第124回日本薬学会(東京)大阪薬科大学発表分 2005.3


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31-0190 W014-06

DNA代謝系酵素を標的とした阻害剤の開発
○松本 洋亘1, 飯田 彰1, 富岡 清1, 和田 俊一2(1京大院薬,2大阪薬大
【目的】ヌクレオシドは生命を維持するプロセスにおける基本単位であり、その誘導体には抗腫瘍活性や抗ウイルス活性など広範な生物活性が期待できる。我々は抗腫瘍活性化合物に関する研究の一環として、DNA トポイソメラーゼ阻害剤の探索ならびに設計・合成を行っている。これまでに、新しいタイプのDNA トポイソメラーゼII 阻害剤としてヌクレオシド構造を有する阻害剤開発を目論み、ヌクレオシド1 および2 を設計するに至った経緯とその合成ルート並びに阻害活性について報告した。今回、より強力な阻害剤の合成と活性発現構造の解明を目的に1 および2 を親化合物とするいくつかの類縁体を合成するとともに、それらの合成中間体についてもDNA トポイソメラーゼII 阻害活性を評価する。
【実験・結果】興味深いことに、阻害活性を示さなかった2 の前駆体3 は、わずかな構 造の差であるにもかかわらず、1 と同様に酵素阻害剤として作用した。この結果は、5’ 位ヒドロキシメチル基の保護基であるTBS が活性発現に重要であることを強く示唆してい る。事実、1 のTBS 体4 は1よりずっと強力な阻害活性を示した。さらに、これらヌクレ オシドの合成中間体のなかには親化合物よりもはるかに強力な阻害活性を示す誘導体も見 つかったので報告する。

31-0239

光学活性環状α,α-ジ置換アミノ酸によるへリックスの方向性と構造安定化
○出水 庸介1,2, 田中 正一2, 土井 光暢3, 栗原 正明4, 丸山 徳見1, 末宗 洋2(1徳島文理香川薬,2九大院薬,3大阪薬大,4国立衛研)
【目的】光学活性環状α,α-ジ置換アミノ酸(S,S)-Ac5cdOMは、α位炭素が不斉中心ではなく、環状の側鎖上にのみ不斉中心を有する。このアミノ酸からなるホモペプチドは、結晶ならびに溶液状態において左巻きヘリックス構造を形成する1)。今回、このジ置換アミノ酸(S,S)-あるいは(R,R)-Ac5cdOMを、ジメチルグリシン(Aib)ならびにL-Leuペプチドに導入し、2次構造に与える影響について解析した。
【実験・結果】ペプチドの2次構造解析は、結晶状態はX線結晶解析、CDスペクトルにより行い、溶液状態はFT-IR、1H-NMR、CDスペクトルにより行った。また、分子力場法(AMBER*)を用いたコンフォメーション解析を行った。(R,R)-Ac5cdOMをL-Leuシークエンスに導入したノナペプチド(A)は、対応するAibを導入したペプチド(B)よりも、右巻きのα-へリックス形成の傾向が強いことが明らかとなった。その他のペプチドについても解析を行ったので詳細を報告する。
1) M. Tanaka, Y. Demizu, M. Doi, M. Kurihara, H. Suemune, Angew. Chem. Int. Ed., 43, 5360-5363 (2004).

31-0240 

官能基を有する環状α,α-ジ置換アミノ酸の設計・合成とそのペプチド
○河辺 直美1, 阿南 浩輔1, 出水 庸介1, 田中 正一1, 土井 光暢2, 栗原 正明3, 末宗 洋1(1九大薬,2大阪薬大,3国立衛研)
【目的】α,α-ジ置換アミノ酸からなるペプチドでは、アミノ酸側鎖上の不斉中心のみにより、2次構造のヘリックスの方向性を制御できることを報告している1)。今回、環状側鎖上に各種の官能基を有するα,α-ジ置換アミノ酸を設計・合成し、そのペプチドの合成と2次構造解析を目的に研究を行った。
【実験・結果】環状側鎖上に官能基を有する各種α,α-ジ置換アミノ酸の合成を、2つの経路により検討した。1つは、ビシクロα,α-ジ置換アミノ酸2)を出発原料として、オゾン分解反応、引き続く還元あるいは酸化反応により官能基を導入する方法であり、もう1つは、酒石酸ジエステルを出発原料として、水酸基の修飾により各種官能基に変換する方法である。結果、下記に示すような各種の官能基を有する光学活性環状α,α-ジ置換アミノ酸を合成することに成功した。現在、これらのアミノ酸を含有するホモペプチド、ヘテロペプチドの合成を行っているので、2次構造解析と併せて詳細を発表する。
1) M. Tanaka, et al., Angew. Chem. Int. Ed., 43, 5360 (2004). 2) 阿南ら,第124年会要旨集−2 p.43.

31-0241 

側鎖にキラル中心を持つオリゴペプチドのコンフォメーション予測
○栗原 正明1, 佐藤 由紀子1, 奥田 晴宏1, 田中 正一2, 出水 庸介2, 土井 光暢3, 末宗 洋2(1国立衛研,2九大薬,3大阪薬大
【目的】我々はこれまでに、α,α-ジ置換アミノ酸からなるオリゴペプチドのコンフォメーション解析を行ってきた。その際、分子力学計算によるコンフォメーショナルサーチがオリゴペプチドの構造予測に有効であることを示してきた。今回、α炭素上ではなくサイドチェーンにキラル中心を持つキラルアミノ酸を含むジ置換オリゴペプチドのヘリックス構造(310-ヘリックスかα-ヘリックス)及びscrew sense(右巻きか左巻きか)の予測について検討した。
【方法および結果】分子力学法によるコンフォメーショナルサーチを,MacroModel(ver.8.1)のモンテカルロ法を用いて行った。環状にキラル中心を持つα,α-ジ置換アミノ酸を含むオリゴペプチド1についてコンフォメーション解析を行った。計算結果の構造及びX線構造解析の結果(左巻きのα-ヘリクッス)は良い一致を示した。
1 M. Tanaka, Y. Demizu, M. Doi, M. Kurihara, H. Suemune, Angew. Chem. Int. Ed., 2004, 43, 5360-5363

31-0294 

d(ApA)のデオキシリボースのキラリティーがらせん構造に及ぼす影響
浦田 秀仁1, 田路 貴子1, 平田 好宏1, ○熊代 哲也1, 赤木 昌夫1(1大阪薬大
【目的】RNAに触媒機能が見出されて以来、RNAが生命の前駆物質であったとするRNAワールド仮説が主流となり、RNAの前生物的生成過程に興味が持たれている。生体内のRNAはD-リボースを構成単位としたD-ホモキラルなオリゴマーであるが、原始地球上で生成したヌクレオチドはD型とL型の1:1のラセミ混合物であったとされているため、原始地球上ではヘテロキラルなRNAも生成したと考えられる。そのため、ヘテロキラルなRNAオリゴマーとホモキラルなRNAオリゴマーの構造化学的な性質の違いがラセミ体ヌクレオチドからD-ホモキラルなRNAへの化学進化に関与した可能性が考えられる。我々はこれまでにRNAダイマーである4種の光学異性体(D-(ApA), L-(ApA), ALpAD, ADpAL)の構造をCDスペクトル、及びpoly(U)との三重鎖形成能の比較により解析し、r(ApA)のらせん構造は主に3'-末端側残基のキラリティーに支配されていることを見出した1)。
そこで今回、DNAにおけるd(ApA)の光学異性体の構造化学的性質に興味を持ち、下図の4種のダイマーを液相トリエステル法により合成し、ダイマーの両残基のキラリティーがらせん構造に及ぼす影響について検討を行った。
1) H. Urata et al., Chem. Commun., 2002, 5, 544-545

31-0415 

有機セレン触媒の開発を基盤とする過酸化水素水を用いたBaeyer-Villiger酸化反応
○市川 隼人1, 宇佐美 吉英1, 有本 正生1(1大阪薬大
【目的】Baeyer-Villiger酸化反応はケトンをエステルへ変換する重要な官能基変換反応の一つであるが、酸化剤には通常、トリフルオロ過酢酸やmCPBAのような取扱いや保存に注意を要する有機過酸化物が必要となる。我々はスケールアップした反応条件においても安全にBaeyer-Villiger酸化反応を行うことを可能とするために、比較的安全な過酸化物である30%過酸化水素水を酸化剤として活用することを検討してきた。そこで今回新たに開発したジセレニド1を触媒量用いることにより、30%過酸化水素水を酸化剤としたBaeyer-Villiger酸化反応が可能となったので報告する。
【結果及び考察】ビス(2-フェニルトリフルオロメタンスルホネート)ジセレニド1(0.05 mol%)の塩化メチレン溶液に30%過酸化水素水を加え30分間撹拌することで、触媒の活性種であるアリールセレニン過酸を調製した。続いて4-フェニルシクロヘキサノンを加え、室温で18時間反応させたところ相当するラクトンが83%の収率で得られた。

31-0460 

標識ホスホロアミダイトのマススペクトルにおける精密質量測定
○藤嶽 美穂代1, 春沢 信哉1, 荒木 理佐1, 山口 真帆1, David M. J. Lilley2, Zheng-yun Zhao2, 栗原 拓史1(1大阪薬大,2ダンディ大)
ホスホロアミダイト法は核酸の自動合成に最も汎用されている。しかし、この合成ユニットであるホスホロアミダイトは一般に不安定であるため、マススペクトルによる組成確認が困難な場合が多い。我々はすでにSIMS法において、マトリックスとしてトリエタノールアミン(TEA)と生理食塩水を用いることにより、多くのC-及びN-ヌクレオシドホスホロアミダイトの分子量関連イオンピークを二重収束質量分析計を用いて、安定かつ高感度で検出できることを見出した。1)これにより、精密質量測定を可能にし、組成決定を行うことに成功した。
今回、さらに多官能性標識ホスホロアミダイト1(Fig.1)についてTEA+NaCl法を適用することにより、本法の有用性を検討した。その結果、測定した多数の試料において例外なく精密質量測定に成功し、TEA+NaCl法の多官能基質に対する適応性を実証した。一方、試料濃度と添加するNaCl濃度の割合が分子量関連イオンピークの相対強度に影響を及ぼすことも明らかとした。現在、Saline/Sample(μmol)が6/1の時、相対強度が最高となる相関関係を得ている(Fig.2)。
1)第54回日本薬学会近畿支部総会・大会講演要旨集,p.90(2004)

31-0568 

Pericosine Aの立体異性体の合成研究
○宇佐美 吉英1, 吉田 裕志1, 高岡 伊三夫1, 市川 隼人1, 有本 正生1, 沼田 敦1(1大阪薬大
【目的】DNAトポイソメラ-ゼI阻害活性を有する海洋由来真菌の代謝産物pericosine A1は、これまでの合成研究2からその報告されている立体配置に誤りがあることが判明した。天然物の真の構造を決定するために可能性のある立体異性体(1)の合成について検討する。
【方法および結果】キナ酸を出発物質とし、既に合成した異性体(2)2を経てacetonide(3)とし、これに対して光延反応を試みたが化合物(4)への変換は不成功であった。別の条件下、或いは保護基の変更による5位の立体反転反応、またそれに続く1への変換について検討予定である。
[文献]1. A. Numata et al. Tetrahedron Lett., 38, 8215-8218 (1997).
2. Y. Usami, Y. Ueda, and A. Numata, Synlett, submitted.

31-0663 

電子線照射した根類生薬中の有機フリーラジカルの特性化
○山沖 留美1, 辻野 敏明1, 木村 捷二郎1, 野坂 和代2, 西本 進2(1大阪薬大,2日本電子照射サービス関西セ)
【目的】生薬の付着微生物対策として、有効成分損失の少ない放射線殺菌法が注目されている。海外では医薬品や食品への処理利用が始められつつあるが、照射生薬の検知に関する報告は少ない。第124年会では、電子線(以下、EB)照射により生薬中に発生した有機フリーラジカルをESR法で測定し、芍薬中に特異的な分裂ピークが長期間検出されることを報告した。本会では、この長寿命の有機ラジカル種と生薬の糖含有量との関連について、他の根類生薬と比較し検討した。
【方法】試料;芍薬、牡丹皮、生姜、人参、甘草。EB照射;ダイナミトロン型5MeV EB加速器(RID)。1〜50kGy。線量測定;CTA、RC線量計。ESR測定;ES-10(日機装) 波長 9.4GHz、掃引磁場 330±15mT。糖類定量;HPLC法。
【結果および考察】EB照射した芍薬中に検出される有機ラジカルピークは、g=2.004、幅7mTの微細に分裂した非対称な形状を呈し、これはγ線照射済みの乾燥果物中に検出される糖ラジカルピークに似ている。処理法の異なる芍薬(湯通し、帯皮、半帯皮、皮去)をEB照射すると、皮去では鮮明な微細分裂ピークが検出され、帯皮ではやや変形した分裂ピークが検出される場合があった。湯通しではピークの分裂は不明瞭になり、スピン濃度が最も低かった。微細分裂ピークのスピン数は、吸収線量に比例して増加し、照射の2,3日後には、ほぼ一定となり、発生したラジカル種が安定状態にあることを示した。EB照射した牡丹皮、生姜、人参においても有機ラジカルの分裂ピークは検出されるが、ピークの形状やラジカルの減衰速度は芍薬とは異なっていた。照射後の生薬中の有機ラジカルのスピン濃度と単糖類および少糖類含有量を比べると、微細分裂ピークが検出された生薬では、ショ糖含有量が高いことがわかった。

31-0681 

アシタバ由来カルコン類によるニューロトロフィン産生促進作用
○北浦 裕子1, 藤波 綾1, 太田 光煕1, 太田 潔江2, 谷口 雅彦3, 芝野 真樹雄3, 馬場 きみ江3, 小笠原 和也4, 井上 賢一4(1神戸薬大,2独立行政法人国立病院機構宇多野病院,3大阪薬大,4株式会社日本生物.科学研究所)
【目的】我々は健康食品としても注目されているアシタバに含まれる特徴的な成分であるカルコン類,クマリン類を分離し,構造決定するとともに,これらの成分の様々な生理活性について報告してきた.一方,アルツハイマー型痴呆症の予防や治療に重要だと考えられている神経成長因子(NGF)の産生促進作用成分がアシタバの水溶性画分に存在することが報告されている.そこで,我々はアシタバ由来脂溶性画分より得られたカルコン類とクマリン類の神経栄養因子産生に及ぼす影響について検討した.
【方法】マウス新生仔脳から常法に従いアストログリアを単離した.継代培養後24穴プレートに播種し,confluentに達した後,FCSに代わりBSAを含むDMEM中で1週間培養し,細胞を静止期に導入した.アシタバ由来カルコン類であるxanthoangerolおよび4-hydroxyderricin,クマリン類であるisolaserpitinを添加し,1日培養後,その培養液中のニューロトロフィン(NGF,BDNF,GDNF)量を我々が開発したELISA法にて測定した.
【結果】各種濃度のxanthoangerolを添加し,24時間培養後のNGFの分泌量を測定すると,31.8μMの添加でコントロールの6倍に,BDNFは1.7倍,GDNFは2.6倍に上昇した.また4-hydroxyderricinでは59.1μMの添加でNGFは8倍に,BDNFは4倍,GDNFは1.4倍に上昇した.また,カルコン類ほど強くはないものの, isolaserpitinの添加によってNGFの分泌量は2倍,BDNFは3倍,GDNFは1.2倍増加した.
【考察】アシタバ由来カルコン類は脳内のアストログリア細胞に作用し,神経栄養因子の産生促進作用を有することを明らかにした.

31-0690 

アシタバ特有のカルコン誘導体であるXanthoangelolが脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)の脂質代謝機構に及ぼす分子・遺伝子レベルでの影響
○岡田 祐貴子1, 小川 博2, 山本 和夫2, 馬場 きみ江1(1大阪薬大,2近畿大医)
【目的】これまでに、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)をモデル動物とした研究から、アシタバ黄汁の酢酸エチル抽出画分が、血圧上昇抑制作用や肝臓中性脂質低下作用を有することを報告した。本研究では、その有効成分や作用機構解明のため、アシタバ黄汁よりカルコン類の一種、xanthoangelolを単離・精製し、SHRSPの血圧、脂質代謝に及ぼす影響を検討した。
【方法】八丈島産のアシタバ黄汁酢酸エチル抽出画分よりxanthoangelolを単離・精製し、対照飼料に0.02%ないし0.1%添加した。実験動物は6週齢の雄性SHRSPを用い、実験飼料と飲水を7週間自由摂取させた。血圧は6週間目に尾動脈圧をTail-pulse pickup法にて測定した。飼育終了後、麻酔下腹部大動脈採血を行うと同時に肝臓を摘出した。血清、各リポタンパク画分、肝臓、糞の脂質含量はキットにて測定、肝臓脂質代謝関連遺伝子発現動態は、RT-PCR法 にて観察した。
【結果および考察】飼料摂取量、成長曲線、血圧、及び血清脂質含量は3群間でほとんど差はなかった。肝臓では、中性脂質含量が0.02%実験群で減少傾向、0.1%実験群で有意な減少を示した。糞では、コレステロール排泄量が0.1%実験群で有意に増加した。従って、xanthoangelolは肝臓中性脂質減少作用、コレステロール排泄増加作用を有すると考えられる。肝臓脂質代謝関連遺伝子発現は、0.1%実験群でacyl-CoA oxidase(ACO)、acyl-CoA synthetase(ACS)mRNAs発現が増加傾向を示し、peroxisome proliferator-activated receptorα (PPARα)、low-density lipoprotein receptor (LDL-R) mRNAs発現が有意な増加を示した。

31-0691 

カシュウ(何首烏)のスチルベン配糖体が高血圧自然発症ラット(SHR)の脂質代謝に及ぼす影響
○中塚 真理也1, 小川 博2, 山本 和夫2, 馬場 きみ江1(1大阪薬大,2近畿大医)
【目的】カシュウ(何首烏)は、ツルドクダミ(Polygonum multiflorum Thunb.)の塊根で、抗高脂血症作用が報告されている。本研究では、その有効成分及び作用機構を解明するため、スチルベン配糖体の一種、2,3,5,4'-tetrahydroxystilbene-2-O-β-D-glucoside(THSG)を単離・精製し、高血圧自然発症ラット(SHR)の血圧、脂質代謝に及ぼす影響を検討した。
【方法】中国産カシュウのメタノール抽出画分よりTHSGを単離・精製し、対照飼料(AIN-93 準拠)に0.15%添加した。実験動物は17週齢の雄性SHRを用い、実験飼料と飲水を4週間自由摂取させた。血圧は尾動脈圧をTail-pulse pickup法にて測定した。飼育終了後、麻酔下腹部大動脈採血を行うと同時に肝臓を摘出した。血清、各リポタンパク画分、肝臓の脂質含量はキットにて測定、肝臓脂質代謝関連遺伝子発現動態は、RT-PCR法 にて観察した。
【結果および考察】飼料摂取量、成長曲線にはほとんど差がなく、血圧もまた両群間で有意な差はなかった。血清では、実験群において遊離脂肪酸含量の有意な減少、VLDL画分のコレステロールおよび中性脂質含量の低値(p<0.08)とHDL画分の中性脂質含量の有意な減少が認められた。肝臓では、実験群において中性脂質含量の有意な減少が認められた。従って、THSGはカシュウの抗高脂血症作用の有効成分の1つであると考えられる。現在その作用機構解明のため肝臓脂質代謝関連遺伝子の動態をRT-PCR法にて解析中である。

31-0825 

マツ科植物エゾマツ樹皮のポリフェノール成分研究
○保井 裕美子1, 和田 俊一1, 田中 麗子1(1大阪薬大
【目的】当研究室では、エゾマツ(Picea jezoensis var. jezoensis)樹皮のクロロホルムエキスから発がんプロモーション抑制作用をもつserratane型トリテルペン数種を単離、報告してきた。1) 今回は本植物のメタノールエキスに含有されるポリフェノール成分について検索した。
【方法・結果】北海道日高市で採取したエゾマツ樹皮をクロロホルム、メタノールで順次抽出した。得られたメタノールエキスについて、1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)ラジカル消去活性を指標にシリカゲル、Sephadex LH-20カラムクロマトグラフィー、ODSカラムを用いたHPLCで分離精製し、5種の既知化合物、protocatechuic acid (1),dihydroquercetin (2),stilbene dimer 類 (3〜5)と2種の新規化合物 flavonostilbene 類 (6,7) を得た。各種スペクトルデータの解析により、新規化合物は下記のように決定した。
1) R. Tanaka et. al., Cancer Letters, 196, 121-126 (2003).

31-0843 

ロジンおよびその誘導体の発がんプロモーション抑制作用について
○田中 麗子1, 徳田 春邦2, 恵崎 陽一郎3(1大阪薬大,2京府医大,3荒川化学)
【目的】ロジン(松脂)は各種工業原料として多岐にわたり使用されている。 今回はロジンそのものおよび数種のジテルペン成分とその誘導体の発がんプロモーション抑制作用について検討した。
【方法】ロジン抽出物および誘導体の計15種のジテルペンについてTPAによる Epstein-Barr-Virusの初期抗原の活性を抑制する効力を一次スクリーニングとして用いた。さらにロジンそのものと一次スクリーニングで効力の強かったイソピマル酸 (AR-1)および13β-Δ8-ジヒドロアビエチン酸 (AR-6) についてイニシエーターにDMBA、プロモーターにTPAを用いて週2回、20週間塗布を行ない、パピローマの発生したマウスの割合とマウス一匹あたりに発生したパピローマ数を陽性コントロール群と比較した。
【結果】マウス皮膚にパピローマを持つマウスの発生率は20週目のコントロール群100%、9.3個に対して、ロジン塗布群では73.3%, 3.9個と顕著に抑制した。また、AR-1, AR-6塗布群では 100%, 6.9個、60%, 3.3個であり、AR-6に優れた抑制効果が見られた。

31-0859 

アカギ樹皮から得られたトリテルペンのDNAトポイソメラーゼII阻害活性
○和田 俊一1, 田中 麗子1(1大阪薬大
【目的】生理活性化合物探索研究の一環としてトウダイグサ科植物アカギ (Bischofia javanica) 樹皮の含有成分を検索した.得られた化合物について抗がん活性化合物探索に用いられる酵素,DNA トポイソメラーゼ II (Topo II) の阻害活性について検討した.
【実験及び結果】沖縄県名護市の沖縄県林業試験場で採取したアカギ樹皮のクロロホルム抽出エキスをシリカゲル,Sephadex LH-20 カラムクロマトグラフィー等を用いて反復分離し,betulinic acid (1) とその類縁体 3 種 (2) ~ (4) を単離した.化合物 (1) ~ (4) に対して Topo II 阻害反応を検討したところ,すべての化合物に於いて強い阻害反応が観察された.それらの IC50 値はそれぞれ,56.1 (1), 7.1 (2), 0.51 (3), 0.38 (4) μM で,betulinic acid の 3 位が修飾されている化合物がより強い阻害活性を示した.

31-0863 

カバノアナタケのlanostane型トリテルペン
○中田 智子1, 山田 剛司1, 和田 俊一1, 田中 麗子1, 佐久間 和夫2(1大阪薬大,2サラダメロン)
【目的】カバノアナタケは長い年月をかけて白樺樹液を養分に成長する珍しいキノコであり、抗がん作用の本体と考えられるβ-グルカン、エルゴステロールとLanostane型トリテルペンが共存し、それらの相乗作用により優れた活性を示すと推定される。今回は本検体の活性成分について探索した。
【実験・結果】カバノアナタケ (12kg) をCHCl3で抽出を行い、得られたエキス (150g) をシリカゲルクロマトで繰り返し分離を行い、7種の既知トリテルペンの他、2種の新規トリテルペン(1)、(2)を単離した。これらの化学構造は各種スペクトルの解析により下記のように推定した。P388細胞毒性に対する活性についても合わせて報告する。

31-0895 

アメフラシ由来真菌の細胞接着阻害物質の構造
○山田 剛司1, 箕浦 克彦1, 沼田 敦1(1大阪薬大
【目的】海洋生物由来菌類の抗腫瘍性代謝産物の探索研究の一環として,アメフラシ由来真菌Periconia byssoides の代謝産物について検討し,これまでに抗腫瘍性物質としてpericosine 類を単離しているが,その分離過程で細胞接着阻害を示す数種のmacrosphelide類及びperibysin 類をも単離し報告した. 今回,同菌代謝産物をさらに精査し, 3種の新規化合物peribysin J-L (1-3) を得,これらの化学構造の解析を行った.これらはすべて強い細胞接着阻害活性を示したのであわせて報告する.
【実験・結果】同菌をマルトエキスを主成分とする海水培地で27oC,4週間培養した.培養ろ液のAcOEt エキスを LH-20 及びシリカゲルのカラムクロマト並びに HPLC (ODS)により分離を行い,化合物 1-3を単離した.これらの淡黄色油状の化学構造は各種スペクトルの解析及び化学反応により下記のように推定した.これらの化合物は,in vitroにおいてヒト正常さい帯血管細胞 (HUVEC) へのヒト急性骨髄性白血病細胞 (HL-60) の接着を強く阻害した.

29-0006 W130-07

Calix[6]arene-p-bromophenylalanine複合体のX線結晶構造解析
○塚本 効司1, 前崎 直容1, 田中 徹明1, 大石 宏文2, 石田 寿昌2(1阪大院薬,2大阪薬大
【目的】ペプチド間相互作用の解明は、タンパク質のフォールディングや機能発現機構を理解する上で極めて重要である。このため、ペプチド間相互作用を調べる目的で鋳型分子にペプチド鎖を共有結合させて天然型タンパク質を簡略化した人工タンパク質、template-assembled synthetic protein (TASP) が合成され、その構造および機能解析研究が行われている。我々は合成したTASPの立体構造をX線結晶構造解析によって明らかとし、ペプチド間相互作用を構造学的に解明すべく本研究に着手した。今回は、TASPの鋳型分子として合成したcalix[6]arene-p-bromo-
phenylalanine複合体1の構造学的性質を明らかとするため、そのX線結晶構造解析を行った。また、1のカリウム塩のX線結晶構造解析も行い、カリウムイオンが立体構造に与える影響を調べた。
【結果】1はcalixarene部分が疎水性、p-bromophenylalanine部分が親水性を示すため両親媒性となり、結晶中では脂質二重膜のような層状構造を形成していた。しかしながら、そのカリウム塩は8分子で立方体を形成し、外側にcalixarene部分を向け、内側にp-bromophenylalanine部分を向けていた。また、カリウム塩では1では見られなかった高い対称性を有していた。

29-0024 

Glycyrrhizin 及びGlycyrrhetinic acidとγ-Cyclodextrinとの複合体について
○上垣内 みよ子1, 川西 和子1, 西庄 重次郎1, 大石 宏文2, 石田 寿昌2(1神戸薬大,2大阪薬大
【目的】演者らは医薬品のCyclodextrin (CyD)との相互作用について調べている。今回はカンゾウ(甘草、Glycyrrhizae Radix)の主成分であるGlycyrrhizin (1)とそのアグリコンであるGlycyrrhetinic acid (2) についてCyDとの相互作用を調べた結果について報告する。
【実験】CyD類添加によるカンゾウの煎液中における1の溶解度変化及び2の水に対する溶解度変化をHPLCにより測定した。また、γ-CyDと1の複合体について分子動力学計算により検討した。
【結果及び考察】化合物1、2共にγ- CyDを添加した場合のみ、水に対する溶解性向上が認められ、CyDに対して類似した挙動を示すことが明らかになった。計算により得られた1とγ-CyDの最安定複合体構造では1のC/D/E環部分がγ-CyDの2級水酸基側から包接されている構造であった。この結果はNMRスペクトルによる推定構造と一致していた。

29-0043 

生理活性ペプチドにおけるC-末端アミド基の構造化学的研究:Endomorphin-2及びそのC-末端OH体のコンフォメーションのpH依存性
○尹 康子1, 箕浦 克彦1, 石田 寿昌1(1大阪薬大
【目的】生理活性ペプチドの多くはC-末端がアミド化されており、活性発現の際の重要性が示唆されている。そこでC-末端アミド化が生理活性ペプチドのコンフォメーション及びその分子間相互作用に及ぼす影響を解明する一環として、Endomorphin-2(EM2:Tyr-Pro-Phe-Phe-NH2)とそのC-末端OH体(EM2OH:Tyr-Pro-Phe-Phe-OH)の溶液中でのコンフォメーションについてpHの影響を調べる。
【方法】EM2とEM2OHの、種々の溶媒中(軽水(10%-D2O/90%-H2O):pH2.7,pH5.2、ペプチドに対して40倍量の重水素化dodecyl phosphocholine(DodPCho)を共存させた軽水:pH3.5,pH5.2)での1H-NMRの測定を行った。更にNMR測定と同じ溶媒より得られたEM2OHの単結晶を用いてX線結晶構造解析を行った。
【結果・考察】各プロトンの帰属並びにNH-Cα間のJ値を求め、ROESYスペクトルによる近接プロトンの距離情報を求めた。両ペプチドはProを含む為trans,cis の両異性体が共存していたが、ROESYスペクトルを利用してそれらを決定した。その結果EM2は液性に拘わらず chemical shift, 異性体の存在比は全く等しく軽水中ではtrans:cis=3:2, DodPCho 共存下においては大部分trans体であった。これに対してEM2OHは軽水中ではpH2.7; trans:cis=3:2, pH5.2; trans:cis=1:1, DodPCho 共存下、pH3.5; 大部分trans体, pH5.2; trans:cis=2:1であった。これらのことよりEM2は溶媒の種類、pHに拘わらずtrans体が優位に存在し、EM2OHは同じ溶媒でもpHが大きくなるほどcis体が優位に存在することを示した。一方X線解析の結果、結晶中においてはエネルギー的に安定なcis体のみが存在していることが解った。現在両ペプチドのコンフォメーションにおけるpHの影響とその差異並びにC-末端アミド基がコンフォメーションに及ぼす影響について考察を行っている。

29-0064 

サルモネラ由来タンパク質SEp22の会合状態と結晶構造の解析
○朝比奈 泰子1, 野口 修治1, 佐藤 能雅1, 杉山 奈穂子2, 山崎 学3, 天野 富美夫2(1東大院薬,2大阪薬大,3国立医薬食品研)
[目的] Salmonella Enteritidis(SE)は急性胃腸炎の原因となるグラム陰性桿菌である。SEp22はSEが産生する166アミノ酸残基のタンパク質で,宿主のマクロファージの産生する活性酸素の攻撃からSEを保護する。三次元構造に基づくSEp22の機能の解明を目的として,発現,精製,結晶化とX線回折実験を行った。
[方法] 硫安で沈澱させたSEp22試料を,陽イオン交換クロマトグラフィー,ゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した。精製試料について動的光散乱を測定し,結晶化を行い,X線回折像を得た。N末端にポリペプチドのついたSEp22の融合タンパク質を大腸菌にて産生させ,酵素処理により全長SEp22を得た。イオン交換クロマトグラフィー等により精製後,結晶化を行った。
[結果および考察] 硫安で沈澱させたSEp22試料にはDNAが含まれており,これは陽イオン交換クロマトグラフィーで分離された。ゲルろ過クロマトグラフィーの保持時間による分子質量は146 kDa,動的光散乱の測定からは147 kDaであり,マススペクトル測定からの分子量は18,684(計算値18,586)である。PEGを結晶化剤とする条件では422対称のI型結晶,MPDを結晶化剤とする条件では23の対称を持つII型結晶が得られた。分子置換法により,II型結晶の構造を解析した。融合タンパク質を大腸菌のperiplasm画分に発現させ,SEp22精製標品を得た。ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子質量は158 kDaを示した。この精製標品からもI型結晶と同型の結晶が得られた。SEp22は,溶液中では8量体を形成し,I型結晶中でも422対称を示す8量体である。一方,II型結晶中ではほぼ23対称の12量体で,直径約90 Aの球形に近い構造をとっている。以上のことから,SEp22は,8量体と12量体の2つの会合状態をとりうると考えられる。

29-0065 

オキサゾリン環修飾によるアシジアサイクラマイド誘導体の新規コンフォメーション
○浅野 晶子1, 土井 光暢1(1大阪薬大
[目的・方法]アシジアサイクラマイド(ASC)は分子内にチアゾール環(Thz)、オキサゾリン環(Oxz)を含み、分子内二回回転対称を有するcyclo(-D-Val-Thz-L-Ile-L-Oxz-)2という配列をもつ、抗腫瘍活性ペプチドである.我々は様々なASC誘導体を合成し、構造解析を行った結果、主に"folded"と"square"型の2種類のコンフォメーションを明らかにしてきた.今回は2カ所に存在するL-Oxz環の一方をD-Oxz環、もう一方をD-allo-Thr残基に置換することによってOxz環の立体配置と数を修飾した、cyclo(-D-Val-Thz-L-Ile-D-Oxz-D-Val-Thz-L-Ile-D-allo-Thr-)いう配列の誘導体を合成し、X線構造解析を行った.
[結果]構造解析の結果、この新規誘導体は"folded"型に分類されるコンフォメーションをとっていた.しかし、従来の"folded"型コンフォメーションにおけるOxz環の酸素原子はペプチド環の内側を向いていたのに対し、外側を向いているという点が異なっており、Oxz環の向きが反転した新規の"folded"型コンフォメーションが得られた.

29-0067 

Tauタンパク質MBDのwild type及びFTDP-17変異体におけるコンフォメーションとフィラメント形成との相関について
○平岡 周子1, 小林 靖久1, 田辺 博章1, 時政 真理1, 箕浦 克彦1, 友尾 幸司1, 澄田 美保3, 谷口 泰造2,3, 石田 寿昌1(1大阪薬大,2神戸大・バイオシグナル研,3行動医科学研)
【目的】アルツハイマー病患者の脳内の病理学的特徴として、神経細胞死とPHFと呼ばれる不溶性線維の蓄積が挙げられる。通常、神経細胞で軸策輸送などの役割を担う微小管の伸長を促進する機能を持つTauたんぱく質は、異常に多量なリン酸化を受けると自己重合を起こし、PHFを形成することが知られているが、その機構については未だ明らかではない。本研究ではTauたんぱく質の機能発現領域である微小管結合ドメイン:MBDに着目し、wild typeと家族性前頭側頭葉痴呆症(FTDP-17)における変異体のPHF形成能の差異について調べることにより、痴呆症発症機構を解明することを目的としている。
【実験・結果】Tauたんぱく質中のMBDは、相同性の高いアミノ酸配列が4回繰り返された構造を有する。本実験ではMBD4sのうちwild type及び FTDP-17にみられるS305N,P301L,N279Kの3種の変異体をHis-tag融合たんぱく質として大量発現させた。精製した試料を用いて、CDスペクトルやThS蛍光強度測定などの分光学的手法により、種々の2.2.2-trifuluoroethanol(TFE)濃度下においてMBDのコンフォメーションとPHF形成能との関係について解析を行った。CD測定の結果から、TFE20%付近で明らかなランダム構造からヘリックス構造へ移行する遷移状態が確認された。また蛍光測定からもTFE濃度に依存した結果が得られ、TFE20%付近でPHF形成が最も促進されることがわかった。これらの結果はwild typeだけでなく変異体においても得られ、PHF形成過程には何らかの中間体構造を介した凝集機構が存在し、その中間体構造がMBDのPHF形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、BIACOREを用いた表面プラズモン共鳴分析によりwild type及び変異体の重合核形成能の差異についても現在検討を行っている。

29-0068 

tauタンパク質に存在する微小管結合ドメイン内フラグメントの溶液構造解析(3)
○時政 真理1, 箕浦 克彦1, 平岡 周子1, 友尾 幸司1, 澄田 美保2, 谷口 泰造2,3, 石田 寿昌1(1大阪薬大,2行動医科学研,3神戸大バイオシグナル研)
【目的】アルツハイマー病患者の脳内にはtauタンパク質がPHF(Paired Helical Filaments)という異常線維の形態をとった蓄積が確認される。この蓄積にはtau分子内に存在する類似のアミノ酸配列が4回繰り返された構造を有する微小管結合部位(Microtubule Binding Domain;MBD)が関与していると考えられている。我々はPHF形成に関する知見を得るために、CD測定、蛍光測定、NMRスペクトル測定及び分子力学計算を用いMBDの各フラグメント(R1〜R4)の溶液中での立体構造解析を行っている。これまでの実験からR2及びR3の自己凝集能の差異はそれらのN末端側の構造の違い、特に7番目のアミノ酸残基Proが関与するのではないかと考えられる。そこで、R2及びR3のwild及び部位変異体(R2-K7P及びR3-P7K)を用い、トリフルオロエタノール(TFE)存在下のフィラメント形成能と溶液構造について検討した。
【実験・結果】CDスペクトルにより、R2及びR3のwild及び部位変異体は水溶液中ではランダム構造をとり、TFE濃度の上昇に伴いα-helix形成が見られる。α-helix含有率は、R2-K7Pではwildに比べて減少したがR3-P7Kではwildに比べて上昇した。また蛍光測定より、各wildとその部位変異体の重合能に顕著な差が認められた。NMRスペクトル測定と分子力学計算によりその溶液構造解析を行ったところ、R2のN末端側はα-helix構造をとるが、R2-K7Pではflexibleな構造をとっていた。現在、R3-P7Kについても立体構造解析を進めており、これまでに解析した各種フラグメントデータと比較し、それぞれの立体構造と自己凝集能について考察する。

29-0099 

シスプラチン耐性がん細胞に有効な白金(II)二核錯体とDNAとの非共有結合的相互作用 −NMRによる溶液内分子構造の解析
和田 隆平1, ○吉田 佑子1, 和田 幸恵1, 佐藤 卓史1, 米田 誠治1, 箕浦 克彦1, 大石 宏文1, 齊藤 睦弘1, 千熊 正彦1(1大阪薬大
【緒言】演者らはこれまでに、シスプラチン耐性癌細胞に有効な白金(II)二核錯体[{cis-Pt(II)(NH3)2}2(μ-OH)(μ-pz)](NO3)2(1,2-μH-Ampz)および、より高い活性を有する1,2-μH-Ampzのピラゾールの4位にメチル基を導入した錯体(1,2-μH-Am-4mpz)がDNAと非共有結合的な相互作用を介してDNAの構造を変化させることを明らかにした。今回は、1H-NMRスペクトルの変化やNOESYスペクトル等から1,2-μH-AmpzとDNAとの結合部位や結合様式の解析を行った。また、それらの測定結果に基づき分子動力学的手法によりモデル構造の構築を試みた。さらに、1,2-μH-Am-4mpzとDNAとの結合様式についても報告する予定である。
【方法】12塩基対DNA d(CAATCCGGATTG)2に重水中、あるいは軽水中で2当量の1,2-μH-Ampz を作用させ、7℃下でVarian unity INOVA500を用い、1H-NMR、NOESYスペクトルおよびJ-couplingを測定した。NOEの強度から得られた約700の H−H間の距離情報、およびJ-couplingから得られた角度情報を基に、Distance Geometry法により構造を計算した。さらに、それをSimulated Annealing計算によって精密化し、モデル構造を構築した。
【結果および考察】1H-NMRの変化およびNOESYスペクトルから、1,2-μH-Ampzは合成DNAの9番目のアデニンと10番目のチミンの近傍にminor groove側から接近しているものと考えられた。また、重水中と軽水中のNOESYスペクトルの比較から、1,2-μH-Ampzのであるアンミン配位子がチミンの2位のケト酸素と水素結合していることも推測された。さらに、モデル構造もこの考察を支持するものであり、1,2-μH-Ampzが結合することにより、DNAのminor grooveの幅が広がり、また、結合部位の塩基対間のスタッキングも不安定化しているものと考えられた。

29-0173 

3,4,5,6-テトラフルオロカルボキシフェニルフルオロンとマンガン(U)を用いるヒストンの蛍光光度定量法
○門林 宏子1, 山口 敬子1, 藤田 芳一1(1大阪薬大
【目的】ヒストンは塩基性たんぱく質に属し,イオン結合により真核細胞のDNAと結合している染色体たんぱく質である.現在,ヒストンはアセチル化,脱アセチル化,メチル化などにより遺伝情報の発現を調節していると考えられている.ヒストン-TFCPF-マンガン(II)の錯体生成を利用したヒストンの定量法について,分析化学会第52年会及び第65回分析化学討論会において吸光光度法1)及びメンブランフィルター前濃縮定量法(MF法)2)を報告した.今回,TFCPFが蛍光性を有する色素であることに着目し,TFCPFとマンガン(II)を用いる蛍光光度定量法を開発したのでここに報告する.
【方法】定量法の最適条件を通常法1)に準拠し,表記試薬及びマンガン(II)濃度,共存物質の影響など,種々検討した.
【結果と考察】設定した定量操作法は以下の通りである.すなわち,10 mlメスフラスコに,0.2 Mトリス−塩酸緩衝液(pH 9.0)2.5 ml,1.0 % Triton X-100 1.0 ml,1.0×10−5 M TFCPF 1.0 ml,1.0×10−5 M マンガン溶液 1.5 ml,20 μg以下のヒストン含有液に水を加えて,全量10 mlとする.室温で15分放置後,同様の操作で得たヒストンを含まない液とともに,励起波長494 nm,蛍光波長552 nmにおける蛍光強度を測定する.本法により,MF法に匹敵する20 μg/10 ml以下のヒストン濃度範囲において良好な直線が得られた.また本法はMF法に比べ,定量操作の手順は簡便であり,再現性にも優れていた.
1) Chem. Lett.,33,p.610(2004)
2) 第65回分析化学討論会 講演要旨集 p.198(2004)

29-0174 

レゾルシノールとプロピオンアルデヒドの縮合反応を利用するDNAの蛍光光度定量
○太田 早苗1, 山口 敬子1, 藤田 芳一1(1大阪薬大
【目的】DNAは,PCR法や散乱法などによる分析法が種々報告されているが,汎用されているPCR法では,増幅などの煩雑な操作をする必要があり,簡便で超微量のDNA分析法の構築が熱望されています。演者らは,プロピオンアルデヒドとレゾルシノールとの縮合反応において,微量のピロリン酸が共存するとき,縮合反応が加速され,効率的に発蛍光物質が生成することを見出し,ピロリン酸の蛍光光度定量法を報告した1)。今回は,本反応系を利用するDNAの分析法について検討し,超微量のDNA分析法を開発したので,これを報告する。
【方法】ピロリン酸の蛍光光度定量法1)を参考にして,再度その基礎的条件を若干検討した。その結果,塩基として水酸化カリウム液に変えて,テトラブチルアンモニウムヒドロキシド液を用いるとき,非常に感度が上昇することを見出した。
【結果と考察】設定した定量条件は以下の通りである。すなわち,共栓試験管に,DNAを含む液,レゾルシノール液,プロピオンアルデヒド液,テトラブチルアンモニウムヒドロキシド液を加え,次いで,セミミクロカラム蒸留管を付して,アルミブロック恒温槽中185 ℃ 30 分間加温反応した。冷後,一定量のエタノールで全量10 mLの試料溶液とした。次に同様に処理して得た空試験液と試料溶液の蛍光強度差を457 nm(励起波長380 nm)で測定する。本操作法により,5〜50 pg/mLの濃度範囲のDNAを簡便,高感度に蛍光光度定量することができた。共存物質の影響の検討,反応機構や生成する蛍光物質の構造解析などを,より詳細に検討する必要があるが,本法は,実試料中のDNAの分析法として十分に適用できると考えられる。
1) 太田早苗ら,分析化学,53(9),959-963 (2004)

29-0177 W053-04

ブロモピロガロールレッド‐モリブデン(VI)錯体を用いるタンパク質の吸光光度定量法について
○天野 絵美1, 山口 敬子1, 梅原 聡子1, 藤田 芳一1(1大阪薬大
【目的】当研究室では,色素と金属イオン並びにタンパク質の三者間での三元錯体生成反応を利用する簡便,高感度なタンパク質の吸光光度定量法を種々開発している。 そのうち,ピロガロールレッド−モリブテン(VI)錯体法(PR法)は,本邦において尿タンパク定量用試薬として汎用されている。 今回,PR法に優るタンパク質の高感度吸光光度定量法の開発を目的として,本色素−金属錯体生成利用法について精査した。
【実験】色素,金属イオンの組み合わせの予備的検討により,色素として,ピロガロールレッドの臭素置換体のブロモピロガロールレッド(BPR)を,モリブデン(VI)と併用するとき,最も呈色差が著しいことを認めた。 従って以下,その基礎的定量条件を系統的に検討した。
【結果と考察】設定した定量操作法は次の通りである。 すなわち,10 mlのメスフラスコに,5.0×10−4Mモリブデン(VI)溶液1.0 ml,1.0 %トリトン X-305溶液を1.0 ml,1.0 M塩酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH 2.0) 2.0 ml,5.0×10−4M BPR溶液1.0 ml,更にHSAを含有した溶液を加えた後,水を加え全量10 mlとし,試験管に移す。本溶液を室温で20分放置後,同様に処理して得た試薬ブランク液を対照に波長615 nmの吸光度を測定する。本操作により,HSAを1〜15μg ml-1の濃度範囲において,原点を通る良好な直線が得られた。今後,より詳細な検討が必要であるが,本法は,実試料中のタンパク質の定量に適用できることが示唆される。

29-0178 

o−ヒドロキシヒドロキノンフタレイン−Mn(II)錯体を用いるスペルミン及びそのアセチル化体の分析法の開発について
○宮地 加奈子1, 臣永 宏1, 山口 敬子1, 藤田 芳一1(1大阪薬大
【目的】スペルミン(Spm)は,代表的な生体ポリアミンであり,そのアセチル化体(AcSpm)と共に癌患者における尿中増加率が高いことから,近年,臨床化学分野において,腫瘍マーカーとして注目を集めている。今回,三元錯体生成反応を利用するSpm 及び AcSpm の簡便,高感度な吸光光度定量法を開発し,尿中Spm, AcSpm 分析への適用について,若干検討を加えた。
【方法】弱塩基性下,キサンテン系色素のo-ヒドロキシヒドロキノンフタレイン(QP),金属イオンのMn(II)を,非イオン性界面活性剤共存下で組み合わせるとき,定量感度において最も優れていることを認め, Spm 及び AcSpm の基礎的定量条件を設定した。
【結果と考察】定量操作法としては,10 mL のメスフラスコに 1.0 × 10−3 M Mn(II)液 0.5 mL,非イオン性界面活性剤の 1.0% Tween 40 液 2.0 mL,0.1 M Tris-HCl 緩衝液(pH 8.0) 2.0 mL,1.0 × 10−3 M QP メタノール溶液 0.5 mL 及び 2〜15 μgの Spm 含有液を加え,水で全量を 10 mL とし,室温で 20 分放置した後,Spm のみを除いて同様に処理して得た試薬ブランク液を対照に 560 nm で測定する。本操作法における定量感度及び繰り返しの変動係数はε=1.4 × 105 dm3 mol−1 cm−1,CV=0.50 %(n=10)であり,感度および再現性に優れていることを認めた。また,炭酸ナトリウム水溶液を用いた加水分解前処理法により,Spm とほぼ同程度の定量感度で AcSpm を定量することができた。さらに,QP が蛍光性色素であるという点に着目し,これら化合物のより微量分析法の開発について目下検討中である。

29-0179 

N,N-ジエチル-1,4-フェニレンジアミンとチモキノンを用いる銅(U)の高感度吸光光度定量法の開発について
○藤本 裕介1, 藤本 剛1, 山口 敬子1, 藤田 芳一1(1大阪薬大
【目的】銅は環境中, 生体内に広く存在するが, 生体中では主として金属酵素の構成成分などとして生理作用を示す重要な必須微量金属であり, より微量銅イオンの簡便で高感度な定量法の構築が望まれている。演者らは, 先にN,N-ジエチル-1,4-フェニレンジアミンを用いるp-キノン類の定量法を検討し報告1)したが, 本反応の際, 微量の銅(II)イオンが共存するとき, 反応が促進される現象を認めた。従って今回は, 本反応の利用, すなわちアミン類とp-キノン類を利用することによる銅(II)イオンの簡便で高感度な吸光光度法の開発を目的として, その基礎的定量条件を種々検索した。
【結果と考察】設定した定量法は次の通りである。10 mlのメスフラスコに銅(II)溶液を加え, ついで1.0×10-2 Mチモキノン1.0 ml, 0.2 Mトリス-塩酸緩衝液(pH 7.2)2.0 ml, 1.0×10-2 M N,N-ジエチル-1,4-フェニレンジアミン1.2 ml, 陽イオン界面活性剤の1 % 塩化セチルトリメチルアンモニウム2.0 ml及び水を加えて全量10 mlとする。この溶液を試験管に移してよくかくはんし, 60℃で15分加温, 5分間水冷した後, 銅(II)溶液のみ除いて同様に処理して得た試薬空試験液を対照に, 552 nmで吸光度を測定し, あらかじめ作成して得た検量線より銅(II)イオンの量を求める。上記の方法により銅の検量線を作成したところ, 25 ng/ml以下の濃度範囲で良好な直線を得ることができた。また, 本操作法における見掛けのモル吸光係数(ε)は1.14×106lmol-1cm-1と高感度であり, 各種実試料中の銅(II)イオンの定量法として十分利用できると考えられる。
1)藤本 裕介ら, 分析化学, 53(10), 1093(2004)

29-0180 

p-カルボキシフェニルフルオロンを用いるクロムイオンの新規吸光光度定量法の開発について
○神野 伸一郎1, 山口 敬子1, 宮本 美香1, 山田 典代1, 藤田 芳一1(1大阪薬大
【目的】クロムは、様々な生理作用に関与している必須ミネラルであるが、過剰摂取により有害な作用を示すことが知られている。特にその症状はアレルギー性の皮膚炎、潰瘍や皮膚ガンに加え、鼻中隔穿孔や腫瘍などが知られている。しかしながら生体内濃度と中毒量との関係はあまり明確にされていない。従って、クロムの簡便、高感度で実用的な分析法を確立することは大変重要な課題である。従って今回、有機試薬として種々の面で優れた特性を有するキサンテン系色素のうち、p‐カルボキシフェニルフルオロン(PCPF)を合成し、クロムとの呈色反応について検討したところ、陽イオン性界面活性剤を共存させるとき、鮮明な呈色体が生成することを認めたので、以下、PCPFを用いる新規クロムの簡便、高感度な吸光光度定量法の開発を目的とし、その基礎的定量条件を種々検索した。
【方法】設定した操作方法は次の通りである。すなわち、10 mlのメスフラスコに陽イオン性界面活性剤の塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(STAC)液1.0 ml、0.2M HEPES-NaOH緩衝液(pH7.0)2.5 ml、1.0×10-3M PCPF液1.0 ml及び0.10μg〜3.12μgのクロムイオン含有液を加え、水で全量10mlとする。次に本溶液を共栓試験管に移し、80℃20分加温反応、5分水冷、5分室温放置した後の576 nmにおける吸光度を同様に処理して得た試薬ブランクを対照に測定する。
【結果と考察】本操作法における定量感度(ε)は、ε=1.75×105であり、感度において優れていることを認めた。更に、PCPFがクロム(III)とも鮮明な呈色体を生成することを認めたので、総クロムイオン量及びクロム(III)とクロム(VI)の分別吸光光度定量法についても目下検討中である。

29-0189 W053-01

メチルチモ−ルブル−およびFe(II)イオンを用いる過酸化物の吸光光度定量法の開発
大村 真美1, ○山口 敬子1, 藤田 芳一1(1大阪薬大
【目的】過酸化物は環境中, 食品中, あるいは生体中で多種多様な生理活性作用を有しているのでこの過酸化物の簡便で高感度な分析法の開発は, 非常に有意義である.例えば, 過酸化脂質の定量法としては, チオバルビツ−ル酸(TBA)法が汎用されているが, この方法はヒドロペルオキシド類を直接測定するのではなく,その代表的な二次生成物であるマロンジアルデヒド(MDA)とTBAとの生成物を吸光あるいは蛍光光度定量することに基づいているので, MDA以外にもTBA反応陽性物質が存在するため選択性などにおいてやや問題のある定量法であると考えられる.今回,当研究室では、過酸化物が, 鉄(II)イオンと直接酸化還元反応し, 鉄(III)イオンを生成する点に着目し, 本反応系を用いる簡便な分析法の設定を試みた.
【方法】過酸化物として,tert‐ブチルハイドロペルオキシド(t-BuOOH)を取り上げ, 常法(液性の検討, 鉄(III)イオンと反応性の高い色素の検討,緩衝液の種類の検討,界面活性剤共存による影響, 反応温度の検討, 反応時間の検討, 添加順序の検討,安定性の検討など)に従って基礎的定量条件を検討した.
【結果および考察】反応条件として酢酸塩−塩酸緩衝液を用い, 鉄(II)イオン及び色素としてメチルチモ−ルブル−を用い, 陰イオン性界面活性剤共存下, 室温で30分放置後, 640nm付近の吸光度を測定することにより, 0.3μg/mL以下のt-BuOOHを再現性良く定量可能であり, キシレノ−ルオレンジ法1)に比べて5倍以上の定量感度を示すことが認められた. 今後共存物質の影響やその他の過酸化脂質を含む化合物並びに実試料への適用についてさらに詳細な検討を進めていく予定である.
1) Khelifa Arab and Jean-Paul Steghens, Anal.Biocem. 325 (2004), 158-163.

29-0302 

ESRによるセレン化合物のDPPH消去活性評価
○木寺 康裕1, 佐藤 卓史1, 齊藤 睦弘1, 千熊 正彦1(1大阪薬大
【目的】生体で産生されるフリーラジカルは老化や種々の疾患の原因であると考えられている。我々は、安定な窒素ラジカルであるDPPH がEhrlich 腹水癌細胞に対して傷害性を有し、その傷害がヘパリン-セレノシスタミンconjugate の併用によって軽減されることを示してきた。ヘパリン-セレノシスタミンconjugate がDPPH 消去活性を示すことは、吸光度法によってすでに確認しているが、今回は種々のセレン化合物のDPPH 消去活性をESR で測定し、吸光度法で得られた結果と比較した。また、細胞へのDPPH のとりこみ量を細胞懸濁液のESR 測定により評価した。
【方法】ヘパリン-セレノシスタミンconjugate やセレノトリスルフィド類は研究室で合成した。その他のセレン化合物は、市販品を用いた。DPPH はDMSO 溶液として用いた。吸光度法によるDPPH 消去活性の評価は、517nm の吸光度値に基づくDPPH 濃度の変化をから算出した。ESRによる場合は、シグナル強度を指標としたDPPH の濃度変化から求めた。Ehrlich 腹水癌細胞は、マウスに移植後7〜10 日経過したものをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4) に懸濁して用いた。溶液および細胞懸濁液試料のESR 測定にはキャピラリーを用いた。
【結果および考察】PBS 中で測定したESR のシグナル強度はDPPH 濃度に比例した。ESR により評価した多糖-セレノシスタミンconjugate のDPPH 消去活性は、吸光度法で求めた活性とよく相関していた。また、DPPHとインキュベートした細胞懸濁液のESR 測定結果より、細胞に由来するDPPH のシグナル強度はインキュベーション時間とともに増加し、細胞内のDPPH 量を反映するものと考えられた。さらに、細胞内DPPH 量と別途測定した細胞の体積とから、細胞内DPPH 濃度の推定を試みた。

30-0050 

Bacillus cereus菌由来スフィンゴミエリナーゼの酵素活性に及ぼす銅イオンの影響
○藤井 忍1, 高山 大輔1, 田中 祐子1, 塚本 喜久雄2, 池澤 宏郎2, 池田 潔1(1大阪薬大,2名市大院薬)
【目的】Bacillus cereus 菌由来スフィンゴミエリナーゼ(SMase )の酵素活性の発現にはMg2+ ,Mn2+, またはCo2+ が必須であり, Zn2+ とCu2+ は酵素活性を強く阻害することが知られていた.しかし我々は,非常に低い濃度のZn2+ 存在下ではSMase が活性化されることを明らかにした.そこで今回,強い阻害作用をもつCu2+ について,酵素活性に及ぼす影響を詳しく調べた.
【方法】酵素活性の測定は,基質としてミセル状2-hexadecanoylamino-4-nitrophenyl-phosphocholine(HNP) または,スフィンゴミエリン(SM)とTriton X-100 との混合ミセルを用いて行った.
【結果および考察】 Cu2+ は高い濃度でB. cereus 菌由来SMase の酵素活性を強く阻害したが,非常に低い濃度では酵素を活性化することがわかった.この結果から, SMase 分子内にはCu2+ に対して親和性の異なる2 つの結合部位が存在し,高親和性部位に対するCu2+ の結合はSMase を活性化し,低親和性部位に対する結合は逆に強く阻害することが示唆された.同様の結果はZn2+ についても得られていたが,それぞれの結合部位に対するCu2+ の親和性は,どちらの部位に対するZn2+ の親和性に比べて10 倍程度高いことが明らかになった.また,酵素に対するCu2+ とZn2+ の結合定数を異なる2 種類の基質を用いて測定したところ,結合定数は基質の種類によらずほぼ等しいことがわかった.この結果から,これらの金属イオンは酵素分子に直接結合していることが確認された.次に,2 種類の金属イオン共存下で酵素活性を測定した結果,SMase を活性化する金属イオン(Mg2+ ,Mn2+ , およびCo2+) の結合部位は, Zn2+ やCu2+ の高親和性結合部位と同じであることが明らかになった.

30-0088 

マウス血清由来ロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)の精製
○白井 僚一1, 森本 康弘1, 森内 康隆1, 井上 晴嗣1, 池田 潔1(1大阪薬大
【目的】血清タンパク質の一つであるロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)は、ロイシンリッチリピート構造をもつことが報告された初めてのタンパク質であり、1985年にヒトLRGの配列が決定されている。しかし、その生理機能については現在に至るまで全く解明されていない。我々は、クサリヘビ科毒ヘビの血漿から3種類のPLA2阻害タンパク質(PLIα、PLIβ、PLIγ)を精製し、そのうちのPLIβがヒトLRGとアミノ酸配列上、33%の相同性があることを見出した。そこでLRGがPLIβのようにPLA2阻害タンパク質として機能している可能性が考えられたので、マウス血清からLRGを精製する方法を確立し、その機能を調べることを試みた。
【方法】マウス肝臓からRT-PCR法によって得られたLRG cDNAを発現ベクターに組み込み大腸菌で発現させた。しかし、組換えタンパク質は沈殿となったため、これを抗原としてウサギに注射しウサギ抗マウスLRG血清を作成した。次いで作成した抗血清を用いたELISA法やウェスタンブロット法を指標として、マウス血清から種々のカラムクロマトグラフィーで分画し、マウスLRGを精製した。
【結果と考察】Sephadex G-200、Q-Sepharose、Phenyl Sepharose、およびMono-Qの4種のカラムを用いるクロマトグラフィーで、マウス血清10mlから約20μgのLRGを精製できた。精製したマウスLRGのアミノ酸配列のN末端は遺伝子配列から推測された成熟LRGの配列と一致した。また、Sephadex G-200ゲルろ過クロマトグラフィーの結果よりLRGは単量体(約60kDa)で存在することがわかった。PLIβはヘビ毒II型塩基性PLA2を特異的に阻害するが、精製LRGはこのPLA2を阻害しなかった。

30-0144 

LPSによる大腸菌ATP依存性プロテアーゼLonの活性阻害について
○杉山 奈穂子1, 石井 克幸2, 天野 富美夫1(1大阪薬大,2国立感染研)
【目的】ATP依存性大腸菌Lonプロテアーゼの活性は、in vitroで、外から加えたDNAによって上昇することが知られている。LPSはリン酸基を持つという点でDNAの構造と類似性があると考え、本研究では、LPSがLonの活性発現に及ぼす影響について検討を行った。
【方法】マルトース結合タンパク質(MBP)との融合タンパク質としてMBP-Lonを大腸菌に高発現させ、精製してLonを得た。Lonの活性測定は、±1mM ATPで基質としてSuc-Phe-Lue-Phe-βMNAを用い、37℃で60分間加温し、Lonによって加水分解されて遊離したβMNAの蛍光をマイクロプレートリーダーで測定(excitation 335nm/emission 410nm)した。さらに測定値の±ATPの差を取り、これをLonの活性として定義した。なお、DNA やLPSはあらかじめLonと混和し、氷上に30分間静置した後に測定系へ加えた。
【結果および考察】大腸菌プラスミドDNAはLonの活性を上昇させたが、大腸菌LPSはLonのATP依存的活性を有意に阻害した。また、LPSと比較して、 monophosphalyl lipid Aや deacylated LPSの活性阻害作用は低かった。これらの結果より、LPS はLonの活性発現を抑制すること、また、その抑制作用にはリン酸基や脂肪酸の数が何らかの形で関与していることが示唆された。

30-0205 

DNA・ポリアミン複合体のX線結晶構造解析によるB-Z転移の解析
○大石 宏文1, 石田 寿昌1, 大床 真美子2, 岡部 亘雄2, Kazimierz Grzeskowiak3, 塚本 効司4, 前崎 直容4, 田中 徹明4(1大阪薬大,2近畿大薬,3UCLA,4阪大院薬)
【目的】ポリアミンは転写の促進、異常に非常に大事な働きをしている。ポリアミンがDNAに及ぼす影響について、その作用機序を明らかにするためにサーミンと、N1-{2-[2-(2-Amino-ethylamino)-ethylamino]-ethyl}-ethane-1,2-diamineを用いてさまざまな条件でd(CGCGCG)との複合体結晶のX線結晶構造解析を行い構造化学的考察を行った。
【実験】d(CGCGCG)とサーミン及びd(CGCGCG)とN1-{2-[2-(2-Amino-ethylamino)-
ethylamino]-ethyl}-ethane-1,2-diamineとを様々な条件で結晶化を行い非常に良好な結晶6種類を得ることができた。データ測定は高エネルギー加速器研究機構で行いすべて1.0Åまでの高分解能のデータを得ることができた。これらのデータは非常に良いデータで全てのDNA及びポリアミンをアサインすることができた。
【結果・考察】d(CGCGCG)とサーミン及びd(CGCGCG)とN1-{2-[2-(2-Amino-
ethylamino)-ethylamino]-ethyl}-ethane-1,2-diamineの複合体の結晶をそれぞれ室温、低温、高塩濃度条件で得た。それぞれの結晶をX線結晶構造解析した結果、6種類とも異なる構造が得られた。それぞれの構造をab-initio計算した結果、室温の結晶構造はエネルギーが高く、低温の結晶構造はエネルギーが低く、高塩濃度条件ではその中間的エネルギーであった。室温ではサーミン、N1-{2-[2-(2-
Amino-ethylamino)-ethylamino]-ethyl}-ethane-1,2-diamineともにextended構造をとっており三重螺旋型構造であった低温ではN1-{2-[2-(2-Amino-
ethylamino)-ethylamino]-ethyl}-ethane-1,2-diamineは1本はextended型で、もう1本はfishhoock型でサーミンは2本ともextended型であった。このような違いがなぜ生じたかDNAにどのような影響を与えるかを検討した。

29-0364 W125-02

VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害活性を有する新規癌診断薬剤の開発と基礎的検討
○平田 雅彦1, 勝間 秀行1, 藤間 一将1, 中筋 千佳1, 大桃 善朗1(1大阪薬科大学
【目的】VEGF受容体チロシンキナーゼ(VEGFR-TK)は、腫瘍血管新生に中心的な役割を果たしており、腫瘍血管内皮で正常血管内皮に比べて発現が亢進し、異常な活性化が報告されている。したがって、VEGFR-TK活性の把握が増殖や転移などの癌の特性診断を可能にすると考えられる。そこで本研究では、VEGFR-TK活性を反映した新規SPECT用癌診断薬剤の開発を計画した。
【方法】母体化合物としてVEGFR-TK活性阻害剤であるキナゾリン誘導体に着目し、VEGFR-TKに対する構造活性相関を基に、キナゾリン環の7位に数種の塩基性側鎖を導入した4-フェノキシキナゾリン誘導体を合成した。得られた化合物のVEGFR-TKに対する阻害活性をインビトロで調べた。また、各化合物のVEGF刺激によるヒト臍帯血管内皮細胞の増殖阻害作用について検討した。さらに、[125I]標識体を合成し、担癌モデルマウスを用いて各標識化合物の癌への集積性について検討した。
【結果・考察】4-フェノキシキナゾリン誘導体は、多段階の反応を経て、高収率で得ることができた。インビトロにおける検討から、得られた化合物はVEGFR-TKに対する良好な阻害活性を示した。また、ヒト臍帯血管内皮細胞のVEGF刺激による増殖を持続的に抑制することが確認された。新規に合成した放射性ヨウ素標識体は、いずれも放射化学的収率82%以上、放射化学的純度95%以上であり、無担体の標識体を収率良く得ることができた。担癌モデルマウスを用いた生体内分布実験において、いずれの標識化合物も、投与1時間後において、高い癌集積性を示すとともに、良好な癌対組織比を示した。現在、新規SPECT用癌診断薬剤としての有用性をインビトロ、インビボにおいて更に検討中である。

29-0365 W125-03

ベンジルアミノキナゾリン誘導体の癌診断薬剤としての基礎的評価
○松室 圭司1, 平田 雅彦1, 仲 定宏1, 岩田 一樹1, 大桃 善朗1(1大阪薬科大学
【目的】上皮由来増殖因子受容体型チロシンキナーゼ(EGFR-TK)は多くの癌細胞において、異常な活性上昇が報告されており、EGFR-TK活性の把握は癌の特性診断を可能にすると考えられる。我々はこれまでに新規放射性ヨウ素標識化合物として種々のキナゾリン誘導体について検討し、EGFR-TKに対して選択的でかつ生体内において安定なベンジルアミノキナゾリン誘導体BAYを見いだした。今回、BAYの癌診断薬剤としての可能性について検討を行った。
【方法】インビトロにおいて、EGFR-TKリン酸化ペプチドならびに[γ-32P]ATPを基質としてBAYのリン酸化阻害活性の測定を行った。また、EGFR-TK発現性癌細胞であるA-431細胞の膜画分を用いてBAYのEGFR-TKに対する結合選択性について検討を行った。さらに、インビボにおいて、担癌モデルマウスを用いた生体内分布実験を行い、標的部位である癌組織への集積性および癌対組織比を調べた。
【結果および考察】BAYはインビトロにおいて十分なリン酸化阻害活性を示した。またBAY のA-431細胞膜画分への結合量はEGFR-TK選択的阻害剤を前処置した場合に有意な低下が認められたのに対し、非選択的TK阻害剤を前処置した場合では結合量の低下は確認されなかった。この結果、BAYのEGFR-TKに対する結合選択性が示された。さらに、A-431担癌マウスを用いた体内分布において、BAYの癌集積性は、検討した他のキナゾリン誘導体と比較して若干低い値であったが、投与24時間後における癌対組織比では良好な値を示した。以上より本薬剤がEGFR-TKを標的とする癌診断薬剤となる可能性が示唆された。

39
30-0494 W106-05
マクロファージ細胞表面におけるTLR4発現のLPSによる変化
○天野 富美夫1, 和久 景子1, 豊村 隆男1(1大阪薬大
【目的】LPS刺激により、LPS受容体関連タンパク質であるTLR4、TLR2、CD14などのマクロファージ細胞表面における分布の変化を調べ、LPSの低応答性が受容体の細胞表面からの消失に関係するか否かを検討することを目的とする。
【方法】マウスマクロファージ系細胞株、J774.1のLPS感受性の亜株、JA-4細胞、およびJA-4を親株として得られたLPS耐性変異株を用い、大腸菌LPSを100ng/ml添加して37℃で60min加温した。細胞を氷冷してはがし、FACScanバッファーに懸濁した後、それぞれを抗TLR4、TLR2、CD14抗体と反応させた。細胞を洗浄後、FITC標識した2次抗体を反応させ、FACScanで解析した。
【結果および考察】LPS処理の有無に拘わらず、JA-4細胞、LPS1916細胞とも、抗TLR2、CD14抗体の反応性と細胞の蛍光標識の分布に変化は見られなかった。しかし、抗TLR4抗体の発現はJA-4細胞においてLPS処理により有意に低下した。一方、LPS1916細胞ではこのLPSによるTLR4の発現の低下は認められなかった。さらに、JA-4細胞におけるTLR4の発現低下はエンドトキシン活性のない脱アシルLPSでは見られなかったことから、この変化がマクロファージのLPS応答性に関連することが示唆され、LPSに低応答性を示すLPS1916細胞ではこの変化が見られないことが示唆された。

30-0501 

肥満細胞への各種不飽和脂肪酸の脱顆粒、カルシウム応答について
○手島 玲子1, 天野 富美夫2, 田中 康仁3, 澤田 純一1(1国立衛研,2大阪薬大,3国立感染研)
[目的]アレルギー疾患への関与が示唆されている各種不飽和脂肪酸につき、in vitro アレルギーモデルとしての培養肥満細胞系を用い、肥満細胞からの脱顆粒、カルシウム応答について調べた。
[方法] 細胞としては、ラットがん化好塩基球(RBL-2H3)細胞を用い、20-40 μM濃度の不飽和脂肪酸(arachidonic acid (AA,C20:4,ω-6), γ-linolenic acid (γ-LN,C18:3.ω-6), linoleic acid(LA, C18:2ω-6), α-linolenic acid (α-LN,C18:3,ω-3), eicosapentaenic acid(EPA, C20:5,ω-3), docosahexaenic acid (DHA,C22:6,ω-3), stearic acid(STA,C18:0), arachidic acid (AD,C20:0), oleic acid(OLE,C18:1, ω-9)を、細胞に作用させた。細胞からの脱顆粒は、ヒスタミン遊離で、細胞内カルシウム応答については、Fura-2の蛍光強度の変化でのモニタリングを行なった。
[結果及び考察] ω-6系列に属するAA、γ-LN, LAは、20-40 μMで、有意な細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)上昇を促した。一方、ω-3系列に属するα-LN,EPA, DHA、ω-9のOLEび、飽和脂肪酸STA, ADは、40 μMでも、有意なカルシウム応答を示さなかった。細胞からの脱顆粒に関しても、ω-6系列に属する不飽和脂肪酸のみ、ヒスタミン遊離の上昇がみられた。AAによる[Ca2+]iは、外液カルシウム依存性であり、有意な細胞内IP3産生も促さなかったことより、AAを含むω-6系列の不飽和脂肪酸が、直接的にイオンチャンネルを制御している可能性が示された。

30-0504 

腎メサンギウム細胞の細菌由来DNAによる炎症反応誘導機構の研究
○長谷川 聡司1, 玄番 宗一1, 天野 冨美夫1(1大阪薬大
◎目的 本研究は腎の糸球体メサンギウム細胞がグラム陰性菌の感染などにより引き起こされる炎症反応とその機構を解析することを目的とする。
◎方法 メサンギウム細胞は5週齢のラットより摘出した腎臓をメッシュを用いたsieving法により単離糸球体を得、単離糸球体を20%FBS含有RPMI-1640で3-4週間維持培養することで選択的にメサンギウム細胞を得、Thy1.1、vimentin、desminに対する染色性を指標にして同定し実験に用いた。培養3代目のメサンギウム細胞を用い、0.01-1μg/ml LPS、0.1-10μg/ml bacterial DNA、0.1-10μg/ml CpG oligonucleotide(CpG-ODN)、GpC oligonucleotide(GpC-ODN)添加24時間後の上清をとり、TNF-α産生量をELISA法で測定した。
◎結果 LPS、bacterial DNA、CpG-ODN添加により濃度依存的にTNF-α産生が増加した。用いた薬物濃度の範囲内での最大値はCpG-ODN添加で最も高く、LPS、bacterial DNA添加の2〜3倍の値に達した。GpC-ODN添加ではTNF-α産生の産生はみられなかった。
◎考察 細菌の構成成分であるLPS,bacterial DNAはメサンギウム細胞に対して有意な応答性を示した。TLR9はbacterial DNAのCpG塩基配列を特異認識するといわれていることから、()1分子あたりのCpG配列が多いCpG-ODNがbacterial DNAより高いTNF-α産生を示したこと、()CpG-ODNのネガティブコントロールであるGpC-ODNの添加では全くTNF-αの産生がみられなかったこと、よりメサンギウム細胞のCpG-ODN に対する反応はTLR9を介しており、これらの細胞には機能的なTLR9が発現していることが示唆された。

29-0589 

セリ科植物含有フラノクマリン類の消化管及び肝CYP3A阻害に関する研究
○前原 達也1, 岩永 一範1, 宮崎 誠1, 芝野 真喜雄2, 谷口 雅彦2, 馬場 きみ江2, 掛見 正郎1(1大阪薬科大学・薬剤学教室,2大阪薬科大学・生薬科学教室)
【目的】近年,グレープフルーツジュース(GFJ)成分の一つであるフラノクマリン類(FCs)は強力なCYP3A阻害効果を有していることが明らかとなり,本酵素で代謝される薬物をGFJと併用することで薬物の血中濃度が上昇する危険性が報告されている.一方,生薬として繁用されるセリ科やミカン科植物に含有されるFCsと併用薬物の小腸代謝や肝代謝に及ぼす影響についての報告は散見される程度であり,さらなる情報の蓄積が必要である.本研究では,セリ科植物中に含有されるFCsとCYP3A基質薬物の肝あるいは小腸における相互作用についてラットを用いて種々検討を行った.
【方法】セリ科植物からPsoralen, Bergapten, Isoimperatorin,Imperatorin,Byakangelicol,Notopterolをはじめ12種類のFCsを抽出・精製して実験に用いた.Wistar系雄性ラット(体重300-350g)の肝あるいは小腸上部20cmから常法に従いミクロソームを調製した.CYP3A基質薬物としてテストステロン(TES)あるいはミダゾラム(MDZ)を使用し,これら両ミクロソーム中CYP3Aによる基質薬物の代謝に対するFCsの阻害効果についてco-incubation実験により検討を行った.また,mechanism-based inhibitionの可能性についても併せて検討を行った.
【結果・考察】co-incubation実験の結果から,小腸,肝を問わず全てのFCsがCYP3A代謝活性の阻害を示し,そのIC50値は数micro〜数十micro M程度であった.また,今回用いたFCsの中には,mechanism-based inhibitionを示すものと示さないものの両方が存在した.よって,各FCの有する特徴が併用薬物の代謝阻害の強度や持続時間に影響を及ぼすものと推察される.さらに,これら各FCの消化管膜透過性についても併せて報告する予定である.

30-0743 W092-03

血清胸腺因子FTSはシスプラチン腎障害を軽減する
○岩本 憲明1, 高野 裕子1, 幸田 祐佳1, 河合 悦子1, 粟屋 昭2, 玄番 宗一1(1大阪薬大・薬理,2科技団)
【目的】我々は、胸腺ペプチドホルモンであるfacteur thymique serique(FTS)が、フリーラジカル性の腎障害を引き起こすとされるセファロリジンによる腎障害を軽減することを報告した。シスプラチン(CDDP)による急性腎不全の発症においてもフリーラジカルが関与することが言われている。今回、CDDPによる腎障害および腎におけるERK活性化に対するFTSの影響について検討した。
【方法】SD系雄性ラットを用い、FTSをCDDP投与24時間前と直前に投与した。CDDP投与66時間後に腎皮質から核画分を調製し、リン酸化ERK量をウエスタンブロット法にて検出した。腎障害の指標として、血漿尿素窒素(BUN)、血漿クレアチニン値および尿中へ排泄されたグルコース、NAG、タンパク質を測定した。CDDPの腎への蓄積量は白金として原子吸光法により測定した。
【結果】CDDP投与66時間後において、BUN、血漿クレアチニン値および尿中へのグルコース、NAG、タンパク質排泄量が増大し、さらに腎皮質の核画分におけるリン酸化ERK量の増大がみられた。FTSを投与することにより、CDDPによる腎機能障害および腎皮質におけるリン酸化ERK量の増大が軽減された。FTSは、CDDP投与後の腎への白金の蓄積量に影響を与えなかった。
【考察】以上の結果より、シプラチン腎障害に対するFTSの軽減効果に、少なくとも一部には、シスプラチンによるERK活性化をFTSが抑制することの関与が考えられる。

30-0744 W092-04

培養腎上皮細胞の低酸素-再酸素化によるATP含量の変動と活性酸素との関係
○中川 麗子1, 豊島 恭子1, 矢野 陽子1, 幸田 祐佳1, 河合 悦子1, 玄番 宗一1(1大阪薬大・薬理)
[目的] 腎虚血-再灌流による急性腎不全に、ATP含量の低下や活性酸素(ROS)が関与していると考えられている。しかしATP含量の低下とROSとの関係については明らかではない。そこで培養腎上皮細胞株LLC-PK1を用いて、虚血再灌流のインビトロモデルを作成し検討を行った。
[方法] コンフルエントに達したLLC-PK1を1%O2-5%CO2内で一定時間培養し低酸素状態とし、air-5%CO2インキュベーター内で培養することで再酸素化とした。低酸素および再酸素化でのグルコースの有無およびアデノシンとスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)による影響を検討した。細胞内ATP含量を測定し、細胞障害の指標として細胞から培地へのLDH遊離率を調べた。ROS生成はCM-H2DCFDAの蛍光を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
[結果]LLC-PK1細胞内ATP含量は、グルコース非存在下では低酸素でコントロールの約25%に、グルコース存在下では約80%に低下した。再酸素化によりグルコース存在下ではATP含量は約60%まで回復したが、グルコース非存在下では回復せず、細胞からのLDH遊離率はATP含量低下の程度に応じて増大した。細胞内ROS生成は低酸素時および再酸素化後に増大し、その増大はATP含量の低下が顕著なグルコース非存在下で認められた。アデノシンは再酸素化後のATP含量をコントロールレベルまで回復させ、細胞からのLDH遊離率増大を抑制した。SODは再酸素化後のLDH遊離率の増大は抑制したが、ATP含量の低下には影響しなかった。
[考察] LLC-PK1細胞において、低酸素および再酸素化による細胞内ATP含量の低下がROSの生成を増大させ、その結果、細胞障害が起こることが考えられる。低酸素時に生成されたROSがその後の再酸素化障害に重要な役割を果たしている可能性が示唆される。

30-0863 

重金属汚染土壌を対象にしたファイトレメディエーションに関する研究―植物による重金属の取り込みについて―
三野 芳紀1, ○落合 孝充1(1大阪薬大
【目的】近年、工場の跡地などの多くの場所において有害金属による土壌の汚染がおこり、処理方法と高額なコストがかかることで問題となっている。そこで、植物を用いた有害金属の除去に注目し、ケチョウセンアサガオ(ダツラ)等の比較的生命力の強い植物を用いて、金属を含有する溶液で水耕栽培を行い、有害金属の蓄積能力の有無について検討した。また同時に、有害金属を吸収したときにあらわれる植物の外観の変化についても観察した。
【方法】植物は金属(Cd,Pb等)を添加した溶液中(0ppb,80ppb,400ppb,2000ppb)で水耕栽培した。次に、植物を根と葉の部分に分けて、よく乾燥させた後に粉末化して試料とした。金属の定量はICP-MSや蛍光X線分析装置を用いて行った。
【結果と考察】ダツラではいずれの金属濃度においても成長が見られた。2000ppb程度の溶液の濃度ではダツラの生育に対して影響はないことがわかった。ここで、ダツラ中に吸収された金属の濃度の例を挙げると、Cdでは葉の部分ではどの溶液においても約2ppmという結果となり、溶液による変化があまり見られなかった。根の部分においては5ppm,90ppm,120ppmという結果となり溶液の濃度の違いによって変化が見られた。このように、葉の部分と根の部分において大きく金属に濃度の差が見られた。これは、葉の部分に蓄積するには吸収されることが必要で、根の部分では吸収と蓄積の両方があるために高い濃度になったと考えられる。また、葉の部分では一定の濃度で変化が見られないのは根からの吸収が何らかのかたちで抑制されているのではないかと考えられる。今後は、植物中により高濃度の金属が蓄積する方法を考えていく予定である。

30-0864 

市場で流通する高臭素含有野菜 ―蛍光X線分析法による検出―
三野 芳紀1, ○湯北 真由美1(1大阪薬大
【目的】我々は、蛍光X線分析法とICP-MS法を用いて、食品中の金属元素に関する研究を進めており、この度、大阪市場で流通するいくつかの野菜から高濃度の臭素を検出した。これらの野菜の摂取は健康障害につながる可能性が考えられるため、緊急の対策と更なる実態調査の必要性を喚起する目的で、今回報告する。
【方法】乾燥野菜粉末450mgをペレットに成形し、波長分散型蛍光X線分析装置(Rigaku ZSX100s)でファンダメンタルパラメーター法にて分析した。
【結果および考察】種々の野菜について蛍光X線スペクトルを測定したところ、臭素の特性X線が極端に強い強度で観察される検体が見出された。コマツナでは、測定した7検体のうち、2検体が高含量、残り5検体が低含量であった。高濃度の臭素を含む検体が見つかった他の野菜も、同様に2つに大別できた。蛍光X線分析法による定量の結果、野菜別で最も高い臭素濃度は、16,200ppm(コマツナ)、7,000ppm(シュンギク)、3,700ppm(ハクサイ)、2,500ppm(シロナ)、1,800ppm(ネギ)であった。また、イオン電極法による測定で、臭素のほとんどが臭化物イオンとして含まれていることがわかった。臭素の過剰摂取(ADI:1mg/kg(体重)/日)は健康障害の可能性があるため、国内では44種の農産物に残留基準が設けられているが、今回見出された野菜類には設けられていない。しかも、これらの高臭素野菜を摂取した場合、通常の食生活でもADIを超える可能性が考えられた。一般に臭化メチルを用いる燻蒸により、臭素が野菜に残留することが知られており、今回の高臭素含量の原因も燻蒸方法に問題があると思われる。早急に全国市場でも野菜類の臭素濃度の実態調査を行うとともに、残留基準の設定などの対策が急がれる。

30-0910 W034-13

ダイオキシン汚染土壌を対象にしたファイトレメディエーションに関する研究ー植物のDCDD吸収活性について(その2)
○前田 貞治1, 三野 芳紀1(1大阪薬大
【目的】現在、ダイオキシン汚染土壌の浄化技術の開発が強く望まれている。しかし、既存の工業的な方法では、費用がかかる上にさらなる環境破壊を起こすこともありえる。そこで我々は近年、新たな環境修復技術として広まりつつあるファイトレメディエーションの応用を検討した。既にベラドンナ(薬用植物の1種)がPCBを吸収分解することが知られている。昨年度、我々はベラドンナを含む数種の植物のダイオキシン吸収・分解活性について、2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin
(DCDD)を用いて検討した。今回はより多くの植物を用いて、ダイオキシン類吸収活性について比較検討を行った。またダイオキシン類が高い濃度の環境下では植物自体が死滅するなど問題点も残るため、植物が長期にわたって栽培できる限界のDCDD濃度も調査した。
【方法】DCDDの分析:DCDD 50μgを含有する栄養液20mLで植物を数週間栽培し、地上部、根、栄養液の3つに分け、それぞれを酢酸エチルで抽出し、その含量をGC-FIDで分析した。またそれに平行して色素入り栄養液で栽培を行ない、植物がどのような挙動でDCDDを吸収するか観察を行った。
【結果と考察】一般に2,3,7,8-TCDDのような4塩化体は植物内に吸収されることはなく、根の表面に結合すると考えられている。しかし今回の実験で、DCDD50μg を含有する20mLの栄養液で栽培したところ、地上部と根それぞれに2〜3μgのDCDDの存在が確認された。また2.5μg/mL以下のDCDD濃度では植物に対して悪影響がなく、長期間の栽培が可能であった。以上の結果より、条件次第では植物によってダイオキシン汚染土壌を浄化できる可能性が示唆された。


30-0945 
海洋による大気中二酸化炭素の吸収に関する基礎研究ーカルシウム剤散布の有効性についてー
○三野 芳紀1, 原田 裕介1(1大阪薬大
【目的】海洋は海面を通して大気と二酸化炭素を交換しており、この交換過程を経て大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えている。海洋のCO2吸収を促進できれば、地球温暖化の問題解決の一助になると考えられる。近年、海洋に鉄剤を散布して、植物プランクトンの増殖を促す方法が注目されている。しかし、この方法では、増殖したプランクトンなどは最終的に微生物に分解され、再びCO2に戻る。そこで我々は、カルシウム剤を海洋に散布して、CaCO3を生成させ、海底に沈降させることで、半永久的なCO2の固定が可能になると考え、種々の基礎実験を行った。今回は、海水中のCO2の分析法を開発するとともに、海水にCa(OH)2を添加したときのpHとCO2含量の変化について、検討した。
【方法】海水中CO2の分析:試料溶液300mlに硫酸を加え、発生したCO2を水酸化バリウム溶液中に通じた。生成したBaCO3を少量の硝酸で溶解したのち、ICP-MSでBa濃度を測定し、CO2濃度を算出した。
【結果と考察】海水にCa(OH)2溶液を加え、pHを8.5, 9.0, 9.5にそれぞれ調整した海水(3種)に3日間空気を通じたところ、pHはそれぞれ8.5→8.2, 9.0→8.3, 9.5→8.4に変化した。これは空気中のCO2を吸収した結果と思われる。また、3日間放置後の海水どうしで、CO2濃度に有意な差がみられなかったことから、pHの高い溶液では少量のCaCO3沈殿が生成したものと考えられた。これらの結果は、海洋に適当量のCa(OH)2を散布することで、海水の液性を強いアルカリ性にすることなく、海水中のCO2を半永久的に海底に固定できることを示唆している。海洋にCa(OH)2を散布することは、酸性雨による海洋の酸性化を抑制できる点も考慮すると、海洋のCO2吸収能を高めるのに有効な方法と思われる。

29-0543 

Cimicifugosideによるヌクレオシドトランスポートの特異的阻害作用
○八幡 紋子1, 加藤 華子1, 草野 源次郎2, 草野 昭子2, 知久馬 敏幸1, 北條 博史1(1昭和薬大,2大阪薬大
【目的】細胞のDNA合成にはde novo合成ばかりでなくsalvage経路で供給されるヌクレオシドも材料として使われることから、がん細胞の増殖を制御するにはヌクレオシドの生合成を阻害するばかりでなくその細胞内への輸送を阻止することも有用な方法と考えられる。我々はこれまでサラシナショウマ由来トリテルペン化合物であるcimicifugosideが選択的にピリミジン骨格のヌクレオシドの細胞内輸送を阻害することをみいだしている。しかし、このヌクレオシドの輸送阻害機序や他の物質の細胞内輸送に与える影響は明らかではない。そこで本研究においてアミノ酸、糖、核酸塩基の細胞内輸送に対するcimicifugosideの影響を調べた。
【方法】ヒト組織球性リンパ腫由来細胞株(U937)、慢性骨髄性白血病由来細胞株(K562)に、種々の濃度のcimicifugosideを25℃、30分間前処理した。その後、[3H]-leucine, [3H]-2-deoxy-glucose, [3H]-uracilの細胞内取り込みを経時的に2分間測定した。取り込み反応の停止はinhibitor oil stop法にて行った。各細胞に取り込まれた放射能は液体シンチレーションカウンターで測定した。
【結果及び考察】Cimifigosideはヌクレオシドのuridine, thymidineのU937の細胞内への取り込みをIC50値20 ~ 40 nMで阻害するが、2-deoxy-glucoseおよびleucineの取り込みに対しては実験に用いた100 nMまでの濃度で影響がみられなかった。また、ピリミジン骨格を持つuracilの取り込みもcimicifugosideによる顕著な阻害が認められなかった。したがって、cimicifugosideはアミノ酸、糖、核酸塩基の膜輸送に影響せず、ヌクレオシドトランスポーターを特異的に阻害する化合物であることが明らかとなった。現在、本化合物について正常細胞におけるヌクレオシドの細胞内輸送に対する影響を調べている。

29-0598 

血中digoxin動態に及ぼすlipopolysaccharideの影響
○藤原 あずさ1, 天野 富美夫1, 中野 里香1, 森口 純1, 西堀 崇子1, 廣谷 芳彦1, 田中 一彦1(1大阪薬大
【目的】P-glycoprotein(P-gp)は脳、腸管、肝臓、腎臓などに発現し、多くの薬物の排出に関与しているトランスポーターであり、その基質となる薬物の体内動態に深く影響していることが報告されている。しかし、病態時のP-gp発現、機能変化に関しては十分な情報が得られていない。そこで、病態時における薬物動態に及ぼす影響を、endotoxinであるlipopolysaccharide(LPS)を投与した感染症モデルにおいてP-gpの基質薬物であるdigoxin(Dx)を用いて検討した。
【方法】Wistar系雄性ラットにLPS 5 mg/kg腹腔内投与後1, 2, 3, 5日目にDxを0.1 mg/kg経口投与あるいは静脈内投与を行い、その後経時的に採血を行った。血中Dx濃度はFPIA法(TDx(r))により測定した。また、LPSによるDx吸収過程への影響を評価するため、ラット小腸in situ ループ実験も行った。
【結果】Dx経口投与の場合、LPS投与により血中Dx濃度が上昇し、Dx単独投与群に比し最高血中濃度(Cmax)、薬物血中濃度-時間曲線下面積(AUC)について有意な差が認められた。また、Dx静脈内投与の場合にもLPS投与により血中Dx濃度が上昇し、Dx単独投与群に比しAUC、クリアランス(CL)について有意な差が認められた。ラット小腸in situ ループ実験においては、LPSによる血中Dx濃度の上昇が認められ、AUCにも有意な差が認められた。
【考察】LPSを投与したラットにおいてDx体内動態変化が認められた。Dxは主に腸管より吸収される薬物であるため、LPSによるDx吸収過程への影響により血中Dx濃度が上昇した可能性が示唆された。しかし、Dx静脈内投与の結果より、LPSのDx消失過程に対する影響も示唆された。現在、薬物の吸収および排泄に大きく関与する小腸、腎臓のP-gp発現におけるLPSの影響についても検討を行っている。

29-0606 W122-04

PrazosinのPharmacokinetics / Pharmacodynamics (PK / PD)に及ぼすMetoprololの影響
○隋 廣1, 宮崎 誠1, 佐藤 眞治2, 渡辺 賢一2, 岩永 一範1, 掛見 正郎1(1大阪薬大,2新潟薬大)
【目的】以前、本研究室においてαβ遮断薬CarvedilolのPK / PD相関は、薬物の作用に対する血圧調節機構の指標として血漿中Norepinephrine (NE)濃度をモデルに組み込むことでうまく表すことができることを示した。今回、α1遮断薬Prazosin (PRA)とβ1遮断薬Metoprolol (MET)を用い、両薬物を併用後のPK / PD相関に及ぼす血圧調節機構の影響について単独投与時と比較検討した。
【方法】Wistar系雄性ラット(10〜15週齢)を用いた。薬物の投与は、無麻酔・拘束下でPRA、MET、NEをそれぞれ右頸静脈より30分間infusion投与した。また、同様に事前に両薬物を混合し併用投与を行った。薬物投与後の平均血圧の測定は観血法で、血漿中の薬物およびNE濃度はHPLC法で測定した。
【結果・考察】<単独投与> PRA、METの体内動態は2-コンパートメントモデルで表すことができた。血圧はPRAを投与開始直後から低下し、その効果は投与量依存的に増大した。投与終了後、血圧は約150分以内に基底値まで回復した。一方、METは血圧へ影響を与えなかった。血漿中PRA濃度と血圧低下効果との間に時間遅れの履歴特性は見られず、これらPRAの体内動態と血圧との関係は直接モデルを使って上手く表すことができた。PRAを投与後、血漿中NE濃度はわずかに上昇したが、MET投与後にこの現象は見られなかった。<併用投与> 両薬物を併用後、PRA単独投与時に比べ最大血圧低下効果の増強と、薬効持続時間の延長が見られた。また、PRAの最大血漿中濃度は上昇し、消失速度定数が小さくなった。この体内動態から併用投与時の血圧変化をシミュレートしたところ、実測値をおおよそ推測することができた。以上より、併用時の薬効の増強は体内動態の相互作用が関与していると思われる。

29-0622 W121-05

トルブタミドの血糖低下効果における日内変動とGLUT4発現量の関係
○武田 伸弘1, 藤井 俊樹1, 孫谷 弘明1, 宮崎 誠1, 岩永 一範1, 掛見 正郎1(1大阪薬大
【目的】血糖値は生体恒常性によって維持されており、顕著な日周リズムを示すことが知られている。これまでに私たちはスルホニルウレア系糖尿病治療薬であるTolbutamide(TB)の血糖低下効果が投与時刻により異なることを報告してきた。そこで今回、グルコーストランスポーター(GLUT4)の発現量における日内変動について検討した。
【方法】6:00点灯、18:00消灯の明暗サイクル下で飼育したWistar系雄性ラット(体重230〜280g)を使用し、6:00および18:00にTBをi.v.bolus投与して経時的に採血した。血漿中Glucose濃度はGOD法で、血漿中TB濃度はHPLC法で、血漿中Insulin濃度はRIA法で測定した。また、ラット脂肪細胞を摘出し、GLUT4発現量をWestern Blot法により測定した。
【結果および考察】TB投与による血糖低下効果は投与量依存的であり、血糖低下効果は18:00投与群の方が6:00投与群よりも顕著に大きく、薬効に時刻差が認められた。しかし、TBの体内動態やInsulin分泌には薬効に影響する程の有意な時刻差は認められなかった。一方、両時刻にInsulinを静脈内投与すると、その血糖低下効果に明らかな時刻差が認められ、末梢での糖取り込みに時刻差が存在する可能性が考えられた。そこで、糖取り込みに関与するGLUT4の発現量の時刻差について検討したところ、生理的条件下におけるGLUT4の発現量に有意な時刻差は認められなかった。このことから、TBの血糖低下効果に時刻差が認められたのは薬物刺激時におけるGLUT4の発現量に時刻差が存在するためではないかと考えられる。

29-0858 

大阪医科大学附属病院における化学療法センターと薬剤師のかかわり
○浦嶋 和也1, 小林 豊英2, 井尻 好雄2, 玉井 浩2, 竹中 洋3, 田中 一彦1(1大阪薬大 臨床薬剤学教室,2大阪医大病院薬,3大阪医大 耳鼻咽喉科学教室)
背景・目的 大阪医科大学附属病院は、北摂・三島地域の"がん治療拠点病院"として、また、患者本位の医療を目指しながら、厚生労働省から認可を受けた"特定機能病院"として、高度な医療の開発、提供を行う病院である。今回、適正かつ安全ながん治療実施のため、「がん化学療法センター」が設置されたので、化学療法センターの概要と薬剤師のかかわりについて報告する。
概要 化学療法センター運用開始に際し、薬剤部は以下の事項を提唱・実行した。
(1) 患者情報が記載されたプロトコールと個人別クリニカルパスの提出を医師に義務づけた。
(2) 時系列によるオーダーなどの注射薬処方せんの見直しを行った。
(3) 薬剤部内の対応の準備として、処方監査、処方取り込み、セット方法の整備、SPD(Supply Processing and Distribution)を用いた薬剤搬送システムの構築を行った。
結果・考察 プロトコールと個人別パスが事前提出されることで、多くのメリットが得られた。薬剤師が関与することでmixingのミス、不純物の混入などの医療過誤防止に努めることができ、適正な処方で投与されることになった。包括医療においては、処方変更、中止により廃棄される医薬品は病院負担となるが、そのリスクの軽減と損失防止が可能となった。さらに、パスの使用によりベッドの稼働率が上昇し、化学療法センターは経済面でも貢献できた。現在では、処方監査・mixingを行う薬剤師が化学療法センターのある病棟で薬剤管理指導業務ができるようになり、化学療法センター業務は質の高い医療の提供と薬剤師の職能を十分発揮できる業務であると考えられた。

29-1132 

透析患者におけるMRSA感染症の予後に影響する因子の検討
○西川 翠1,4, 平田 純生1, 和泉 智1, 古久保 拓1, 太田 美由希1, 藤田 みのり1, 山川 智之2, 川口 博資3, 高良 恒史4, 大西 憲明4, 横山 照由4(1白鷺病院薬,2白鷺病院診療部,3大阪薬大,4京都薬大)
【背景】透析患者はimmuno-compromised hostであり感染症に罹患することが多いが、抗MRSA薬のTDMを実施したにも関わらず、十分な治療効果が得られない症例も少なくない。そこで今回、抗MRSA薬が投与された透析患者の生命予後に影響を及ぼす因子について検討を行ったので報告する。
【対象・方法】1997年1月〜2004年5月において当院で塩酸バンコマイシン(VCM)及び硫酸アルベカシン(ABK)が投与された透析患者それぞれ128名、47名を対象とし、治癒群95名と死亡群80名に分類した。両群において、年齢、性別、体重、透析歴、糖尿病の有無、臨床検査値{抗MRSA薬投与1ヶ月前の血清Alb、BUN、Cre、K、Ca、IP値及びCRP、WBC、好中球%の最大値}について比較検討した。
【結果・考察】VCM投与群とABK投与群における治癒率を検討したところ、透析患者に対する両薬剤の有効性はほぼ同等であった。血清Alb、Cre、IP値は治癒群が死亡群に比べ有意に高い値であった(それぞれp<0.0001)。また、血清Alb値(Alb<2.5、2.5≦Alb<3.5、3.5≦Albと分類)及びCRPの最大値(CRP<5.0、5.0≦CRP<15、15≦CRPと分類)と死亡率の関係を検討したところ、血清Alb値と死亡率の関連性は認められなかったが、CRPの最大値においてはCRPの上昇に伴い死亡率の上昇傾向が認められた。今回の検討により、透析患者におけるMRSA症の生命予後には、炎症所見の高値が関係していると考えられた。今後は筋肉量、体脂肪などの炎症マーカーとの関係、また抗MRSA薬のTDM結果と生命予後との関係も明らかにしていく予定である。

31-1052 W019-08

In vivoアッセイにおけるヒスタミンH3-受容体に対する4(5)-(5-アミノテトラヒドロピラン-2-イル)イミダゾールの立体配置と薬理作用の関係
○春沢 信哉1, 谷口 隆亮1, 松田 千春1, 川村 誠1, 荒木 理佐1, 坂本 靖彦3, 栗原 拓史1, 藤田 岳志2, 山本 亮子2, 大和谷 厚2(1大阪薬大,2大阪大・医・保健,3アルフレッサファーマ)
プロトタイプのH3-受容体遮断薬チオペラミドとH3-作用薬イメピップは、共に6員環ピペリジンの1, 4位二置換あるいは4位一置換体である。しかし、これらはキラリティのない化合物である。一方、4(5)-(5-アミノテトラヒドロピラン-2-イル)イミダゾール 1 (R = H)は、2, 5位に不斉炭素を持つため4つの立体異性体が存在し、それらはいずれも安定なイス型配座をとる分子である(Fig.)。
今回、1 に関する化合物のH3-遮断薬としての可能性を見出すため、1 の4異性体とそれらの5位N-置換誘導体を合成し、それぞれのH3-受容体に対する薬理作用の検討をラット脳in vivoマイクロダイアリシス法を用いて行った。その結果、2S, 5R体で、N-末端にアルキル基を有するOUP-133およびカルバモイル基を有するOUP-142が、ヒスタミンの基礎遊離量を150 %以上に増加させ、さらにH3-作用薬であるイメピップに拮抗した。以上の結果より、H3-受容体の遮断活性を惹起するに適切な立体配置は2S, 5Rであり、N-末端の官能基は、アルキル基およびカルバモイル基が適していることが示唆された。


以上
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