EDTA共存下, Ti(IV) -サリチルフルオロン錯体の退色に基づく過酸化水素の吸光光度定量
○山口 敬子, 大久保 佳代, 中原 良介, 高田 真吾, 神野 伸一郎, 藤田 芳一(大阪薬大)
【目的】過酸化水素(H2O2)は,あらゆる分野で大いに利用されているが,臨床化学分野においては,H2O2 を生体成分とペルオキシダ−ゼの作用により発生させた後,有機試薬を用いて,生成したH2O2 との呈色反応を行うという方法が,汎用されている.しかし,この方法は,共存物質の影響を受け易いことや十分な感度が望めないために多量の試料が必要であることなどが,問題とされている.従って,H2O2 の簡便高感度な定量法の開発は,さまざまな病態の把握においても大変有意義であると考えられる.今回,当研究室では,Ti ()イオンとキサンテン系色素のサリチルフルオロンをEDTA 共存下で用いるとき,H2O2 の添加により,サリチルフルオロン−Ti (IV) 呈色錯体が,顕著に退色することを認めたので,これを利用する簡便で高感度なH2O2 の吸光光度定量法の構築を試みた. 【方法】常法(色素や金属イオンの量,反応液性,緩衝液の種類と量,界面活性剤共存による影響,反応温度と時間,添加順序,安定性など)に従い,基礎的定量条件を検討した.H2O2 溶液は過マンガン酸カリウム標準液により標定した. 【結果】10 mL のメスフラスコにH2O2 量を含む液,1×10−3 mol/L Ti () 液 0.25 mL,1.0×10−1 mol/L EDTA・2Na 液1.0 mL, 1.0 % 塩化セチルピリジニウム(CPC) 液1.0 mL,塩酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH 3.0) 3.0 mL,1×10−3 mol/L サリチルフルオロン液 (SAF) 1.0 mL を加え,室温で30 分静置後,H2O2 を添加していない試薬ブランクと共に600 nm 付近での吸光度を測定することにより,0.5μg/mL 以下のH2O2 を再現性良く定量することができた.今後,共存物質の影響やその他の過酸化水素を含む化合物並びに実試料への適用についてさらに詳細な検討を進めていく予定である.

P28[R]pm-168
腫瘍マーカーとしてのポリアミン:その高感度で簡便な分析法の開発
野上 貴三子, ○内藤 雅人, 三馬 女久美, 山崎 智香子, 梅原 聡子, 宮地 加奈子, 神野 伸一郎, 山口 敬子, 藤田 芳一(大阪薬大)
O SO3- O H OH O H OH 【目的】ポリアミンは低分子生理活性物質で活発に増殖する組織内に多量に含まれ、細胞増殖およびその制御に重要な役割を果たすなどその働きは多岐にわたっている。またガン患者においては、尿中ポリアミン排泄量が増加することから、尿中ポリアミンが非侵襲的に検査可能な腫瘍マーカーとして有用であると考えられる。今回、ポリアミンとしてスペルミン(Spm)を取り上げ、三元錯体生成反応を利用する簡便で高感度なポリアミン誘導体の新規吸光光度定量法の開発を目的として、その基礎的定量法を種々検索した。 【方法】化学プローブとしては溶媒に影響されず常に高いモル吸光係数を有するキサンテン系色素のo-スルホフェニルフルオロン(SPF 下図)、金属イオンは銅(){Cu()}を選択し、弱塩基性及び非イオン界面活性剤共存下でSpm の基礎的定量条件を検討した。 【結果と考察】定量操作法としては、10 mL のメスフラスコに 12μg 以下のSpm 含有液を加え、次いで非イオン性界面活性剤の 1.0% ポリビニルピロリドン(PVP K-15) 0.5mL、1.0% Triton X-405 0.5 mL、0.1MTris-HCl 緩衝液(pH8.9) 2.5 mL、1.0×10-3 M Cu()液0.75 mL、1.0×10-3M SPF 液 0.75 mL を加え、水で全量10 m L とする。同様に処理して得られたSpm を含まない試薬ブランク溶液とともに室温で20 分放置し、波長592nm での吸光度を測定する。本操作法における定量感度(ε)及び相対標準偏差(RSD)は、それぞれε=2.87×105 lcm-1mol-1、RSD=1.24 %(n=5)であり感度及び再現性に非常に優れ、本法が実用的なスペルミンの分析法として有用であることが示された。種々ポリアミン類への本法の応用は目下、検討中である。

P28[R]pm-324
構造改変したフェノキシキナゾリン誘導体の癌診断用放射性薬剤としての基礎的評価
○平田 雅彦, 松室 圭司, 大桃 善朗(大阪薬大)
【目的】上皮由来増殖因子受容体チロシンキナーゼ(EGFR-TK)は多くの癌細胞において、異常な活性上昇が報告されており、癌診断の有用な標的として注目されている。我々はこれまでに、6 位にモルフォリノプロポキシ基を導入した誘導体PYK が高い癌集積性及び良好な癌対組織比を示すことを見いだした。今回、さらにPYK の癌診断用放射性薬剤としての基本的性質についてインビトロ・インビボで検討した。 【方法】インビトロにおいて、EGFR-TK 発現性癌細胞の膜画分を用いてPYK のEGFR-TK に対する結合選択性及び親和性について検討した。また、インビボにおいて、担癌モデルマウスを用いて、[125I]PYK の体内分布及びEGFR-TK に対する結合選択性について検討した。さらに、担癌モデルマウスを用いて、オートラジオグラムを作成した。 【結果・考察】インビトロにおける、PYK の癌細胞膜画分への結合量はEGFR-TK 選択的阻害剤を前処置した場合にのみ有意な低下が見られ、PYK のEGFR-TK に対する結合選択性が確認された。担癌モデルマウスを用いた体内分布では、[125I]PYK は高い癌集積性と非標的組織からの速やかな消失を示し、良好な癌対組織比が得られた。また、EGFR-TK 選択的阻害剤の前処置により[125I]PYK の癌集積量は有意に低下した。これらの結果より、PYK はEGFR-TK に対する選択的な結合を介して癌に集積することが示唆された。さらに、オートラジオグラムでは、コントラストの高い明瞭な画像を得ることができた。以上より、本薬剤がEGFR-TK を指標とする癌診断用放射性薬剤としての基本的性質を有することが確認された。

O30[G]-048
ラットの尿管結紮による尿細管間質線維化障害への活性酸素とNADPH oxidaseの関与
○高野 裕子, 今田 隆文, 金村 知見, 永井 暖子, 幸田 祐佳, 河合 悦子, 玄番 宗一(大阪薬大)
「目的」腎臓の尿細管間質線維化はさまざまな進行性の慢性腎疾患に共通の最終経路であると考えられている。今回我々は、尿細管間質線維化を引き起こす一側尿管結紮(unilateral ureteral obstruction : UUO)ラットを用い、尿細管間質線維化に対する活性酸素(reactive oxygen species : ROS)およびその産生経路のひとつであるNADPH oxidase の関与について検討した。 「方法」6 週齢SD 系雄性ラットの左腎の輸尿管を2 ヶ所結紮し、UUO 処置とした。フリーラジカルスカベンジャーであるエダラボン(6 mg/kg, i.p.)はUUO 処置1 時間前から1 日2 回12 時間おきに投与した。アンジオテンシン変換酵素阻害薬であるエナラプリル(5 mg/kg, i.p.)はUUO 処置24、12、1 時間前およびUUO 処置後12 時間おきに投与した。 「結果」ラットにUUO 処置を施すことで細胞外基質である型コラーゲンの増大および組織学的検討において尿細管間質線維化領域の増大がみられた。これら尿細管間質線維化はエダラボンの投与により抑制された。UUO 処置後、酸化ストレスの指標である4-HNE(hydroxy nonenal)修飾たんぱく質は、型コラーゲン増大より早期に増加し、エナラプリルを投与することにより顕著に抑制された。ミクロソーム画分においてNADPH oxidase の構成サブユニットであるp67phox の発現は、UUO 処置6 時間目から有意に増大した。この増大をエナラプリルは完全に抑制した。 「考察」UUO 処置による尿細管間質線維化の発症・進展にROS が関与している可能性が示唆される。またUUO 処置によるROS 産生増大の一部にはアンジオテンシンによるNADPH oxidase の活性化を介している可能性が考えられる。

P28[Q]am-031
Bacillus cereus菌由来スフィンゴミエリナーゼによるリゾホスファチジルコリン加水分解反応における界面認識機構
○中野 慎一1, 藤井 忍1, 耳野 由賀里1, 前田 恵里子1, 掘島 久仁美1, 塚本 喜久雄2, 池澤 宏郎3, 池田 潔1(1大阪薬大, 2昭和薬大, 3名市大院薬)
【目的】スフィンゴミエリナーゼ (SMase) はスフィンゴミエリン (SM) を加水分解する酵素で、リゾホスファチジルコリン (LysoPC) も加水分解できる分子種がある。一般に、リン脂質分解酵素の作用は、基質であるリン脂質の物理化学的性状 (単分子分散状態やミセル状態など) によって著しく変化するが、SMase については明らかにされていない。そこで今回、炭素鎖長の異なる種々のLysoPC に対するB. cereus 菌由来SMase の加水分解作用を調べた。 【方法】SMase の酵素活性は、産生されるホスホコリンをアルカリホスファターゼ、コリンオキシダーゼ、パーオキシダーゼの作用により赤色色素に変換することによって測定した。 【結果と考察】種々のLysoPC の濃度を変えてSMase の反応速度を調べたところ、いずれの炭素鎖長のLysoPC を用いても、LysoPC の臨界ミセル濃度 (cmc) 付近では酵素活性に顕著な変化は見られなかったが、cmc の約1/4 の濃度からS 字型の反応-基質濃度曲線が得られた。この結果は、酵素分子内にアロステリック部位が存在し、その部位に単分子分散状態の基質が集合することで正の共同性が引き起こされたことを示す。また、ここで得られたS 字型の反応-基質濃度曲線は、cmc 以上の非イオン性界面活性剤存在下では双曲線に近づき、cmc 以上のホスファチジルコリン (PC) 存在下では完全な双曲線になったことから、十分な活性の発現には、酵素のアロステリック部位とPC が存在する界面との相互作用が必要であると思われた。さらに、SMase の酵素活性の発現には、Mg2+ が必要であるが、Ca2+ とMg2+ の共存下、または、Mn2+ の存在下では、アロステリック部位に対する基質の結合力が強められ、Co2+ の存在下では触媒能が高められることも明らかになった。

P28[Q]am-065
コブラ科ヘビ血清由来β型ホスホリパーゼA2阻害タンパク質の精製
○白井 僚一, 児玉 尚子, 清水 順子, 井上 晴嗣, 池田 潔(大阪薬大)
【目的】クサリヘビ科毒ヘビの血漿中には、自らの毒の成分であるホスホリパーゼA2(PLA2)の作用を中和する3 種のPLA2 阻害タンパク(PLIα、PLIβ、PLIγ)が存在し、このうちPLIβはII 型塩基性PLA2 のみを特異的に阻害する。このPLIβは無毒のナミヘビ科ヘビにも存在することから、広くヘビに存在することが予想された。そこで、I 型PLA2 を毒成分の一つとしてもつが、II 型PLA2 はもたないコブラ科ヘビにもPLIβが存在するかどうかを調べた。 【方法】タイコブラとエラブウミヘビの血清について、Blue Sepharose 6 Fast Flow カラム、Q Sepharose カラム、Phenyl Sepharose カラム、Superdex 200 カラムなどを用いるクロマトグラフィーを行い、各画分について抗PLIβ抗体を用いるウェスタンブロットを行った。 【結果と考察】タイコブラとエラブウミヘビ血液中には抗PLIβ抗体と免疫交差性を示すタンパク質が存在し、それらを精製することができた。これらのタンパク質はクサリヘビ科のPLIβと同様の3 量体構造をとっており、マムシ毒由来のII 型PLA2 を阻害したので、PLIβと断定した。しかし、これらのPLIβはエラブウミヘビ毒由来のI 型PLA2 を阻害しなかった。以上の結果から、PLIβはコブラ科ヘビにも存在しているが、それは自身の毒の成分であるPLA2 の中和として機能しておらず、何らかの別の機能をもつことが示唆された。また、今回精製したPLIβの存在量はクサリヘビ科のものと比較して非常に少なかったことから、マムシなどのクサリヘビ科ヘビは、自らの毒の成分であるPLA2 に対して耐性を示すために、コブラ科やナミヘビ科ヘビに比べて大量のPLIβを発現していると考えられる。

P28[Q]am-073
タンビマムシ由来ホスホリパーゼA2阻害タンパク質PLIαの三量体形成に関与する部位の特定
○岡本 将隆, 西田 正範, 大野 愛, 奥村 幸治, 井上 晴嗣, 池田 潔(大阪薬大)
【目的】タンビマムシの血液中には,型酸性ホスホリパーゼA2(PLA2)を特異的に阻害するタンパク質GbPLIαが存在しており,それはホモ三量体構造をもつ. 一方,シマヘビの血液中には,PLA2 を阻害しないPLIαホモログ( EqPLIα-LP)が存在する.これまでに我々は,GbPLIα の13-36 位の領域が酸性PLA2 の阻害と三量体形成に関与することを, GbPLIαとEqPLIα-LP のキメラ変異体を用いて明らかにしてきた.そこで今回,この三量体構造形成に関わる部位をさらに明確にすることを試みた. 【方法】GbPLIα, EqPLIα-LP,および種々の変異体について,ヘテロ三量体を形成するかどうかをMono Q カラムクロマトグラフィーにより調べた.また,三量体の安定性については,種々の濃度の塩酸グアニジン存在下におけるゲル濾過クロマトグラフィーにより調べた. 【結果および考察】GbPLIα とEqPLIα-LP の間ではヘテロ三量体は形成されなかったが,それぞれの13-36 位の配列領域を互いに置換したキメラ変異体は,ヘテロ三量体を形成した.また,Lys28 をGlu に置換した部位特異的変異体GbK28E では、GbPLIαと比べ,より低濃度(1.7 M)の塩酸グアニジンで三量体のサブユニットへの解離が起こった.このこととEdmundson wheel analysis の結果を参照した結果,Lys28 の正電荷と他のサブユニットのGlu23 の負電荷との間の相互作用が三量体形成に関与していることが予測された.そこで,Lys28 をGlu に,Glu23 をLys に置換した部位特異的変異体GbE23K-K28E を作成し,この変異体とEqPLIα-LP の間でヘテロ三量体が形成されるかどうかを現在検討中である.

P28[Q]am-096
アミンの価数によるZ-DNAの安定化機構の構造化学的研究
○大石 宏文1, 塚本 効司2, 大床 真美子3, Grzeskowiak Kazmierz4, 前崎 直容2, 岡部 宣雄3, 田中 徹明2, 石田 寿昌1(1大阪薬大, 2阪大院薬, 3近畿大薬, 4UCLA)
【目的】モノアミンあるいは2価〜5価のポリアミンと左巻きZ-DNAの相互作用様式を明らかにしアミンと金属による左巻きZ-DNAの安定化機構を構造化学的に明らかにする目的でアミン−Z-DNA複合体のX-線結晶構造解析を行った. 【方法】モノアミンあるいは2価〜5価のポリアミンとd(CGCGCG)2との複合体を高塩濃度下で結晶化を行いSPring-8、高エネルギー加速器研究機構の放射光を用いて各結晶のX線回折データ測定を行った.そのデータを用いてX-線結晶構造解析を行った. 【結果】構造解析の結果、DNAは左巻きであった.ポリアミンが4価以上のときは2分子のポリアミンがDNAに結合し4価のときは1個のMg2+イオンがDNAに配位結合しリン酸の10価の負電荷を中和していた.ポリアミンが2価、3価のときは1分子のポリアミンがDNA に結合し2価の時は4個のMg2+イオンが配位結合していた.ポリアミンが3価のときは3個のMg2+イオンと1個のNa+イオンがDNAに配位結合していた.モノアミンのときは5個のMg2+イオンがDNAに配位結合しモノアミンはDNAに結合しないことがわかった.このようにポリアミンの価数が多くなるほどポリアミンはDNAに結合しやすくなり金属は結合しにくくなる.ポリアミンの価数が少なくなるとポリアミンはDNAに結合しにくくなり金属は逆にDNAに結合しやすくなる.このことは、ポリアミンの価数が多くなるとZ-DNAのマイナーグルーブにポリアミンは結合しやすくなり、さらに複数のポリアミンによって非常にZ-DNA を安定化するためであることが結晶構造よりわかった.ポリアミンによるZ-DNAの安定化にはポリアミンの価数が関与していることがはじめて明らかになった.

P28[R]am-159
化学発光を用いたセレン化合物のスーパーオキシドアニオンラジカルの消去活性の評価
○梅本 大輔, 佐藤 卓史, 齊藤 睦弘, 千熊 正彦(大阪薬大)
【目的】グルタチオンペルオキシダーゼ(Gpx)の活性中心がセレノール基であることでも示されるように、セレンは生体内の重要な酸化還元反応に関与する必須元素である。合成有機セレン化合物の一つであるエブセレンはGpx 様活性を有するばかりでなく、スーパーオキシドアニオンラジカル(SO)やperoxynitrite などを消去する活性も示すと報告されている。我々もセレン化合物の抗酸化活性について検討を重ねてきたが、今回はエブセレンの構造を基にして合成した2〜3 のセレン化合物のSO 消去活性を化学発光法により測定し、それらの抗酸化活性を評価した。 【方法】SO は、ヒポキサンチン−キサンチンオキシダーゼ系により生成させた。SO 測定用の化学発光試薬にはMPEC(アトー)を用い、化学発光測定装置はAB2200 型ルミネッセンサーPSN(アトー)を用いた。合成したセレン化合物および対照化合物は、DMSO または0.1M リン酸緩衝液(pH7.5)に溶解して用いた。化学発光は、0.1M リン酸緩衝液(pH7.5)中、37℃で60 秒間測定し、測定値を積算した。セレン化合物のSO 消去活性は、被検化合物非存在下の発光値を基準とし、化合物共存による発光値の減少を指標として評価した。 【結果・考察】合成したエブセレンジセレニドは、アスコルビン酸の約6 倍のSO 消去活性を示した。この活性はエブセレンの約2 倍であり、他のジセレニド結合をもつセレン化合物よりはるかに高かった。また、エブセレンの構造を基にして合成したN-フェニル(2-セレノアリル)ベンズアミドも活性を示し、その活性はアスコルビン酸よりは低いものの、クロロゲン酸より高かった。以上、今回新たに合成したセレン化合物がSO 消去活性を示すことが明らかとなった。

P28[S]am-444
細胞周期進行におけるプロリルオリゴペプチダーゼの役割
○坂口 実1, 上田 裕子1, 吉川 倫太郎1, 中村 祐佳里1, 伊達 友美1, 辻 実子1, 芳本 忠2, 松村 瑛子1(1大阪薬大 , 2長崎大院医歯薬)
【目的】 プロリルオリゴペプチダーゼ(POP)は、ペプチドに作用してプロリンのC 末端ペプチド結合を水解するオリゴペプチダーゼである。POP の生理的役割に関する研究は、脳中に多く存在していることや、プロリンを含む多くの神経ペプチドを分解することから、神経伝達機構への関与を中心に進められて来た。今回、我々は、POP が細胞質の酵素であることや、神経組織以外にも広く分布していることから、基本的な細胞機能に関与していると考え、合成POP 阻害剤を用いて、細胞の増殖・細胞周期進行におけるPOP の役割について検討した。 【方法】POP 活性を示すヒト神経芽細胞腫NB-1 細胞を用い、POP 阻害剤としてZ-thiopro-thioprolinal(Z-TTal)とSUAM-14746 を使用した。細胞増殖の測定は、WST-8 による生細胞の測定により行った。細胞周期の進行は、フローサイトメーターでDNA 含量を測定して解析した。また、各種サイクリンなどの細胞周期制御分子の発現量をウエスタンブロットにより解析した。 【結果】Z-TTal およびSUAM-14746 は、共に40μM で72 h 後に、NB-1 細胞の増殖を40-60%阻害した。さらに70μM 以上では、ほぼ完全に増殖を抑制し、48 h 以降細胞死を誘導した。増殖期あるいはヒドロキシウレアでS 期に同調したNB-1 細胞に、Z-TTal およびSUAM-14746 を添加すると、S 期→G2/M 期→G1 期移行を遅延させ、G1 期→S 期移行を阻害する事が明らかになった。またSUAM-14746 は、細胞周期進行に伴うサイクリンA およびサイクリンB の消失を遅延させ、サイクリンE の発現を抑制した。以上の結果は、POP が細胞周期進行に関っていることを示唆している。

P28[S]am-537
マウスアストロサイトの神経栄養因子分泌調節に及ぼす核酸免疫賦活剤の影響
○鎌田 真規子, 豊元 操, 天野 富美夫, 林 恭三, 井上 晴嗣, 池田 潔(大阪薬大)
【目的】アストロサイトで活発に生合成されている神経栄養因子は、神経機能の維持・修復に重要な役割を果たすことから、神経系疾患の予防や治療に有効であると期待されている。そこで、神経疾患に対する核酸系免疫賦活剤の臨床応用への可能性を調べるために、アストロサイトの神経栄養因子分泌調節に及ぼすそれらの影響を調べた。 【方法】調製したマウスアストロサイトを、bDNA やCpG 含有オリゴヌクレオチドを含むBSA-DMEM 培地中で所定時間処理し、培地中のNGF 量をサンドイッチELISA 法で測定した。また、種々の濃度のbDNA で24 時間処理したアストロサイトと、5μg/ml のbDNA で種々の時間処理したアストロサイトからmRNA を抽出し、リアルタイムPCR 法により相対発現量を測定した。 【結果・考察】アストロサイトのbDNA 処理により、培地中のNGF 量は約15 倍に増加した。CpG-ODN がNGF 生合成促進効果を示しNon-CpG-ODN は示さなかったので、bDNA のNGF 生合成促進効果は、bDNA 中のCpG モチーフによるものであると考えられた。CpG はTLR9 のリガンドであり、アストロサイトにおけるTLR9 の発現が確認されたことから、bDNA のNGF 生合成促進効果はTLR9 を介した効果であると思われる。またリアルタイムPCR 法により調べたところ、NGF のmRNA 量は5μg/ml のbDNA 添加後3 時間で2.4 倍増加し、NGF 以外にもBDNF やGDNF のmRNA 量が増大した。またTNFαのmRNA 量は6 時間後に75 倍、IL-6 のmRNA 量は12 時間後に9000 倍増加した。それに伴ってTLR9 遺伝子発現が12 時間後に10%程度まで減少した。これは、ダウンレギュレーションが起きていることがわかった。

P28[S]pm-435
酵素誘導剤投与時におけるCYP3A活性の時間的変化に関する研究
○本庄 達哉, 岩永 一範, 宮崎 誠, 掛見 正郎(大阪薬大)
【目的】近年のCYP3A 誘導機構に関する研究により,内因性物質として胆汁酸の関与が報告されている.また,外因性因子としてはリファンピシンやデキサメタゾン(DEX)の投与等があげられるが,そのCYP3A 誘導機構の詳細についても同様に明らかにされている.しかし,これらの薬物により誘導が生じる際のCYP3A 活性の時間的変化等についてはほとんど情報が得られていないのが現状である.そこで本研究では,CYP3A 誘導剤の投与期間と誘導率の関係および誘導剤投与後のCYP3A 活性の時間的変化について詳細に検討を行った. 【方法】CYP3A の誘導:CYP3A 誘導剤としてDEX-21-リン酸塩(DEXp)を用いた. Wistar 系雄性ラット(350-400g)に,DEXp を50mg/kg/day の割合で経口投与した.投与期間は1,3,5 日間とし,DEXp 最終投与24 時間後にCYP3A 活性を測定した. また別に,同条件にてDEXp を1 日投与した後,48 時間までCYP3A 活性を経時的に測定した.CYP3A 活性測定:常法に従い,ラットの肝および小腸粘膜から調製したミクロソームにMidazolam (MDZ)を添加してincubation を行い,MDZ の代謝体である1-OH MDZ,4-OH MDZ の生成速度を算出し,CYP3A活性の指標とした. 【結果・考察】DEXp 投与の日数を変化させた際,CYP3A 活性は,肝,小腸ともに1 日投与によりすでにDEXp 非投与群と比較して有意に増大していた.同様に3, 5 日間投与群においてもCYP3A 活性の有意な増大が認められたが,その誘導率には投与日数による有意な差は認められなかった.一方,DEXp 投与後のCYP3A 活性は,投与後6,12 時間と順に増大したが,24 時間後にはすでに低下傾向を示した.以上のことから,DEXp によるCYP3A 誘導は極めて短時間で生じるものの速やかに低下すること,および誘導率は投与日数と無関係である可能性が示唆された.

P28[S]pm-554
リドカイン・プロパフェノン併用による虚血再灌流不整脈への影響
○守田 淳哉, 川上 有香, 中野 里香, 加藤 隆児, 廣谷 芳彦, 田中 一彦(大阪薬大)
【背景・目的】抗不整脈薬の併用によって、より効果的な抗不整脈作用を示すことが報告されている。そこで、lidocaine(Lid) + propafenone(Pro)併用による虚血再灌流不整脈の抑制効果について検討を行った。 【方法】Wistar/ST 雄性ラットを用い、心摘出後、Langendorff 法による灌流を開始した。15 分間の安定化後、10 分間Lid(1 、2μM)を溶解した灌流液、Pro(0.005、0.0075、0.01 μM)を溶解した灌流液、Lid + Pro 共に溶解した灌流液を用いて灌流を行った。その後、11 分間の左冠動脈前下行枝の虚血後、3 分間の再灌流を行った。Control 群には、安定化後、薬物を溶解しない灌流液を用いた。 【結果】Sustained VF 発現率はcontrol 群では80%であったのに対し、Lid 1 μM 投与群では80%、2μM 投与群では20%となり、Pro 0.005、0.0075、0.01 μM 投与群では80、60、40%と濃度依存的に減少した。またLid 1 μM、Pro 0.0075 μM 単独投与群ではそれぞれ80%、60%であったのに対し、併用群では20%とsustained VF 発現率の減少傾向が認められた。薬液投与10 分後のHR、CF はcontrol 群、全ての単独投与群および併用群において有意な差は認められなかった。 【考察】Lid + Pro の併用による、虚血再灌流不整脈に対する抗不整脈効果の増強は、Na+チャネルの活性化状態・不活性化状態の延長による効果の増強が関与したと考えられる。これらのことから抗不整脈効果の増強が認められ、両者の併用は有用であるという可能性が示唆された。

P28[S]pm-559
フランス海岸松ポリフェノール成分フラバンジェノールに関する薬理学的研究:血管内皮細胞におけるNF-κB誘導性遺伝子発現に対する影響
○谷口 尚子1, 大喜多 守1, 西川 雄樹1, 高岡 昌徳1, 木曽 良信2, 松村 靖夫1(1大阪薬大, 2サントリー健康科学研)
【目的】フランス海岸松の樹皮から抽出されるフラバンジェノールは、オリゴメリックプロアントシアニジンを主成分としたポリフェノール成分を豊富に含む混合物であり、抗酸化作用、抗炎症作用など多彩な作用を有することが明らかにされている。また最近、フラバンジェノールが各種循環器系・炎症性疾患の病態形成時に誘導される転写因子nuclear factor-kappa B(NF-κB)に対して阻害作用を有することも報告されているが、その詳細な作用機序は未だ明らかにされていない。そこで本研究では、培養血管内皮細胞を用いてフラバンジェノールのNF- κB 活性化に対する阻害作用機序とNF-κB 誘導性遺伝子発現におよぼす影響について検討した。【方法】血管内皮細胞を無血清培養後、各種薬物を添加して一定時間反応させた。NF-κB 活性化経路に対する薬物の影響はゲルシフト法およびウエスタンブロット法を用いて調べた。さらに、NF-κB により誘導されるエンドセリン-1(ET-1)およびintercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)遺伝子発現の変動についてはreal time RT-PCR 法を用いて調べた。【結果】培養血管内皮細胞にTNF-αを添加すると顕著なNF-κB の活性化が認められたが、フラバンジェノールはこの活性化を濃度依存的に抑制した。また、フラバンジェノールはTNF- α添加直後に生じるNF-κB 抑制性結合タンパクIκBαのリン酸化を顕著に阻害した。さらに、ET-1 およびICAM-1 遺伝子発現はフラバンジェノールを処置することで有意に抑制された。【考察】フラバンジェノールのNF-κB 活性化阻害作用はIκBαのリン酸化抑制に基づくことが明らかとなった。また、フラバンジェノールによりNF-κB 誘導性遺伝子発現が抑制されたことから、本成分はNF-κB 活性化亢進を伴う種々の疾病に対して予防効果を発揮する可能性が示唆された。

P28[S]pm-560
フランス海岸松ポリフェノール成分フラバンジェノールに関する薬理学的研究:虚血性急性腎不全に対する改善効果
○大喜多 守1, 谷口 尚子1, 西川 雄樹1, 中島 淳志1, 上田 恭子1, 高岡 昌徳1, 木曽 良信2, 松村 靖夫1(1大阪薬大, 2サントリー健康科学研)
【目的】ポリフェノール成分を豊富に含むフラバンジェノールは、抗酸化作用、抗炎症作用並びに血管内皮一酸化窒素産生促進作用など多彩な生理作用を持ち合わせていることから、各種病態疾患の予防薬としての可能性が注目されている。本研究では、虚血性急性腎不全モデルを用いて腎障害に対するフラバンジェノールの効果を評価した。【方法】虚血性急性腎不全モデルは、8 週齢のSD 系雄性ラットの右腎を摘除し、2 週間後、左腎動静脈の血流を45 分間遮断した後、再灌流を行うことで作製した。フラバンジェノールは虚血5 分前に静脈内に投与し、対照群には溶媒を投与した。また、虚血再灌流処置を除いて同様の操作を行なったものをsham 群として用いた。虚血再灌流終了24 時間後から5 時間尿を採取、採血および左腎摘出を行った。得られた尿および血漿から腎機能の指標となる各種パラメーターの測定並びに算出を行った。また、摘出した左腎を用いて病理組織学的検討を行った。【結果・考察】虚血再灌流処置により、対照群においてはsham 群と比較して有意な血中尿素窒素、血漿クレアチニン、尿中ナトリウム排泄率並びに尿量の増加と、クレアチニンクリアランスおよび尿中浸透圧の低下が認められた。これら腎機能の悪化はフラバンジェノール投与により用量依存的に抑制され、フラバンジェノール30 mg/kg 投与群ではsham 群とほぼ同程度にまで改善された。また、対照群のラットでは腎髄質外層外帯における尿細管壊死、内帯における鬱血・出血、髄質内層におけるタンパク円柱などの障害像が認められたが、フラバンジェノール投与群では、尿細管壊死およびタンパク円柱の顕著な改善が確認された。以上の結果より、フラバンジェノールは虚血性急性腎不全に対して予防効果を発揮する可能性が示唆された。

P28[S]pm-561
フランス海岸松ポリフェノール成分フラバンジェノールに関する薬理学的研究:血圧および腎髄質血流に対する効果
○郭 哲俊1, 吉村 麻紀子2, 日下部 裕美1, 中野 大介1, 木曽 良信2, 松村 靖夫1(1大阪薬大, 2サントリー健康科学研)
【目的】フラバンジェノールはオリゴメリックプロアントシアニジンを主成分とするフランス海岸松から抽出されるポリフェノール成分である。当研究室では、ラット胸部大動脈リング標本においてフェニレフリンによる収縮に対してフラバンジェノールは弛緩作用を示すことを確認している。また非選択的一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)阻害薬であるニトロアルギニンの前処置、あるいは内皮細胞を除去することによりその弛緩作用が消失することから、弛緩作用のメカニズムとして内皮由来のNO が関与していることが示唆された。また腎虚血再灌流障害に対してフラバンジェノールの前処置は用量依存的に障害を軽減することを報告している。以上より腎虚血再灌流障害の改善メカニズムとしてフラバンジェノールのNO を介した血流増加によるものではないかと考え、我々は腎血流、特に体液調節に関わる腎髄質血流に着目し、レーザードップラー血流測定器を用いてフラバンジェノールの腎髄質血流および全身血圧に対する影響について検討を行った。また非選択的NOS 阻害薬であるL-NAME を前処置しNO の関与についても検討を行った。【方法】実験動物として体重250〜350g の雄性SD 系ラットを用いた。イナクチン麻酔下で血圧の測定、腎髄質血流の測定を行った。外科的処置を施した後に、60 分の安定期間を経て、vehicle として生理食塩水、フラバンジェノールを10、20、30mg/kg の順に20 分間隔で静脈内投与を行った。L-NAME (10mg/kg)の前処置はもっとも作用が強く現れたフラバンジェノール 30mg/kg 投与の10 分前に行った。【結果および考察】20mg/kg 以上の用量でのフラバンジェノールの静脈内単回投与により顕著な血圧の低下とその後の腎髄質血流の増加がみられた。またL-NAME 前処置により腎髄質血流の増加は抑制できなかったが、作用持続時間が短縮したことからNO の関与が考えられた。

P29[R]am-230
中国製漢方製剤中に高濃度で含まれるヒ素および水銀の化学形態分析と体内挙動
○三野 芳紀, 落合 孝充, 西村 詩央里, 安田 正秀(大阪薬大)
【目的】演者らは、中国製漢方製剤の一部に極めて高濃度のヒ素と水銀が含有されていることを既に報告している。1) 当該製剤の服用による健康障害が危惧されるので、今回はその中に含まれる両元素の化学形態を明らかにするとともに、吸収率など体内挙動に関する検討を行った。 【方法】漢方製剤中の金属元素の定量は、波長分散型蛍光X 線分析装置(理学電機製)を用い、FP 法により行った。化学形態分析は、レーザーラマン分光光度計(日本分光)により行い、動物臓器中の水銀とヒ素濃度は、加熱気化水銀測定装置(平沼)とICP-MS(セイコー)にて測定した。 【結果と考察】:中国製漢方製剤では、29 検体のうち、14 検体に高濃度の水銀(1.2~18%)が検出され、9 検体に高濃度のヒ素(0.6~11%)が検出された。特に、今回分析した六神丸(5 検体)のうち、1 検体では、約11%ものヒ素が、残りの4 検体では6~7%の水銀と8~9%のヒ素の両者が検出された。一方、国内で入手可能なものでは、14 検体のうち、何れの場合も高濃度のヒ素及び水銀は検出されなかった。 漢方製剤中のヒ素と水銀の含量量と硫黄含量の間に相関関係がみられたことから、両金属とも硫化物として含有されていると推定された。この結果は、ラマンスペクトルのデータからも支持された。ヒ素の硫化物は必ずしも安定ではなく、実際、漢方製剤からヒ素の一部が水で溶出することが判明した。これらの結果から、高濃度ヒ素含有漢方製剤の服用により健康障害が引き起こされる可能性が示唆された。なお、それら漢方製剤中の水銀やヒ素が実際に体内に吸収されるか否か、などの体内挙動については、動物実験により、現在検討中である。 【文献】1) Y. Mino, Y. Yamada, J.H.S., 51, 607-613 (2005).

P29[R]am-243
抗原感作マウスに対するダニ殺虫剤成分の影響に関する考察
○乾 真由美1, 菰田 綾佳2, 西野 正雄3, 林 俊祐4, 宮本 如奈5, 高倉 弘士6, 臼井 一城7, 畠山 有理8(1大阪薬大, 2府立藤井寺高校, 3府立富田林高校, 4府立生野高校, 5同志社大文, 6立命館大産社, 7北陸大薬, 8長崎大薬)
「経緯」…マウスA/G比に影響を与えるダニ殺虫剤に関する報告を行った。この端緒は、ダニ用殺虫剤を散布した部屋で出産後のビーグル犬、母犬を飼育した際、普通常在菌であり発症しにくい犬ヘルペス感染症に感染し、全ての子犬が死亡した事例を受け、ダニ殺虫剤の免疫系への関与を調査し始めたことにある。 「目的」…ダニ用殺虫剤に含まれる成分を卵白アルブミンにて抗原感作したマウスに与え、A/G比及びマウスでの血液生化学的検査結果をもとに、ダニ殺虫剤及びその溶剤ケロシンさらに有効成分の影響を再度濃度を上げ検討した。 「方法」…ウイスター系ddyマウス3週令オスに対して、フロイントのコンプリートアジュバントを用い、卵白アルブミンにて感作した。同時にダニ用殺虫剤の溶剤に使用されているケロシン、ケロシン溶解スミトリン、ケロシン溶解サリチル酸フェニル、ケロシン溶解サリチル酸フェニル+スミトリン、ダニ用殺虫剤などを床敷きに混和し飼育した。2週間後セボフルレン麻酔下、心臓採血し遠心分離後血漿を得た。この血漿を、血液自動分析装置SPOTCHEM SP-4410を用いグルコース、総ビリルビン、尿素窒素,AST,ALT、コレステロールを測定した。 「結果・考察」…今回、オス実験の場合、対照群のA/G比は1.76±0.05、感作群は1.47±0.01、感作後ダニ殺虫剤を暴露した群は1.84±0.11と、ダニ殺虫剤の抗原感作時グロブリン増加の抑制作用が再確認された。この状況下、ケロシン群1.60 ±0.06、ケロシン溶解スミトリン群1.68±0.14、ケロシン溶解サリチル酸フェニル群1.28±0.10、ケロシン溶解スミトリン・サリチル酸フェニル群1.34±0.31となった。使用薬物の量も関係するため断定できないが、この結果でスミトリンやサリチル酸フェニルと複雑に絡み合う影響が強く唆された。

P29[S]am-414
マクロファージ活性化に及ぼすトリブチルスズ(TBT)の影響
○天野 富美夫, 松本 千香, 宮井 絢美(大阪薬大)
[目的]内分泌撹乱物質として魚介類の汚染が問題になっているトリブチルスズ(TBT)の免疫系に及ぼす影響を評価するため、マクロファージ活性化を指標にした検討を行った。[方法]マウスマクロファージ系細胞株J774.1 細胞を播き、37℃、4 時間培養後、新たな培地と交換し、これにTBT、ならびにジブチルスズ(DBT)、モノブチルスズ(MDT)を最終濃度0.001-1μM で添加して、さらに100ng/ml LPS あるいは10U/ml IFN-γを加え、37℃で24 時間、培養した。培養上清に回収されたNO2- およびTNF-αを、それぞれGriess 試薬およびELISA で検出・定量し、マクロファージ活性化の指標とした。また、MTT 反応を行い、これらの有機スズ化合物が細胞の代謝機能及び増殖に及ぼす作用を検討した。[結果]調べた濃度範囲において、TBT は0.01μM まで、またDBT は0.1μM まで、MBT は1μM まで、MTT 反応に影響を及ぼさず、それ以上の濃度で有意な低下を示し、1μM TBT はMTT 活性をほぼ完全に阻害した。そこで、これらの細胞障害性が現れない、0.1μM までの濃度においてマクロファージ活性化に対する作用を調べた結果、TBT は0.01μM 以上で濃度依存的にいずれの指標においてもマクロファージ活性化の阻害を示した。DBT およびMBT の阻害作用はTBT に比べ、有意に低かった。[結論・考察]マクロファージ活性化に対する毒性は、細胞毒性が現れない0.1μMTBT においても有意に現れ、有機スズ化合物の構造に関連して、DBT、MBT よりも強かった。今後、免疫系に対する有機スズ化合物の毒性等、影響評価をする上で、培養系マクロファージ細胞を用いた試験が、有用であると考えられる。

P29[S]am-430
安定型産業廃棄物処理場設置許可申請に係わる科学的住民運動に関する考察
○高倉 弘士1, 菰田 綾佳2, 西野 正雄3, 林 俊祐4, 宮本 如奈5, 乾 真由美6, 臼井 一城7, 畠山 有理8(1立命館大産社, 2大阪府立藤井寺高, 3同 富田林高, 4同 生野高, 5同志社大文, 6大阪薬大薬, 7北陸大薬, 8長崎大薬)
「背景」・・伊賀市長田地区における産業廃棄物処理施設設置許可申請に関わり、既存の処分場に加えた処分場増設に対して周辺住民と協力しその安全性を検証している。当該施設から住民主導型の調査でPCB付着廃棄物が検出され、その安全性が問題となっていた。今回三重県測定による周辺の水の測定で基準値以上のヒ素とホウ素が検出され、一万人以上の署名による増設反対運動が加速しているなか産業廃棄物処理施設変更許可申請に係わる共同調査会議が行われた。 「目的及び方法」・・伊賀市長田地区における産業廃棄物処理施設設置許可申請に関わり、既存の処分場に加えた処分場増設に対して、既存処理施設からの浸出水に対する安全性をトウゴマ発芽時におけるアミラーゼ活性に及ぼす影響を調べ検討した。また、当該処理施設許可申請に係わる平成九年廃棄物処理法の改正による三重県生活環境に関する条例95条による専門家による共同調査会議の内容により、当該施設の問題点を分析した。 「結果及び考察」発芽時におけるアミラーゼ活性に及ぼす影響を検討した結果、周辺の汚染を受けていないと考えられる水を用いて発芽させた場合と比較し、汚染浸出水を用いて発芽させた場合、アミラーゼの活性は発芽時低い値を示した。この結果の後、浸出水に基準値以上のヒ素及びホウ素が検出されたが、周辺住民にとって、オタマジャクシの生存期間短縮や、発芽時の植物への影響という目に見えたデータを提供することにより、より当該処分場の危険性確認に向けた運動は力強いものとなり専門家による共同調査会議の中でも取り上げられ源水が酸性ではないかなどの疑問の萌芽を与える事が出来た。

O28[N]-132
セリ科植物含有フラノクマリン類による小腸CYP3A阻害効果に関する検討
○前原 達也1, 岩永 一範1, 宮崎 誠1, 芝野 真喜雄2, 谷口 雅彦2, 馬場 きみ江2, 掛見 正郎1(1大阪薬大 薬剤, 2同 生薬)
【目的】近年、グレープフルーツジュース(GFJ)に含まれるフラノクマリン類(FCs) は強力なCYP3A 阻害効果を有していることが報告されている。一方、生薬として繁用されるセリ科植物に含有されるFCs が併用薬物の代謝に及ぼす影響については明らかではない。私たちは日本薬学会第125 年会において、12 種のセリ科植物含有FCs がラット小腸CYP3A 阻害効果を有していることを報告した。今回、これらのFCs のうち阻害効果の強い2 種のFCs(Bergapten,Notopterol)を選び、その阻害効果の違いについて検討を行った。 【方法】incubation 実験: Wistar 系雄性ラット(B.W.300-350g)の小腸上部20cm から常法に従いミクロソームを調製した。CYP3A 基質薬物としてテストステロン(TES) 又はミダゾラム(MDZ) を用いてFCs(0.5-50 μ M) の存在、非存在下でincubation を行い6β-OH TES,1-OH MDZ の生成速度を算出し、CYP3A 活性の指標とした。in situ closed loop 実験:ペントバルビタール麻酔下、ラット門脈にカニュレーションを施し、小腸上部にclosed loop(10cm)を作成した。さらに新鮮血液を頚静脈より輸血した。loop 内にMDZ(10μM)及びFCs(50μM)の混液を1mL 投与後、門脈血を連続的(1hr)に採取しMDZ 及び1-OH MDZ 濃度を測定した。また別にloop 内をFCs で30 分間前処理を行った後MDZ 投与し、同様の実験を行った。 【結果・考察】両FCs は濃度依存的なCYP3A 代謝活性の阻害を示し、そのIC50 値はともに数10μM 程度であった。一方、Notopterol は時間依存的な阻害効果を示したのに対してBergapten は示さなかった。また、in situ closed loop 実験の結果はin vitro実験の結果を反映したものであった。よってセリ科植物含有FCs は、その種類によりCYP3A に対する阻害様式が異なることが明らかとなった。

P29[S]pm-581
リポポリサッカライドの小腸P-糖タンパク質発現及び活性に及ぼす影響
○森口 純, 山下 哲史, 中川 真智子, 加藤 隆児, 廣谷 芳彦, 田中 一彦(大阪薬大)
【背景・目的】感染症時にはP-糖タンパク質(P-gp)の発現量や活性が変化することにより、薬物の体内動態が変化することはよく知られている。感染症の一種であるlipopolysaccharide(LPS)誘発性ラット敗血症モデルにおいて肝臓P-gp 発現量が減少するという報告があるが、小腸P-gp 発現量や活性についての検討は少ない。そこで、今回LPS 誘発性ラット敗血症モデルにおける小腸P-gp 発現及び活性の変動を検討した。 【方法】WistarST 系雄性ラットを用い、LPS(E.coli)5 mg/kg を腹腔内投与した。LPS 投与前、LPS 投与1, 3, 7 日後に小腸を摘出し、Western blot 法にて小腸P-gp 発現の変動を検討した。また、Rhodamine123 (Rho123) を用いて、in situ小腸一回灌流法によりRho123 の腸管内への排出量を測定し、小腸P-gp 活性について検討を行った。 【結果・考察】LPS 投与1 日後ではP-gp 発現量が有意に減少し、小腸P-gp 活性の指標となるRho123 の総排出量も有意に減少した。LPS 投与3 日後ではP-gp 発現量が有意に増加し、Rho123 の総排出量も有意に増加した。一方、LPS 投与7 日後ではP-gp 発現量は回復したが、Rho123 の総排出量は有意に増加した。以上の結果より、敗血症初期においてP-gp 基質薬物を投与した場合、薬物の排泄が低下することにより血中濃度が上昇する可能性が示唆された。また、LPS投与7日後において小腸P-gp活性が回復していなかったことについては、現在検討を行っている。

P30[S]am-401
ラット小腸でのnifedipine吸収に及ぼすLactobacillus casei の影響
○加藤 隆児1, 林 弥生2, 武田 恵視2, 岩尾 岳洋2, 田中 一彦1, 大井 一弥3, 湯浅 博昭2(1大阪薬大, 2名市大院, 3城西大薬)
【目的】プロバイオティクスのひとつで、乳酸桿菌に属するLactobacillus casei (L. casei) については、サイトカイン等の産生を変動させることが報告されている。一方、代表的な薬物酸化代謝酵素であるシトクロムP450(CYP)3A については、その発現ないし代謝活性の調節にTNF-α等のサイトカインが関与することが示唆されている。そこで本研究では、L. casei が小腸でのCYP3A による代謝に影響を及ぼす可能性を考え、nifedipine をモデル薬物として取り上げ、そのラット小腸での吸収 (アベイラビリティ) に及ぼす影響について検討した。 【方法】L.casei を30 日間経口投与 (109 cfu/0.5 mL water/rat) したWistar 系雄性ラット(約300 g)および対照ラットを用いた。Pentobarbital 麻酔下でラットの空腸部位に作成した約10 cm の閉鎖loop にnifedipine(0.8 mg/kg, 0.2 mg/mL/10 cm)を投与した後、経時的に頸静脈血を採取し、nifedipine の血漿中濃度をHPLC (UV 検出) により測定した。 【結果および考察】L. casei 投与群においてnifedipine の最高血漿中濃度 (Cmax) が約20%上昇し、また血漿中濃度曲線下面積 (AUC) が約40%上昇した。nifedipine は初回通過代謝のためにバイオアベイラビリティが低く (50%程度)、また初回通過代謝のほとんどは小腸でのCYP3Aによる代謝によるものであることが知られている。したがって、今回認められたCmax およびAUC の上昇は、小腸での初回通過代謝の低下によるものである可能性が高いと考えられる。L. casei の及ぼす生体への影響として、サイトカイン産生の変動が既に報告されているところであるが、本結果の機序のひとつとして、L. casei がサイトカインの産生を介して小腸の代謝酵素の発現あるいは活性を低下させている可能性が考えられる。

P30[S]am-428
Cimicifugosideとnitrobenzylthioinosineのヌクレオシドトランスポート阻害機構の比較
○加藤 華子1, 八幡 紋子1, 草野 源次郎2, 草野 昭子2, 伊藤 順子3, 知久馬 敏幸1, 北條 博史1(1昭和薬大, 2大阪薬大, 3相模女大短期大学部)
【目的】細胞の増殖においてヌクレオシドは核酸の前駆物質として重要である。ヌクレオシドトランスポーターはNa+非依存性のequilibrative nucleoside transporter (ENT)ファミリーとNa+依存性のconcentrative nucleoside transporter (CNT)ファミリーに大別される。我々はサラシナショウマ由来トリテルペン系化合物のcimicifugoside がヌクレオシドトランスポーターを阻害することをみいだしているが、cimicifugoside の阻害機構については明らかにされていない。今回、cimicifugoside のヌクレオシドトランスポーター阻害作用についてnitrobenzylthioinosine(NBMPR)と比較し、これらの阻害様式と阻害するファミリーの選択性を検討した。 【方法】ヒト単球性白血病細胞株(U937 細胞)に、各濃度のcimicifugoside 又はNBMPR を加えて25℃、30 分間プレインキュベーションした後、[3H]-標識ヌクレオシドを加え、放射能の2 分間迄の細胞内取り込みを液体シンチレーションカウンターで測定した。 【結果・考察】1)Cimcifugoside はウリジンの取り込みを混合阻害し、NBMPR は拮抗阻害した。Cimicifugoside は構造中にヌクレオシド構造を持たないが、NBMPR は構造中にプリン骨格を持つため拮抗的に阻害したと示唆される。2)NBMPR はアデノシン及びウリジンのENT、CNT による取り込みをいずれも阻害した。しかし、cimicifugoside はENT、CNT によるウリジンの細胞内取り込みは同程度阻害したが、アデノシンについてはCNT よりENT による取り込みをより強く阻害した。したがって、NBMPR と異なりcimicifugoside によるアデノシンの取り込み阻害にはENT 選択性が存在するといえる。

P30[S]am-428
Cimicifugosideとnitrobenzylthioinosineのヌクレオシドトランスポート阻害機構の比較
○加藤 華子1, 八幡 紋子1, 草野 源次郎2, 草野 昭子2, 伊藤 順子3, 知久馬 敏幸1, 北條 博史1(1昭和薬大, 2大阪薬大, 3相模女大短期大学部)
【目的】細胞の増殖においてヌクレオシドは核酸の前駆物質として重要である。ヌクレオシドトランスポーターはNa+非依存性のequilibrative nucleoside transporter (ENT)ファミリーとNa+依存性のconcentrative nucleoside transporter (CNT)ファミリーに大別される。我々はサラシナショウマ由来トリテルペン系化合物のcimicifugoside がヌクレオシドトランスポーターを阻害することをみいだしているが、cimicifugoside の阻害機構については明らかにされていない。今回、cimicifugoside のヌクレオシドトランスポーター阻害作用についてnitrobenzylthioinosine(NBMPR)と比較し、これらの阻害様式と阻害するファミリーの選択性を検討した。 【方法】ヒト単球性白血病細胞株(U937 細胞)に、各濃度のcimicifugoside 又はNBMPR を加えて25℃、30 分間プレインキュベーションした後、[3H]-標識ヌクレオシドを加え、放射能の2 分間迄の細胞内取り込みを液体シンチレーションカウンターで測定した。 【結果・考察】1)Cimcifugoside はウリジンの取り込みを混合阻害し、NBMPR は拮抗阻害した。Cimicifugoside は構造中にヌクレオシド構造を持たないが、NBMPR は構造中にプリン骨格を持つため拮抗的に阻害したと示唆される。2)NBMPR はアデノシン及びウリジンのENT、CNT による取り込みをいずれも阻害した。しかし、cimicifugoside はENT、CNT によるウリジンの細胞内取り込みは同程度阻害したが、アデノシンについてはCNT よりENT による取り込みをより強く阻害した。したがって、NBMPR と異なりcimicifugoside によるアデノシンの取り込み阻害にはENT 選択性が存在するといえる。

P30[S]am-453
敗血症モデルにおけるミダゾラムの薬物動態に及ぼすiNOS由来NOの関与
○中川 真智子1, 山下 哲史1, 加藤 隆児1, 廣谷 芳彦1, 岩槻 洋一2, 内田 景博2, 田中 一彦1(1大阪薬大, 2ファルコバイオシステムズ)
【背景・目的】感染症時においては肝薬物代謝が阻害され、薬物体内動態が変動することが報告されている。感染症時にはサイトカインやNO などの様々な炎症性メディエーターが産生される。その中でも特にNOはCYP 活性を低下させるため、体内動態変動にはNO の関与が大きいと考えられている。今回の研究では、敗血症モデルにおける肝CYP3A2 発現ならびにCYP3A基質であるミダゾラムの薬物動態への影響について検討した。またiNOS 選択的阻害剤1400W を用い、敗血症モデルにおけるiNOS 由来NO の関与を検討した。 【方法】Wistar ST 系雄性ラットにLPS(E.coli)を5 mg/kg 腹腔内投与し、敗血症モデルを作製した。肝CYP3A2 発現はWestern Blot 法により確認した。ミダゾラム(MDZ)はLPS 投与1 時間後に0.75 mg/kg を静脈内投与し、LC-MS を用いて血中濃度を測定した。1400W はLPS 投与1 時間後に5 mg/kg を腹腔内投与し、iNOS 由来NO が及ぼすCYP 発現、薬物動態への影響を検討した。 【結果】LPS 投与1 日後では肝CYP3A2 発現は約60%減少した。LPS 投与1 日後のMDZ のAUC は上昇したが、有意な変化は認められなかった。一方、MDZ の代謝物であるα-OH MDZ のAUC は有意に低下した。また1400W 投与による肝CYP3A2 発現はLPS 単独群に対し、有意な変化は認められなかった。 【考察】1400W 投与による肝CYP3A2 発現がLPS 単独群に対し、有意な変化が認められなかったことから、LPS 投与による肝CYP3A2 発現減少にはiNOS 由来NO の関与は少ないことが示唆された。また代謝物であるα-OH MDZ のAUC が有意に低下したことから、LPS は肝CYP3A2 活性を低下させたと考えられる。今後iNOS 由来NO がCYP3A2 活性に関与するかについて検討する予定である。

P30[S]am-482
高血圧ラットにおけるPrazosinおよびMetoprolol併用時の相互作用に関する速度論的評価
○成橋 真也1, 宮崎 誠1, 佐藤 眞治2, 渡辺 賢一3, 岩永 一範1, 掛見 正郎1(1大阪薬大, 2新潟薬大応用生命, 3同 薬)
【目的】これまでに私達は、正常血圧ラットにおいてα1 遮断薬Prazosin(Pra)とβ1 遮断薬Metoprolol(Met)を併用投与したとき、降圧作用が単独投与より顕著に増強することを報告した。またPK/PD 解析により、この原因として両薬物の体内動態における相互作用、Norepinephrine を介した血圧調節機構の抑制が考えられ、これらの影響を考慮しPK/PD 相関を明らかにすることの重要性が示唆された。しかし高血圧病態時においては、昇圧・降圧因子などの血圧調節機構が正常時とは異なっていることが考えられ、病態に応じた薬物投与計画を立てる必要性があると考えられる。そこで、高血圧病態時における高血圧治療薬併用による相互作用について検討を行った。 【方法】自然発症高血圧ラット(SHR:15〜20 週令)を用いた。薬物の投与は、無麻酔・拘束下でPra、Met を右頸静脈より30 分間infusion 投与した。また、同様に両薬物を混合し併用投与を行った。薬物投与後の血圧の測定は観血法で、血漿中薬物濃度はHPLC 法で測定した。 【結果・考察】Pra、Met の体内動態は2-コンパートメントモデルで表すことができた。Pra 投与後、正常血圧ラットと同様に血圧は低下し、infusion 停止後基底値まで回復した。正常血圧ラットでは、Met 投与後の血圧に変化はみられなかったが、SHR ではinfusion 中ならびにinfusion 停止後も一定期間血圧の低下がみられ、その後基底値まで回復した。一方、両薬物を併用投与したところ、正常血圧ラットと同様に降圧作用の増大が観察された。これらのことから、SHR において両薬物併用時の薬効増大を解析するにあたっては、体内動態や血圧調節機構への影響だけでなく、薬効の相互作用も考慮したPK/PD 解析を行う必要があると考えられる。

P30[S]am-483
Capsaicinによるlidocaine薬物動態への影響
○須崎 範子, 片上 智裕, 津倉 由里, 加藤 隆児, 廣谷 芳彦, 田中 一彦(大阪薬大)
【背景・目的】Capsaicin(Cap)はトウガラシの主たる辛味成分であり、近年抗酸化、抗菌、鎮痛などさまざまな生理作用を示すことが報告されて、注目されている。また、食文化の多様化により食事からのCap 摂取の機会も増えており、サプリメントや医薬品などにも利用され日常でCap を目にする機会も多くなっている。食品と薬物との相互作用は多数報告されているが、Cap と薬物との相互作用の報告は少ない。一方Cap が血流に影響を及ぼすという報告があり、Cap が肝血流量依存型薬物の動態に影響を与える可能性が考えられる。そこで今回は肝血流量依存型薬物のひとつであるlidocaine(Lid)の薬物動態への影響について検討した。 【方法】Lid 単独投与群、Cap 10、30 mg/kg 併用投与群の3 群に分類した。Cap を経口投与し、その5 分後Lid 15mg/kg を静脈内投与した。Lid 投与180 分後まで経時的に採血を行った。血漿中Lid 及びその代謝物であるmonoethylglycinezylidide (MEGX)の濃度は高速液体クロマトグラフィーにて測定した。 【結果】Lid 単独投与群と比較してCap 併用投与群において有意にLid 血漿中濃度が低下していた。また、AUC は有意な低下(34.5%)、CL は有意な増加(145.7%) がそれぞれ認められた。現在はCap による薬物酵素活性への影響を評価するため、Lid の代謝物であるMEGX の測定を行っている。

P29[R]pm-231
尿中グルカリン酸測定法の改良とその応用について
○長谷川 浩平1, 清水 久実代1, 庄野 嘉治2, 堀内 哲也2, 田伏 克惇2, 森本 茂文3, 長谷川 健次3, 桝井 友梨奈1, 宮地 加奈子1, 山口 敬子1, 藤田 芳一1(1大阪薬大, 2大阪南医療セ外科, 3同 セ薬)
【目的】グルカリン酸(GA)はグルクロン酸代謝系の最終産物で,その尿中排泄量はP450 の活性を間接的に反映しているので,肝臓で代謝される薬物の指標になると考えられる。したがって,薬物投与患者の尿中GA 測定法の確立は,臨床上薬物治療効果を把握する重要な手段となることと推察される。今回演者らは,遠藤ら1)が報告した尿中GA 測定法を改良し,更にクレアチニン(Cr)補正を行うことで, より正確な尿中GA 量を求めることを目的に検討した。 【方法と結果】改良したGA 測定法は次の通りである。すなわち,共栓試験管にGA を含む溶液1.0 mL 及び0.2M 酢酸塩緩衝液(pH 3.8)7.0 mL を加え,120℃ 20 分加温反応する。流水で冷却後,その1.0 mL を試験管に精取し,1.0M フェノールフタレインモノグルクロナイド1.0 mL を加えよく混和した後,37℃ 10 分静置する。本液に125 U/mLβ-グルクロニダーゼ2.0 mL を加え,更に37℃ 30 分放置後,1.5M グリシン緩衝液(pH 10.3)5.0 mL 及び界面活性剤の1.0 w/v%1.0 mL を加えて得た本溶液の吸光度を,同様にして得られた試薬ブランク溶液と共に水を対照に553 nm で測定し,両溶液の吸光度を測定する。本操作法により,0.06〜0.94 μg/mL 濃度範囲のGA が測定でき,相対標準偏差も0.69 % (n=6)と再現性にも優れていた。次に,改良した本GA 測定法とCr 測定法を用い,健常者及び抗癌剤投与患者(本院の倫理委員会の承認を受け,承諾が得られたもの)の尿中GA を比較検討した。 1) 遠藤了一ら,医療検査,40,55 (1991).

P29[S]pm-462
{薬物-Al(III)}錯体とエリスロシンの呈色反応について
○中尾 昌弘, 西村 美智子, 田中 景子, 臣永 宏, 神野 伸一郎, 山口 敬子, 藤田 芳一(大阪薬大)
【目的】多くの薬物は,種々の金属イオンと錯生成し,その吸収・分布等が変化することにより,薬効薬理作用に影響を与える場合が多いので,薬物と金属イオンの相互作用を探究することは臨床上非常に重要である。今回,この金属イオンとして常時摂取する可能性のあるアルミニウムイオン{Al()}をとりあげ,{薬物-Al()}錯体と色素との呈色反応について検討し,次いでAl()と錯生成しやすい薬物について模索した。 【方法】先ず,薬物としてオフロキサシン(Of)を用い{Of-Al()}錯体とフルオレセイン系色素であるエリスロシン(Ery)によるイオン会合錯体の形成を利用するOf の定量法を構築した1)。次にこの呈色反応を準用して,Al()と錯生成する薬物についての簡易スクリーニング法についても検討した。 【結果と考察】Of の定量操作:10 ml のメスフラスコにOf 含有液を加え,4.0×10-3 M Al() 1.0 ml,0.25%メチルセルロース1.0 ml,0.2 M 酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.4) 2.0 ml,1.0×10-3 M Ery 1.0 ml 及び水で全量を10 ml とし,20 分間室温静置後,試薬ブランク溶液を対照とし,555nm における吸光度を測定した。定量感度及び相対標準偏差はそれぞれ,ε=1.2×105 l mol-1 cm-1,0.94 %であった。また,簡易スクリーニング法は,滴板上での,{Al()-Ery}と{薬物-Al()-Ery}溶液間の呈色差を観察した。本簡易スクリーニング法は,薬物滴下後瞬時に反応が起き,Al() と錯生成する薬物の確認に十分利用できると考えられる。 1)中尾昌弘ら、分析化学会 第54 年会講演要旨集,334(2005)

P30[S]pm-532
化学計算によるキラル環状α,α-ジ置換アミノ酸を含むオリゴペプチドのコンフォメーション解析
○佐藤 由紀子1, 袴田 航1, 奥田 晴宏1, 出水 庸介2, 長野 正展2, 河辺 直美2, 土井 光暢1, 3, 田中 正一2, 末宗 洋2, 栗原 正明2(1国立衛研, 2九大院薬, 3大阪薬大)
【目的】我々はすでに、α-アルキル化α,α-ジ置換アミノ酸からなるオリゴペプチドの化学計算によるコンフォメーション解析とX 線構造解析の比較を行ってきた。その結果、化学計算によるα-アルキル化α,α-ジ置換アミノ酸ペプチドのコンフォメーションの予測が可能であることを示してきた。今回、キラルな環状α,α-ジ置換アミノ酸を含むオリゴペプチドのコンフォメーション解析を行い、新たな結果を得たので報告する。 【方法及び結果】キラル双環式ジ置換アミノ酸よりなるペプチド1のコンフォメーション(310-ヘリックス)について、コンピュータシミュレーションとX 線構造解析が良い一致を示した。 Tanaka, M., Anan, K., Demizu, Y., Kurihara, M., Doi, M., Suemune, H., J. Am. Chem. Soc., 127, 11570-11571 (2005). Boc HN NH OEt H H O O H H 3 1

P29[R]am-102
DIY店で購入可能な薬物とその対処法に関する考察
菰田 綾佳1, 西野 正雄2, ○林 俊祐3, 宮本 如奈4, 高倉 弘士5, 乾 真由美6, 臼井 一城7, 畠山 有理8(1大阪府立藤井寺高校, 2同 富田林高校, 3同 生野高校, 4同志社大文, 5立命館大産業社会, 6大阪薬大, 7北陸大薬, 8長崎大薬)
「目的」・・我々の周辺には様々な業種の店舗が存在している。しかし、化学薬品を含む商品に関しては使用方法を誤ると毒物として作用する場合もある。使用方法を誤ることによる中毒症状以外に、故意に動物に与えるケースも少なからず存在する。これらの死亡原因が、症状から薬物中毒であることを想起させる場合が少なくない。そこで今回、身近に存在する店舗で購入可能な商品の使用方法を誤ると、自らが飼育している動物に致命的な障害を及ぼす商品を調査した。動物に致命的な作用を及ぼす商品でも気軽に購入できる危険性を再認識すると同時に、それらを節食した場合、現れる症状により一秒でも早く適切な処置をして、助かるべき動物の生命を救う目的で、一般の動物飼育者が、愛犬愛猫の中毒症状をいち早く気づき、動物病院で適切な処置を受けていただきたいと考える。 「調査方法」・・ 今回は身近にあるホームセンターで取り扱っている園芸用品および農業用品に焦点をあて調査した。この分類に属するすべての取り扱い商品のMSDS(マテリアル・セーフティー・データ・シート)を調査しLD5 0を基準に標準的な犬あるいは猫がどの程度節食すれば危険かを算出した。また皮膚に付着した場合の危険性も併せて検討した。標準体重として小型犬5k g、中型15kg、大型犬30kgとし、猫は3kgとして計算した。 「結果及び考察」・・比較的少量でLD50に達する薬品が多く存在する事が明らかとなった。タリウムによる殺人未遂等も発生しているが、化学薬品の安全管理をさらに周知させる必要性を感じる。

P29[R]am-127
愛知万博ブータン感で展示された薬物及び生薬に関する考察
○菰田 綾佳1, 西野 正雄2, 林 俊祐3, 宮本 如奈4, 高倉 弘士5, 乾 真由美6, 臼井 一城7, 畠山 有理8(1大阪府立藤井寺高校, 2同 富田林高校, 3同 生野高校, 4同志社大文, 5立命館大産社, 6大阪薬大, 7北陸大薬, 8長崎大薬)
「目的」・・昨年愛知県で開催された愛知万博で、ブータン館で展示されていた生薬及び薬物を入手することができた。ブータン館の薬物及び生薬の展示内容物に関しては、開催期間中、十分な説明は掲示されていなかった。今回それらを調査し、チベット伝統医療の一部を紹介すると同時に、他の外国館での生薬紹介状況もあわせて報告し、国際博覧会における生薬及び医薬品情報提示方法に関する問題点を考察した。 「方法」・・ブータン館の館長より生薬及び医薬品を譲っていただいた。生薬として CARTHAMUS TINCTORIUM, MECOPNOSIS HORRIDULA, SANTALUM ALBUM , NARDOSTACHYS GRANDIFLORA, RUBUR CORDIFIOLIA, TANACETUM NUBIGERUM 等26種類。また医薬品としてTAZI MARPO , CHU-DEY, POESKAR-10, GOYU28, CHONG ZHI 6 ,THANG CHEN 25, PANG-GEN 15 等カプセル剤などを含む18種類を調査した。生薬については、それらの原植物及び薬効等を調査し、伝統医療に用いられている医薬品については、その内容物及び薬効を調査した。また、ブータンにおける医療システムに、これら伝統医療が如何に組み込まれているかを調査した。 「結果及び考察」・・それぞれの医薬品及び生薬については当日詳細を報告するが、外国館における医薬品展示は、担当の医学専門家が存在しないことから十分に一般見学者に情報が伝わっているとは言えない状況にあった。譲っていただいた医薬品にラベルが剥がれ展示すらされていない物も存在し、展示に関する改良点が多く存在するといえる。

P29[R]am-128
愛知万博シンガポール館で展示された生薬に関する考察
○西野 正雄1, 菰田 綾佳2, 林 俊祐3, 宮本 如奈4, 高倉 弘士5, 乾 真由美6, 臼井 一城7, 畠山 有理8(1大阪府立富田林高校, 2同 藤井寺高校, 3同 生野高校, 4同志社大文, 5立命館大産業社会, 6大阪薬大薬, 7北陸大薬, 8長崎大薬)
「目的」・・昨年の愛知万博では、シンガポール館が最も多くの生薬を効果的に提示していた。その種類は約280種類以上に上り、見学者が生薬を手に取れる状態で展示するなど、生薬を展示した外国館の中で、特に目立った存在であった。我々は、開館当初から幾度も交渉を行い、特別に展示されている生薬を頂く許可を頂き、250種類以上の生薬を入手できた。シンガポール館の生薬の展示内容物に関しては、その薬効や使用方法について不十分な説明であった。今回それらを調査し、シンガポール館で展示された生薬を総て紹介すると同時に、他の外国館での生薬紹介状況も合わせて報告し、国際博覧会における生薬及び医薬品情報提示方法に関する問題点を考察した。 「方法」・・シンガポール館の館長より生薬250種類を譲って頂いた。それらの原植物及び薬効等を調査し、これらが医療に、如何に組み込まれているかを調査した。生薬名の確認は、北陸大学薬学部生薬学教室の生薬見本を用いて行った。 「結果及び考察」・・医薬品及び生薬については当日詳細を報告するが、外国館における医薬品展示は、担当の医学専門家が存在しないことから十分に見学者に情報が伝わっているとは言えない状況にあった。今回調査した生薬は、例えば、蝉の抜け殻が子供の夜泣きに薬効があるとされ、その理由が蝉は夜鳴かないからなどというものから、中国漢方に用いる物まで多くの種類が混在していた。これらの生薬が、パビリオン関係者のカバンに入れた状態で国内に持ち込まれた事実を考えあわすと納得がいくが、国際博覧会における生薬展示が、展示を行っている人の中に専門家が不在で、多くの情報を現場で入手できないなど、展示に関する改良点が多く存在するといえる。

P29[R]am-139
薬学会大会ポスター発表時のモニター使用の有用性に関するアンケート調査
○宮本 如奈1, 菰田 綾佳2, 西野 正雄3, 林 俊佑4, 高倉 弘士5, 乾 真由美6, 臼井 一城7, 畠山 有理8(1同志社大文, 2大阪府立藤井寺高校, 3同 富田林高校, 4同 生野高校, 5立命館大産業社会, 6大阪薬大, 7北陸大薬, 8長崎大薬)
「目的」ポスター発表会場でコンピュータのモニター液晶をディスプレーとして利用する掲示方法を実践し、付随する問題点を検証し、ポスターセッションにおける映像による情報提示の可能性を考察した。 「方法」1.ポスター展示の現状分析・・日本薬学会大会2005年におけるポスターを977演題(全発表の約30%にあたる)調査し、一つのポスターに使用されている情報の枚数を調査した。また、一つの演題を訪れ、ポスターを眺める研究者の数を8演題調査した。 2.展示に映像モニターを用いた場合の問題分析・・二種類のコンテンツを作成し、映像モニターをポスター壁面に設置し、その効果の可能性についてアンケート調査を実施し、映像利用の可能性を考察した。 「結果及び考察」1.ポスター掲示のあり方に関する現状分析・・ ポスターに使用されている情報枚数を比較した。結果、平均12枚に使用が最も多く見られた。また、大判の印刷用紙を用いた発表掲示が全体の10%見られたが、映像情報を流している発表は一演題も見られなかった。また一つの演題を訪れ説明を受けている研究者数は平均1.8名程度で、演者が対応可能な研究者の数はそう多くはなかった。 2.映像コンテンツを2種作成した。一つはデータ提示型、一つが粘土を用いたアニメーション形式である。共に約3分の映像を繰り返し映し出し、90分毎にバッテリーを交換した。発表を見に来て下さった研究者にシール貼付形式で、モニターを用いた発表形式に対する賛成、反対の意思を示して頂いた。その結果、アンケートでは全体の69%がディスプレーを使用する発表形式に賛成という回答が得られた。今後、液晶反転モニター型コンピュータの有用性は高いと考えられる。

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牛病新書(第二巻及び第三巻)に使用されている薬物に関する考察
○臼井 一城1, 菰田 綾佳2, 西野 正雄3, 林 俊祐4, 宮本 如奈5, 高倉 弘士6, 乾 真由美7, 畠山 有理8(1北陸大薬, 2大阪府立藤井寺高校, 3同 富田林高校, 4同 生野高校, 5同志社大文, 6立命館大産業社会, 7大阪薬大, 8長崎大薬)
「はじめに」・・昨年は牛病新書第一巻を紹介した。その詳細については過去の抄録を参考にされたい。今回、明治時代の牛の治療目的に翻訳された牛病新書第二巻及び三巻を入手したので紹介する。この書物は明治7年3月に香雲閣蔵版として、石川良信閲、柏原学而訳として著された物である。明治初年ロシアで牛痘が発生する状況下、明治7年当時471頭感染死亡、撲殺93頭となり被害は2 府14県に達し、明治7年家畜防疫上初めて強制殺牛に対する賠償制度ができた。この様な状況下、明治9年7月29日内務省達乙第20号として以下の内容が出された。「第七条 牛病新書及疫牛容体書一府県に付20部宛下渡すべきに付、各管内適宜の地に於て相当の医生を選み右書類を下渡し、予め講習せしめ牛病の診断をなさしむべし。且該医の住所姓名は管内へ告示すべし。」つまり、この書は、明治初年牛の病を正確に診断し牛疫を瞬時に識別する能力を高めようと考えた位置に存在すると言える。この牛病新書は三冊からなっているが、その2・3 巻に使用されている薬物に関して報告する。 「第二巻構成」・・ 全体で94 ページ、内容としては流行病総論として舌上水疱及び口内*腫、口内腐食、脾臓壊疽、悪性肺病、牛疫、脳*衝、咽頭*衝、胃* 衝、腎膀胱*衝、眩惑、痰*の11 章からなる。 「第三巻構成」・・ 全体で111ページ、各章は、亢直、発黄病、水気すなわちヲンカンス、急性壊疽、血尿、脊血、腹痛即腸伊屈篤、鼓張、下痢、妊娠、乳汁転移、産後病、遊走羅斯、乳汁閉止、乳汁酸敗、乳汁交血症、乳汁粘靱、蒼乳、乳味不佳の19章からなる。


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